第3話 とりあえず金集めっ!
第3話 とりあえず金集めっ!
新たな世界で迎える最初の朝。辺りはすっかり明るくなっていた。木々の間から木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりが聞こえてくる。なかなか気持ちのいい目覚めだ。しかし、この世界にくる原因となった彼女はと言うと、絶賛爆睡中だった。気持ち良さそうに寝ているが色々とやる事があるので彼女を起こす事にした。
「おい、朝だぞ起きろ。町を探して色々と情報収集しないといけないんだから」
体を揺さぶり起こそうとするが。
「ん~。もう少しだけ、あと3時間だけ…」
そう言うとまた死んだように寝始めた。可愛いからって何でも許される訳じゃないぞ?
「って事は今日の冒険は無しだな!」
リーリエを煽る様に大きな声で言う。
「ユウ、早く支度して。先に行っちゃうよ?」
魔法の様な速さで着替え終わったリーリエは俺を置いて歩き始めた。いかにも俺が寝てたみたいだな。
「適当に進んでるけど前にも来たことあるのか?」
行き慣れたかの様にリーリエは森の中を進んでいくので聞いてみた。
「知らないよ?でも大丈夫」
「知らないのかよ、ならここは慎重に動いたほう…」
「あった。早く行こ」
さすがあのチート野朗の血を引いてるだけある。俺ら人間とは勘のスペックも違うらしい。
「町についたことだしとりあえず情報収集と泊まる宿探しだな」
訪れた町並みはユウ達がいた世界の町とあまり変わらないらしい。活気にあふれていい雰囲気だ。リーリエも初めて見る景色に目を輝かせていた。
「ねぇユウ、あれ食べたい」
リーリエが目をキラキラさせながら路面店の商品を指差した。そこには甘い匂いが漂うクレープ屋があった。
「確かに美味しそうだけど、金がないと買えないぞ」
ここでもう一つの課題のお金が出てきた。この先この世界で生きていくのにお金が不可欠なので、早めに職につく必要がある。
「なら、持ってそうな人から奪おう」
本当にこの子は発想が犯罪者みたいだな。これからこの子が犯罪に手を染めないようにするのも一つの課題になるだろう。
「そう言うことやめような」
そんな事を考えていたら少し離れた所で騒ぎ声が聞こえる。声が聞こえる方に顔を向けると。
「力に自信ある奴はいないか!?こいつに腕相撲で勝ったら賞金10万ゴールド!挑戦者はいないか?」
そこにはゴリラの様な男が座っていた。確かに力は強そうだ。要するに腕相撲に勝ったらお金が貰える駆け出し冒険者にはもってこいのイベントらしい。ベタですねー。
「あれなに?」
「相手を倒したら合法的にお金を奪える遊びだ、やってみるか?」
リーリエは嬉しそうにうなずき走って行った。相手が女の子ならあのゴリラも手加減するだろうし、そうじゃなくてもどうせ…。
「お!お嬢ちゃん挑戦するかい?なら、参加料の100ゴールド頂戴するよ?」
「お金はないの、どうすればいい?」
「確かに参加料取らなきゃ商売にならないよな」
一文無しなので参加料も払えない。諦めようとしたとき。司会らしき男とゴリラ男が目を合わせ一瞬ニヤっとして提案する。
「なら、お嬢ちゃんが負けたら1日俺たちに付き合ってくれないかな?そしたら参加料は無しで挑戦していいよ!どうかな?」
二人は鼻の下を伸ばしながらリーリエに聞く。やめとけばいいのに。
「やる」
一つ返事で了承すると、一気にギャラリー達が盛り上がった。リーリエは早速ゴリラ男の前に座る。
「では行きます!レディーファイトッ!!」
その言葉と同時にゴリラは力を一気にかける。だが、びくともしない。女の子相手に必死か。さては童貞だな。
「やる気あんのかよ!」「手加減しすぎだろ!」
などとギャラリーから野次が飛ぶ。しかし、ゴリラ男の額に血管が浮き出ていることが手加減ではないことを物語っている。
「始めるよ?」
リーリエは首を傾げて少し力を入れる、するとゴリラ男の腕が机に叩きつけられた。その瞬間、ギャラリーが大盛り上がり。勝ったリーリエを賞賛する声や女の子に負けたゴリラ男を笑う声などでてんやわんやしていた。その隙間からひょっこり顔を出した。リーリエが賞金を持ってこちらに走ってくる。
「どうだった?」
「楽しかったよ」
満面の笑みで答える。こんな少女があの大男を倒したとは思えない。
「それは良かった。動いたことだし本題のクレープでも食べるか」
「うん!」
「すいません、こいつに一番のオススメください」
そう言うとチョコとバナナとホイップクリームが大量に詰まったクレープが出てくる。さっきの騒ぎを見ていたらしくアイスのトッピングをおまけしてくれた。
「いただきますっ」
勢いよくボリューミーなクレープにかぶりつく。口の周りチョコがついていることなどお構いなしに食べ進める。
「食べる?」
リーリエがクレープを差し出しながら首を傾げる。
「お言葉に甘えて」
女の子にあーんしてもらっているせいか普通よりうまく感じた。クレープを食べ終わったリーリエは満足そうにニヤついている。しかし、この子の力には驚愕させられる。さっきみたいに目立ちすぎると何かと厄介な事に巻き込まれるかもしれなし。
「これからは力をできる限り抑えような?」
口の周りのチョコを拭きながらリーリエに言う。
「分かった、やってみる」
クレープを食べた後だからなのか素直に聞いてくれた。とりあえずリーリエのおかげで当分お金には困らずに済みそうだ。次は宿探し。そして今日できなかった情報収集。クレープの余韻に浸っているリーリエを横目にユウは頭の中でスケジュールを思い描いていた。
少し投稿が遅くなりましたがこれからはできる限り更新速度を保ちたいです。笑
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これからもよろしくお願いします!