3 現実は非常だ
俺は自分の部屋のベッドに寝転がり、図書館で借りて来た本を読んでいた。
そういえば今気づいたけど何で俺こっちの世界の文字がわかるんだ?
本を手に取りペラペラとページをめくってみるが、よくわからない文字がびっしりと書かれていた。
しかし、何となくだが意味はわかる。
「これも俺が賢者であることと何か関係があるのか?」
これはもっと調べてみる必要があるな。
「なにが関係あるって?」
「わっ!びっくりした!」
声のする方を見ると戦士の賢者のアカリがむすっとした顔で立っている。
「何で俺の部屋にいるんだ?」
「ちょっとあんたと話がしたくて」
えっ、もしかして愛の告白?
…な訳ないか
「昨日少ししたけどまずは自己紹介から、私は姫川明、17歳。こっちに来る前は現役ピチピチの高校二年だったわ。ほら、あんたも自己紹介しなさいよ」
なんかちょくちょく上から目線なのが腹立つし、今時ピチピチなんて使う人間いないだろ。
「俺は青木堂谷、17歳。死んだ妹を探してこっちの世界まで来た高校二年だよろしく」
「ところであんたモンスターテイマーなんだってね」
ちゃんと聞けよ!
たく、俺が丁寧に自己紹介してやったというのに。
「ああ、そうらしいが」
「ふーん?で、モンスターテイマーでなに?」
「お前そんなことも知らないのかよ」
「しょうがないでしょ!私ゲームとか全然しないんだから」
「モンスターテイマーってのはモンスターを仲間にしたり、そのモンスターで戦ったりする職業だよ」
「要するに公式のパシリってことね」
「もっと言い方があるだろ!」
俺たちがそんなやりとりをしているとドアをノックする音が聞こえた。
「堂谷様。お食事をお持ちしました」
ああ、もうそんな時間か
「ありがとうございます」
「では、失礼します」
兵士は料理をテーブルの上に置くとこちらにぺこりと一礼して帰っていった。
料理はパンにスープ、メインに魚の照り焼きみたいなやつがある。
どれも綺麗に盛りつけられていて、朝から食べるにしては豪華すぎるメニューだ。
「ちょっと待ってなさい。私も料理をここに運んでもらうから」
そういうとアカリはどこかへ走っていってしまった。
てゆうかさっき料理運んできた時に言えよ。
それから数分して、アカリが戻ってきた。
後ろには料理を持った兵士が控えている。
「待たせたわね」
「本当にな!」
なんで俺がまたなきゃいけないんだよ!
アカリは兵士に料理をテーブルの上に置くように指示をしてイスに座った。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
俺はスープをスプーンですくって一口食べる。
…冷めてる
それでも美味いのがすごいな。
「やっぱりここの料理はいつ食べても美味しいわね」
「そういえばおまえは何日前に転生したんだ?」
「今日でちょうどこっちにきて3日前になるわ」
3日前!?
「おまえ、その割にはめっちゃ馴染んでるな」
「そう?こんなもんでしょ」
アカリは口もとをナプキンでふきながらそういった。
「そういえば他の賢者や勇者はどうした?」
「確か勇者、剣士、モンク、魔法使いは2週間ぐらい遠征に行ったらしいわよ。私がこっちにきた時にはもう出発した後だったからあと1週間ぐらいしたら戻って来るはずよ。精霊術師は私がこっちにくる3日前に転生したらしいけど部屋にこもって出てこないわ」
てことは俺が最後に転生したってことか。
「じゃあそろそろ私は行くわね」
アカリは朝食を食べ終えるとトビラを開けどこかへ行ってしまった。
さて、今日は何するかな。
自分の部屋で食事後のティータイムを楽しのでいるとドアをノックする音が聞こえる。
「トウヤ様。少しよろしいですかな?」
今の声はモンザベールさんかな?
「どうぞ」
「では、失礼します」
そうゆうとモンザベールさんはトビラを開け、こちらに近づくいてきた。
「トウヤ様。今日は何かご予定がおありですか?」
「いや、今日はそれといって用事がないですが」
「そうですか。では、今日はモンスターテイマーの魔法をお教えしようと思うのですがどうですかな?」
魔法!
そうだよ!
いくらモンスターテイマーといっても、魔法が使えないとモンスターを仲間にできないよな!
「はい!お願いします!」
「では、城の中で魔法を使うのは危険なので町の外へ行きましょう」
すごいな、これは。
俺はファンタジー特有の中世の街並みをキョロキョロしながら町の中を歩いている。
流石は異世界って感じだな。
「美しいでしょ。このリズベットの町は」
「はい、それはもう」
辺りは人であふれかえり、いろいろな店や屋台がある。
その中で俺は気になるものを見つけた。
「モンザベールさん、あれって」
「ああ、あれは冒険者ギルドでございます。」
あれがギルドってやつか。
なんかちょっと大きめの酒屋みたいなかんじだな。
まぁ、俺は賢者だから冒険者になることはないだろうが、全てが片付いたら冒険者になってみるってのも悪くないかもしれないな。
それにしてもさっきから探してるんだがケモノミミがいないんだけど。
やっぱり戦争のせいなのか?
「あの、モンザベールさん」
「はい、なんでしょう?」
「やっぱりケモノミミ……獣人がいないのは戦争のせいですか?」
モンザベールさんは難しい顔をして
「はい。数年前まではたくさんいたのですが戦争に巻き込まれないように自分の国へ帰ってしまったのです。」
「やはりそうですか」
なんだよ。
ケモノミミ結構楽しみにしてたのに。
「なんで、戦争をするんですか?みんなで手を取りやっていけばいいじゃないですか」
「すみません。こればかりは私1人の力ではどうしようも」
それもそうだよな。
「すみません。モンザベールは悪くないのに」
「いえ、私も戦争をしようとしているのは変わりませんから」
モンザベールさんは寂しそうな顔をした。
「モンザベールさんは何故戦うのですか?」
「家族のため・・・ですかね」
「家族ですか?」
「ええ、家族です」
そうだよな。
誰でも好きで戦争なんかするわけないもんな。
・・・よし、俺だって
「俺、戦います。さっさとこんな戦争終わらせましょう!」
「トウヤ様・・・ありがとうございます」
俺はモンザベールさんの方を向き頷いた。
「さぁ、着きました」
俺たちは町から出て数分の所の草原に着いた。
辺りには何もなく、遠くに薄っすらとリズベットの町が見える。
ここに来る前に
すぅーーーーーーはーーーーーー。
空気うま!
「では、さっそく始めましょうか」
「はい!」
「まずは簡単な魔法から練習して行きましょう」
そういうとモンザベールさんは意識を集中しはじめた。
「ファイヤ!」
突然炎の球が現れ数十mぐらい飛んだ後消滅した。
す、す、スゲーーーー!
やっぱリアル魔法スゲーーーー!
「それで、どうやるんですか!」
「頭の中で炎をイメージするのです。イメージできたら魔力・・・つまり魔法を使うための力を腕にため、一気に放出します」
……いや、わかるか!
魔力ってなんだよ!どこにあるんだよ!
まぁ、やるだけやってみるが。
イメージ イメージ イメージ……
そして、魔力を腕にためる!
「ファイヤ!」
すると、モンザベールさんほどではないが、炎の球が現れ数m飛んだ後消滅した。
よっしゃ!!成功だ!!
「モンザベールさん!やりまし…たよ…」
「トウヤ様!」
あれ?なんでモンザベールさんは慌ててるんだ?
俺の意識は闇に包まれた。
「ここは?」
俺は目を覚ますと草原の上に寝転がっていた。
えっと確か俺はモンザベールさんと魔法の練習をしていて……そうだ!急に体の力が抜けて倒れたんだ。
「トウヤ様大丈夫ですかな?」
声の方を向くとモンザベールさんが心配そうにこちらを見ている。
「モンザベールさん何が起こったんですか?」
「トウヤ様。とてもいいにくいのですがトウヤ様の魔力はほぼ0に近いです。なのでその足りないぶんの魔力を生命エネルギーでおきなったという形になってしまったということです」
魔力が0?
じゃあ魔法が使えないってことか?
…これは詰んだということでよろしいのかな?
「あの、じゃあモンスターテイマーの魔法は?」
「残念ながら一番簡単な魔法も使うことができません」
なんてこった。
もうあれじゃん。モンスターを仲間にできないモンスターテイマーってただの人じゃん。
「じゃあ魔力を増やす方法ってないんですか?」
「魔力は産まれたときに決まるので…すみません」
謝られたらよけい不憫だわ!
ああもう!どうするんだよこれから!
「あの…どうしましょう?」
「そうですね。だったら剣術を学んで見たらどうでしょうか」
剣術!
そうだよ!まだ、まだ希望はある。
「俺、やります!」
「わかりました。では、ひとまず城へ帰りましょうか」
「はい!」
よーし!今度こそやってやる!
俺たちは城へ帰るために歩き出した。