雲になった少年
初投稿です。何となく思い付いたままに書いた話ですので、非常につまらないと思います。
それでも良ければご覧ください。
少年の部屋は白い壁に囲まれていた。少年は言葉を喋れない。何故なら少年は自分という存在以外を知らないからだ。故に言葉を持つ必要がなかった。少年の世界はこの部屋と自分だけで完結している。
白い世界に独りきりの少年に孤独はない。独りという概念が存在しないから。少年は孤独であって孤独でないのだ。
少年は繰り返す。目をあけ、ふらふらと歩き、時には座り、飽きたら目をつぶる。そんなことを少年は繰り返してきた。
少年の人生は自由気ままで豊かであったのだ。
そんな少年にも一つ日課があった。白い壁で爪をとぐことだ。そうしなければ、爪で己を傷つけてしまうから。長い、あるいは短い時間の経験の中で学んだ。
少年は決まった場所で爪をとぐ、そこは爪をとぐ場所と、彼の中で決まっているからだ。
カリカリと音がなる。それは少年には聞きなれた音だった。この時までは。
普段と違う音がした。間の抜けたような音だ。少年は驚き、壁から距離をとり、観察した。
白い壁に一点、違和感を感じる。見たことの無いものに、恐怖し、あるいは好奇心からか、少年はその一点をじっと見つめたまま動かない。いや、動けないのだろう。それは彼の世界に生じた初めての物だから。
やがて、少年は動き出す。そろりそろりと、ゆっくり、慎重に、それに、気付かれないように、それが、どこかに行かないように。
壁の前までいった少年は異物を触る、でもそれが何なのか分からない。舐めてみる。それでもやはり分からない。では嗅いでみようと、鼻を近づけると、何かが少年の鼻を通りすぎた。軽くなでられたかのようだ。少年はそれをもっと知りたい、見たくなり、思い切り目を近付けた。
そこには青があった。そして、白い塊が青い世界を悠々と渡っていた。もちろん、少年には青なんてものは分からない。
ただ、それはどこまでも続いてるようで、吸い込まれそうで、少年が、唯一知ってる白は、少年が知ってる白と違い、自由であった。楽しそうであったのだ。
少年の体に衝撃が走ったのだ。
自分の内側からどくんどくんと音が聞こえる。
何やら頭が熱くてふらふらする。
だが、しかし、少年はそれが心地よかった。
少年は願った。
自分もあれになりなたいと。あの青い世界をあの白と同じように自由に渡りたいと。
少年は夢中になった。寝ることもせず、一心不乱に壁を削り続けた。
そして少年は雲になったのだ。




