ep.4 モナ・リザは微笑む
大山田編です!
いきなり意外な一面が!?七不思議を追う!
普段の2倍の量です。
のどかな放課後、今日も僕もとい後藤型武は文芸部の部室に行く。活動内容?それなら、前半は頑張って文化祭の企画を練るのだが、脱線してしまうことが多い。気がつけば雑談だ。今日も扉に手をかけて、ドアを開く。
「丁度いいとこに来た!カタム!」
副部長の大山田 奏美だ。文芸部の先輩は割と温厚な人が多いが、この先輩は少し苦手だ。
「何なんですか!?」
嫌な予感がする。
「今から取材するんだけど、手伝って!」
ぐっ。大山田は新聞部にも所属している。正直いって嫌だ。なんとか断る理由を考える。
「実はさ、学校の七不思議がこの柿坂高校にもあるんだけど、それを記事にしたいんだけど!」
大山田は、興奮した子供のようにまくし立てる。
「待ってください!部長は許可したんですか?」
「別にいいよ。急いでやることなんてないしさ」
無情な・・・。教室の4分の一ほどのサイズがある部室のテーブルに座っている小野山は眼鏡をを外しながら答えた。
「白川さんだ!どうだ?気になるんじゃないか?」
「すみません。用事があるので」
白川は苦笑いを向ける。
「あいつだ!前橋は?」
「まだ来てないよ。女の子だけに行かせるつもり?」
前橋はホラーは嫌いじゃなく、むしろ好きな方に入ると前言っていたのだ。それなのに・・・
「滝田せんぱ・・・」
見ると、滝田は手で✕をつくり、首をゆっくり振っていた。
「滝田は基本動かないからね!観念しなさい!」
「嫌だぁ!僕に拒否権はないんですかぁ!」
大山田に引きづられていく。
「ちょっとで終わるから。それに、お化けなんて少し怖いしね」
冗談じゃない!
実は僕は幽霊が大の苦手なのだ。
「で、その七不思議って何なんです?」
あきらめがついたので、聞いてみる。
大山田は廊下を歩きながら、手の中の資料を出す。
「これだよ。『笑うモナ・リザ』」
「モナリザは常に微笑んでるじゃないですか?」
そう言うと肩を叩かれた。
「そういうんじゃないって!本当にモナ・リザの笑い声が聞こえるらしいんだよ!他にも、『夜に響くピアノ』とか、『夜に喋る人体模型』とかあったんだけど」
「夜に調べるわけにも行きませんもんね」
「いや、そうじゃなくて夜は平日は無理ってことだよ!夏休み入ったら絶対調べてやる!」
大山田はいたずらをする時の子供みたいに笑った。
「でも、笑うモナ・リザならカメラ意味無いですね」
首にかけてるカメラを一瞬見つめて、その後今まで笑っていたのが嘘かのように無表情になった。
笑うモナ・リザは、美術室にある。美術部が基本使っているらしい。中に入ると部員が十人前後いた。
「こんにちはーっす!新聞部っす!」
絵を描いているのにそんなうるさくしていいのか?と思った。すると、部長らしき人が挨拶に来た。
「こんにちは。美術部部長の照井 善人だ。新聞部の大山田奏美さんだね?」
「例の七不思議を調査しに来たんだけど!」
大山田はグイグイいく。部員の中の1人がこっちに向かってきた。僕も見知った顔だった。
「もしかして、後藤くん?」
それは、同じ中学校だった鳥島 希穂だった。大人びた顔立ちが中学の時から印象的だったが、一層大人びていた。
「鳥島さん、久しぶりだ」
笑顔を返す。
「済まないが今日は帰ってくれないか。こちらの2人がモナ・リザを解決してくれるそうだ」
照井が部員にそう告げる。
解決だなんて一言も言ってないぞ?大山田を見ると、満足そうな顔だ。まさか、このために僕を?
照井が部員を帰してくれたおかげで、美術室は静かになった。照井と鳥島、大山田と僕だ。照井が語り出した。
「あれは、毎年夏になると起きるんだ。6時にチャイムがなるだろ?その後にモナ・リザが笑うんだ。部員は怖がって、『笑う時期』になるといつも早く帰るんだよ」
僕は疑問に思った。
「笑う時期って何ですか?」
「春から秋にかけてさ。冬は笑わないんだ」
大山田を見ると、せっせとメモをとっている。鳥島が青ざめた顔で言う。
「そのこと、うち知らなくて残ってたんだけど、チャイムがなってその直後くらいに確かに笑ったの!本当にあれは怖かった・・・」
「それはごめんね。今年は去年より笑う時期が早くてね」
今までメモをとっていた大山田が口を開いた。
「噂に聞いたんだけど、この時期にモナ・リザを模写していた生徒がいて、冬に事故死したってのは本当?」
何なんだ、その噂。そんなの聞いてないぞ!僕は帰ろうとしたが、大山田に足を思い切り踏まれる。
「わからないが、書きかけのモナ・リザなら準備室にあったんだ。おっと、あと1分だ」
時計は5時59分。カチッと音を立てて6時を告げた。
キーンコーンカーンコーン。
「だ、大丈夫ですよね!よし、噂は嘘だったんだ!帰りましょう!大山田先輩」
すると、次の瞬間。
ひっひっひっひっひっ。ひひひひひひひ。
笑ってる。モナ・リザの笑い声。大山田は怖がりながらもカメラで写真をとっているが、顔は真っ青だ。
「出たァ!無理だぁ!」
照井が逃走。それを追うように、鳥島も。僕も続こうとする。しかし、大山田が固まっているため僕も逃げたら怒られるに違いない。
「先輩?」
「ごめん、カタム。あし、うごかない」
これまで見た中で、1番弱々しい声だった。それでもモナ・リザはあざ笑う。
ひっひっひっひっひっ。ひひひひひひ。
僕は必死になり、大山田の肩を持ち、走り抜けた。その後出口でずっ転んだ。
「やっぱり、記事にするなんて馬鹿なことするんじゃなかった・・・」
大山田は、照井が用意した毛布をきゅっと掴み、青ざめている。
「後藤くん。先に逃げちゃってごめん」
「いやぁ、本当に済まないね」
美術部の2人が謝る。
「後藤くん、最後にずっこけたのを除けば、かっこよかったよ!怖くなかったの?」
僕は、恥ずかしくなった。先輩を引きずって戻る時に転んだのだ。幽霊は流石に怖い。僕はあれがモナ・リザなんかじゃないことがわかったからだ。震える大山田の肩を持ち、
「大丈夫ですよ。正体わかりましたから」
確かにいつもの大山田は苦手だ。でも、今の大山田はもっと苦手なのだ。
「モナ・リザの絵の裏には何があります?」
「モナ・リザを動かすのか!」
照井は大げさに驚く。
「違いますよ、部屋です」
「美術準備室だが」
「入れますよね」
4人は準備室に入る。やっぱり、思った通りだ。
「もしかしたら、正体見れますよ」
1つ開きかけの戸棚がある。その戸棚を閉める。運良く、放送が流れた。
『1年前橋耀華、今すぐ文芸部部室まで来てください。繰り返します・・・』
すると、戸棚が開いた。
「もしかして、」
「そうです。戸棚の上にスピーカーがありますよね。戸棚の戸が立付けが悪くなってるので、放送がなるとその振動で空いてしまうんです。これが揺れて、それで軋む音が笑い声に聞こえたんです」
「後藤くん、だから夕方6時に笑ってたんだね!でも、何で次の日には閉まってるの?」
言おうとした時に、滝田 幸。そう、美術部と文芸部を掛け持ちしている、彼が駆け込んできた。
「滝田先輩が、画材などをここから取り出した後、多分閉めるんですよね?だから、しまってたんです」
我ながら今回は決まったと思う。
滝田は画材と絵の具を手に取ると、すぐ戻った。美術部の2人は何度もお礼を行ってくれた。大山田と文芸部の部室に戻る。
「カタム、1つ聞きたいんだけど、何で滝田ってわかったの?そして何でモナリザが幽霊じゃないってわかったの?」
「いっつも終わりがけに荷物を置いたまま、外に行くじゃないですか。滝田先輩、画材とか取りにいってるんじゃないかなって思いました。それに、冬には笑わないってことは、窓からの風かなって。それで戸棚に風が当たって鳴ったんですよ」
本当に今回は運が良かった。前橋に皮肉を言われずに解決できたのだ。
「カタム」
いつになく、大山田はそわそわしている。
「何ですか?」
「あの、その、あ、ありがとう」
顔を背け、夕焼けの赤に染めながら言う。僕は、意外すぎる行動に気を取られてた。
「そんな、別にいいですって。それに記事になりますか」
「いい記事になりそうだよ!七不思議の正体見たり!っね!カタム、名前出してもいい!?」
ああ。いつもの大山田だった。少しがっかりする。
「戻りますよ、部室に」
「わかってるって」
少しだけ、ほんの少しだけ。僕は、大山田奏美のことがわかった気がした。決めつけは良くないな。夕焼けが少しづつ星になっていった。
少し、そういう要素も含めました。
話の構成を考えた結果、2倍くらいに・・・。
次は、この話の時の文芸部部室の話です。