無題3
帰り道、僕が超能力者である妄想をした。
隣のやつが友達づらして話しかけてくるのを適当な相槌で返す。他のやつらもイナゴのように群がっていて、五月蝿い。帰り道はカバンが重くなる。秋風がそれと言えないほどに寒い。
僕が超能力者であったなら。こんなバカみたいなやつらを捨てる。好きなあの人を僕のものにできる。母さんの叱りも受けなくていいように、あるいは宿題をしなくて済む、あるいは学校には行かない、あるいは……。
あるいは? 僕はそうしてどこに向かうのだろう。どこにも向かわない。じゃあ結局超能力はなく、このままの生活を送れというのか。こんな生活をあと二年、いや広い目で見れば死ぬまで?
それでもしょうがないのか。それが僕だ。と思うと、
「なあ、聞いてる?」
僕は「聞いてるよ」と秋風に返事をした。