表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雲になった少年

作者: 東雲なお

初投稿です。何となく思い付いたままに書いた話ですので、非常につまらないと思います。


それでも良ければご覧ください。

少年の部屋は白い壁に囲まれていた。少年は言葉を喋れない。何故なら少年は自分という存在以外を知らないからだ。故に言葉を持つ必要がなかった。少年の世界はこの部屋と自分だけで完結している。



白い世界に独りきりの少年に孤独はない。独りという概念が存在しないから。少年は孤独であって孤独でないのだ。



少年は繰り返す。目をあけ、ふらふらと歩き、時には座り、飽きたら目をつぶる。そんなことを少年は繰り返してきた。



少年の人生は自由気ままで豊かであったのだ。



そんな少年にも一つ日課があった。白い壁で爪をとぐことだ。そうしなければ、爪で己を傷つけてしまうから。長い、あるいは短い時間の経験の中で学んだ。


少年は決まった場所で爪をとぐ、そこは爪をとぐ場所と、彼の中で決まっているからだ。


カリカリと音がなる。それは少年には聞きなれた音だった。この時までは。


普段と違う音がした。間の抜けたような音だ。少年は驚き、壁から距離をとり、観察した。



白い壁に一点、違和感を感じる。見たことの無いものに、恐怖し、あるいは好奇心からか、少年はその一点をじっと見つめたまま動かない。いや、動けないのだろう。それは彼の世界に生じた初めての物だから。


やがて、少年は動き出す。そろりそろりと、ゆっくり、慎重に、それに、気付かれないように、それが、どこかに行かないように。



壁の前までいった少年は異物を触る、でもそれが何なのか分からない。舐めてみる。それでもやはり分からない。では嗅いでみようと、鼻を近づけると、何かが少年の鼻を通りすぎた。軽くなでられたかのようだ。少年はそれをもっと知りたい、見たくなり、思い切り目を近付けた。



そこには青があった。そして、白い塊が青い世界を悠々と渡っていた。もちろん、少年には青なんてものは分からない。

ただ、それはどこまでも続いてるようで、吸い込まれそうで、少年が、唯一知ってる白は、少年が知ってる白と違い、自由であった。楽しそうであったのだ。


少年の体に衝撃が走ったのだ。


自分の内側からどくんどくんと音が聞こえる。


何やら頭が熱くてふらふらする。


だが、しかし、少年はそれが心地よかった。



少年は願った。


自分もあれになりなたいと。あの青い世界をあの白と同じように自由に渡りたいと。



少年は夢中になった。寝ることもせず、一心不乱に壁を削り続けた。



そして少年は雲になったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ