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異世界に行き始めて2週間程が経過した。異世界に行く頻度はそんなに高いわけではなく、いつも3日くらいインターバルを置いてから行くことになっている。
私が自分の世界で怪しまれないようにするためというのもあるけど、ルカの魔力を温存するためというのも理由の1つにあるらしい。私が異世界にいる間は魔力の一部をずっとそのために充てる必要があるらしく、そこそこ負担なようにも思われる。
それが少々申し訳ないなと思っていて、私が魔法を使えるようになったら少しはルカの助けになることもあるのではないかと頑張っているんだけど、相変わらず魔法は使えていない。
ルカは色々と魔法道具を作ってくれるんだけど、点でうまくいかないのだ。もう無理なのかなと半分諦めてるけど、ルカはそんなことはないらしく毎回あの手この手を使って工夫してくれている。
現実世界での生活は変わり映えなく続いていて、私がいないことに母や兄が気づいている気配はない。もしくは気づいていたとしても、興味がないのだろう。
掃除が進んでいないときがあっても、幸いこの2週間は母と家にいるタイミングが被ることがないので何も言われずに済んでいる。というか、母が原因で家が汚れることが最近少ないので、もしかしたら母も家で過ごす時間が少なくなっているのかもしれない。
お金が置いてある頻度も減っているけれど、異世界で飲食をする機会が増えたことで貯金することができて、そんなに困ってもいない。
現実世界ですることと言えば図書館に行って本を読むことくらいで、誰かと過ごすことは一切なかった。
だからか、私は異世界に行くのが少しずつ楽しみになってきた。
「え、風邪?」
「そ~」
5回目となる異世界への訪問。いつものように森の家に召喚してもらうと、いつもいる筈のテオの姿がなかった。熱を出して寝込んでいるらしい。
「かく言う僕もちょっと体調悪くて……けど、約束したのに呼び出さないのも心配かけるかなって思って呼び出しちゃった」
世界を跨いでメッセージをやり取りすることはできないので、不便だなと感じる。現実世界だったらメッセージを送って一件落着だっただろうに。
「それなら今すぐ帰った方が良い?」
「いや、折角来てくれたしゆっくりしていってよ。何ももてなしとかできないけど」
へにゃり、ルカは笑っているけど、確かに元気がなさそう。いつもよりふわふわしているというか、覇気がないように見える。
「じゃあ私が看病する」
「え、それは申し訳ないよ」
「いいから」
眉を下げるルカの後ろに回って、背中を押しながらくるりと家の中へ向かう。
「寝よう、早く」
「え~」
「休まないと治るものも治らないよ」
少々抵抗するルカをなんとか家の中に入れて、自室へ向かうよう促した。
誰かの看病をするのは初めてなので、うまくできるかはわからない。多少の不安を感じながらも、私は自室へ向かうルカを見守ってから、まずは台所に足を進めるのだった。




