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虚空の檻  作者: 北の孤王
23/25

虚空の檻

【HPゲージ消滅、M42Bの消滅演出に移行】


(……………)

声が聞こえた。

何時もの声なのに初めて聞く声だった。




身体が崩れ出す、何時もとは違い、塵になっていく。

直ぐには消えず、じわじわと穴が開いていく様に消えていく。



M42Bとは僕の名前なんだろうか。


僕は何となくそれを呟く。

やけに頭に入らない為にM42B、M42Bと繰り返し呟いてみるが、何故かしっくり来ない。


左手が塵になった



僕は扉の方に寄っていく。

扉はとても大きく、とてもではないが一人では動きそうにない。

出ることは出来なさそうだと早々に気付いて別の場所に行く。部屋の壁、石像、絵画、たくさん見たが何もなかった。


それでも見て回るのは、何故だろうか

なんとなく、だからか






動き回ると、部屋の真ん中で足が動かなくなる。



後ろに何かいた様な気がした。


だけど、それは気のせいだ。

ここにはプレイヤー反応どころかモンスター反応もないのだから。




納得した僕は、なんとなく後ろの空間に向けて手を伸ばした。



突き刺す様な勢いでも握り潰すほどの力を込めた様子でもないその腕は何もない空間をゆらゆらと揺らす。





右手が塵になった。



穴だらけの身体で僕は奥の椅子に向かった。すぐに足もなくなるだろうから、転がって消えるよりかは最後ぐらい椅子に座って消えたくなったから。



椅子に深く座り込む。

足が完全になくなった。



僕は事実上動けなくなった。

身体が崩れていく。



消えれば次はないというのが、何故だか分かっていた。


身体が崩れていく。


大きな穴がぽっかりと開いた自分の胸に少し驚きながらも消滅を受け入れる。










世界が死んだ様な気がした。



何だ、という気持ちと共に異変に気付く。

椅子が異様に硬くなっていた。

不規則に揺れる部屋の灯りもそれで出来る影も何もかもが動かなくなった。

身体の消滅は止まった。




しかし、だからと言って僕には何も出来ない、もう何もやれない。

僕はそれを椅子に座って見ていることしか出来ない。



足はないから立てない、進めない。

腕はないから身体を支えられない、扉を開けられない。

僕にはあの扉に近付くことすら無理だ。

開けることは絶対に出来ない。


僕は椅子に身体を預けることしか出来なかった。






ふと、考える


僕は何だったのだろうか



M42Bという名前の僕はどういう存在だったのだろうか

プレイヤーを探して、倒すだけの存在だったのだろうか


声に創られて消されるだけの存在だったのだろうか


分からない



僕はHPがなくなることを恐れた


理由は分からない



消えるのが怖かったのか、だけどそれなら何故、何時も消えているのに何故それで消えるのが嫌だったのか


分からない




僕は何故ここにいるのか



分からない



僕は、本当にM42Bという名前だったのか


違う……様な、…そんな曖昧とした何かを感じる。





僕は、僕は、僕は




幾ら思考を重ねても答えが出てこない



頭の中は霧みたいに何もかもが不鮮明で、出てくる情報は何もない。

ピースの欠けたパズルを解こうとしている気がした。



これ以上は同じな気がした



椅子に座ったまま何もない空間を眺める

声が聞こえない、プレイヤーは見えない、自分は動けない








ここはまるで檻の様だと思った

大きく重い開かない扉に、変わらない景色、自由に動けない身体

何からも干渉されずただ一人

そんな世界から取り残された様なこの部屋で僕は答えを考え続けることにした





ここがどこなのかを


ここに自分がいる理由を


自分が誰なのかを








分かる日は訪れるのだろうか







分からない

これで話は一応終わりです。

ただ、後一話だけ残ってはいます。

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