ep.5 画期的な企画は part2
part2。初の長編、第2話です。
これまでの状況を整理しておこう。まず、僕ら文芸部は文化祭に企画のヒントをもらうために他の部活の企画を参考にさせてもらうことにした。そこであったのが破狩会長、会計の柿山 夜子だ。なにやら良からぬ噂があるらしい。
そして、今演劇部の部室に向かっている。すると、部室から部員の1人が出てくるのが見えた。
「どうも、世界が選んだ会長、破狩 碎次郎だっ!」
「選ばれたっていっても、この学校の信任投票ですから」と、柿山は即座に冷たいツッコミを入れる。
「会長が何のようだ?それと、小野山か?」
後ろにいた小野山は顔を覗かせ、
「お久しぶりです。三浦先輩」と言う。
「え?どういうこと?」
前橋があまりにも慌てふためくので説明をする。
「小野山先輩の先輩ってことは3年生だよ」
「挨拶が遅れたな。元演劇部の三浦 駆だ。部員はいそがしいんだ。俺だけでいいなら話は聞く」
これまでのいきさつを話した。
「文芸部。俺らは毎年劇をやってるんだ。参考にもならないだろ?ついでに新聞に今年記事を頼んだ」
「そうですか」
文芸部一同は、肩を落とす。
「それと、生徒会か?そんな噂知らないな」
「ふうむ。そうか。また何かあったら教えてくださいよ」
「あ、小野山。お前のとこに新聞部がいるって聞いた。世話になってると伝えてくれ」
小野山はぽかんとする。僕も真意は全くわからなかった。
「俺が言えるのはこのくらいか」
「待って!」
前橋が声をかける。
「さっき元演劇部だって言いましたよね!なら何で部室にいるんですか?」
「後輩の手伝いして、悪いか」
気分を害したようだ。
「すみません!」
「まあ、3年だからそう言われても仕方ないよな。引退せずにふらふらしてんだからさ」
悪い先輩ではなさそうだ。
ありがとうございます、と一礼してその場を去る。またしても成果は挙げられない。トボトボと歩き出す。すると、前から1人の女生徒が駆け込んできた。
「生徒会と文芸部ですよね!あの、さっき三浦先輩と話してましたよね!」
「いかにもそうだが、この破狩碎次郎に…」
柿山に足を踏まれて、ノックダウン。
「すみません、あとでお詫びは必ずします。で、どうしたんですか?」
「あの、良くない噂を文化部に聞いて回ってるって聞いたので」
「もしかして、演劇部部長の山野さん?」
小野山が身を乗り出して聞く。
「はい。それで頼みがあります」
頼み?僕らに?
「三浦先輩を止めてください、このままじゃ」
そう言って言葉に詰まった。
「山野さん大丈夫?」
「これ以上は、言えないです。頼みますから」
そう言って走っていった。
「止めるって何を?」
前橋は首を傾げてこっちを見る。僕はわからない、と返す。
「ところで次はどこに行くんですか?」
やめときゃいいのに、前橋は破狩に絡んでく。
「この名誉の象徴である破狩碎次郎が何も考えなしに部活を当たっているわけないだろう?」
と、近くにあった学校の地図を叩く。
「見に行ったのが美術部、クイズ研、演劇部、あ!」
「気づいたかね?」
僕も分かった。そのルートを線で繋ぐと、来た道を戻らずに行ける部活は一つしかない。
「最初から新聞部が目当てだったんですか?」
確かに新聞部なら、そんな噂を聞いているかも知れない。
「今まではほんの余興さ。一石二鳥ってとこだね」
「考えたの副会長ですけどね」
「うっ」
ノックしてドアを開ける。すると、やはり部長が前に出てくる。眼鏡をかけた好青年だ。
「新聞部の部長、花山 白檜です。お、破狩、何か用事か?」
「白檜ぇ、今、良からぬ噂について調査しているんだが」
「悪いけど、帰ってくれないか」
「来たばっかじゃ」
小野山も目を丸くして止めようとする。
「今は忙しい。文芸部だね。奏美なら取材中だ。君たちにいうことは無い」
そう言われても追い出された。
「何かおかしいと思わないか?」
僕は前橋に尋ねる。
「言われなくてもみんな分かってるよ」
と言われる。
「実は新聞部の新聞、見たことがないんだよね。僕にも見せてくれないかな」
「破狩会長、そんなひまは」
「はい!」
なんとその声を上げたのは前橋だ。ポケットに今日もらった新聞が入っていたのだ。
「ほう。これが新聞部の。んん。お!これはすごい!」
すごいと言ったら心当たりがある。七不思議事件に違いない。
「七不思議ですか?」
「違う違う。これさ、登校時間、下校時間、全校生徒まとめ」
なんだそれは?隅の方にあった。
「そうか!そんなものだれかが張り込んでなければわからないってことですね」
「他にも方法はあるでしょ」
と、小野山。
その瞬間、前橋の目つきが変わった。
「その方法って何ですか!?」
「どうした?前橋」
「後藤くんも、今日何があったのか最初から話して」
「え~と、まず食パンを2枚」
「そうじゃないよ!」
「急にどうしたんだい?」
「会長、夜子ちゃん。クイズ研部長、演劇部部長、新聞部長呼んで」
そして、ふぅっと一息ついて続ける。
「それと三浦先輩も」
前橋の表情は真剣そのものだった。きっと何かわかったに違いない。それなら僕がすべきことは・・・。
「まず、その新聞を大山田先輩からもらって・・・」
これくらいしかない。でも、これなら出来る。
次回、解決編です。