ep.4.5 モナ・リザの裏側で
前話の裏話です。部長が活躍!休憩感覚でお読みください。
「嫌だぁ!拒否権はないんですかぁ!」
そんな叫び声が聞こえた。私は前橋耀華。ある先輩に憧れて、文芸部に入部した女子高生だ。今日も部活、憧れの先輩は今はもういない。このことについて話すと、とても長くなるのでまた今度にしておこう。
部室の戸を開けると、部長の小野山恵子、先輩の滝田幸、同学年の白川純がいた。
「部長、後藤くんがさっき叫んでた気がしたんですけど・・・」
小野山が眼鏡を外しながら、一息つき言う。
「奏美が新聞部で七不思議取材するって連れてっちゃって」
七不思議!
「何で私は連れてってくれないんですか?」
私は口を尖らせる。実は七不思議とか幽霊とかが大好きなのだ。
「いなかったからしょうがないよ」
白川がなだめるように言う。
「それと小野山先輩、用事があるので失礼します」
「じゅんちゃん、帰り気をつけてね」
「え?あ、はい」
へぇ~。私は感心する。『帰り気をつけてね』なんて言うのは初めて聞いた。私の場合、バリバリの運動部だったので、そんなセリフは先輩に対していうものだと思ってた。この先輩は何か見どころがあるかもしれない。
「ようかちゃん、ちょっと付き合ってくれない?」
「へ?」
「職員室に用があって。いいでしょ?」
あまりにもその微笑みが眩しかったので、ついていく理由がなかったが行くことにした。
「滝田と2人はきついと思ってさ、悪いやつじゃないんだけど、無愛想だから。慣れるまで勘弁してね」
なるほど、そういうことだったのか。部長は気まずい雰囲気になるのを防いでくれたのだ。寛大だ。
職員室で用を済ませ、去ろうとした時、
「前橋、提出物出てないぞ」
と先生に声をかけられたのでそこで別れることにした。
うぅ・・・。説教がこんなにきついとは・・・。足が疲れてきた。その時だ。
『1年前橋耀華。今すぐ文芸部部室まで来てください。繰り返します・・・』
「あ?仕方ない。前橋。今日はこれくらいにしてやる。帰れ」
助かった。もしや、放送を流してくれたのは・・・。
部室に戻ると、メモ書きがあった。
『画材とってくる 滝田』
その下に殴り書きで、
『部室鍵開けっ放しにするな! 部長』
とある。さらに
『ごめん、ようかちゃん。部室留守番よろしくね』
そういうことか。小野山も滝田も用事があって、部室を開けるから、私を呼んだのだ。寛大だ。今日の日誌にそのことを書かねば。部室日誌を手に取った。
「滝田くん、これなんか勘違いされてない?」
小野山は日誌をひらひらさせてそういう。俺こと滝田は帰ってきた時、丁度、小野山と出くわした。戻ると、前橋が慌てて『遅いですよ!電車間に合わなぁい!』と行って帰っていった。
俺は日誌をのぞき込む。なんと、部長は寛大だ。とか、偉大だ。とか書いてある。
俺は肩を竦める。
「ま、いっか」
小野山は、やれやれといった表情で日誌を閉じた。
ま、それがお前のいいとこなんだろうけど。
「もう七不思議こりましたよね!行きませんよね!」
「ここまで調べたんなら、気になる」
いつの間にか、後藤と大山田が帰ってきた。何故か仲良くなってるように見える。
「滝田、この絵さ、ここ赤で書いたら」
小野山の言ったことに俺は目を見張る。そうか!そうすればいいのか!寛大かもしれない。
「私は寛大じゃないよ。ただ赤が減ってないなって」
結果はどうあれ、部長はこういうやつなのだ。
次の話は長編の予定です!