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虚空の檻  作者: 北の孤王
17/25

6話

【ダンジョンにプレイヤーの侵入が確認されました。エネミーデータを構築します】



僕は何時もの通路で、何時もの声を聞いた。

僕は(…………)


移動、開(…………)


何故此処にいるの(…………)



移動、開始。





プレイヤー反応、無。

進路、選択、前方。





フロア、反応な(…………………)





階段を上がった僕は、少し広い場所に出た。

此処にいてこの場所に来たのは初めてな気がする。



だけどその空間には、懐かしさもある。


僕は、この場所に何か思い出があったのだろうか。



だけど、何も思い出せない。分からない。




奥にある椅子に座ってみると良い感じの座り心地だった。僕はそれに背中を預ける様に深く座り込む。



胸のうちにあるこの思いの正体は分からない、だけど僕はもう知らなくても良いような気がした。



(…………)



プレイヤー反応、有。


数四体。

戦闘準備、完了。



(…………………)




僕は、気付いていたのかもしれない。





僕はいるのだろうか、世界に。


僕は、


(…………)

(…………)

(…………)

(…………)









「…神邑さん、何やってるんですか?」


電子機器の明かりだけが部屋を照らすその部屋で、一心に何かを打ち込んでいる青年に話し掛けている女性がいた。


「あー…、修正プログラムを書き込んでるだけだけど何、文句あるの?」


青年は女性に見向きすらせずに、明かりに向かってキーボードを打ち込む。


「…それって神邑さんが担当したダンジョンの奴ですよね」


女性は恐る恐るという風に青年に話し掛けた。


「だね、てか用事ないなら帰ってくれない?俺はこれから忙しいんだけど」



青年はそう言いながら決定キーを押すと、不快そうな顔で女性に振り返った。

女性はそれに気圧されて萎縮する。


男性はそれに見向きもしないで次の作業に移った。



カチャカチャとキーボードを叩く音が部屋に響いていた。




「……そうだ、おいこれを見ろよ」


女性は青年に言われるがままに画面を見る。

いかにも魔王の居城みたいに見えるそこには一体のモンスターがいた。



「面白くなるぞー、これから戦う相手はRTR最強、まさに頂上決戦!最強対最強だ!!」


青年は今までの機嫌が嘘みたいに声を張り上げ、画面に向けて今か今かと子供の様な視線を向けて待機している。




「……頂上決戦って何ですか」


女性は言葉への理解が追い付かない様子で、青年に問う。



「…は?頂上は頂上さ」



青年も女性の言うことが何故、こんなことなのか理解出来ない様子でそう返す。








「……何で、あの悪夢のゲームの霧の塔がこのゲームに入ってるんですか」


女性は意を決して青年にそう言った。




「………」


青年の表情が消えた。


それに女性は更に萎縮する。触れてはいけない何かに踏み込んでしまった様な気がする。



「……あはぁ…!はははっ」



青年が笑い出す。

どこからどう見ても異常な様子だった


「ばれた?……そうだよ。近頃はメインストーリーもクリアされそうだから、刺激をやろうと思ってさ!………でも意外だな、何でこれが霧の塔だって分かったんだ?見た目もただの迷宮にして設定も変えてたのに」



青年は、感心する様に女性を見る。

しかし、女性はそれに余計薄らとした寒気を感じた。

この人は分かっていていれたんだ、そう考えると口が開かなくなる。

だけども








「……何で…プレイヤーのデータを……モンスターに使っているんですか…」





女性は言ってやったとばかりに、肩の荷が降りた様な気がした。






「…………?公の場に出たら問題だけど、別に良いだろ。ただのデータだし、それよりこれを見ろよ。始まるぞ」




女性はその青年が平然としている意味が分からなかった。

理解出来ない、考えていることがまるで違う。

その言葉だけでそれが分かった。



「…死んだプレイヤーのデータを使って、何なんですか!貴方は!」


女性がそう怒鳴ると、青年は五月蝿そうにする。





「……いや、これは此方のプレイヤーのデータを基にしてるから別にそのプレイヤーとは関係…」



「私は見たんですよ!その人の最期を!何で見た目がほとんど一緒なんですか!おかしいじゃないですか!」

「………うざいな君」







「死んだっていうけどほら、この世界では生き返ったしそいつとしてはこっちのが嬉しいんじゃないかな?」



青年はそう言うと画面に集中して、女性の言うことを全て無視する作業に取り掛かった。



「……分かりました。貴方がそうならこっちだって策があります」





女性はそう呟くと足早に部屋を出ていく。





残ったのは画面をニヤニヤした顔で見ている青年だけだった。

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