硝子の夢
『ようし!!俺も皆を守るぞ!死なせはしない!』
『ふふ、単純馬鹿ね。回復は私達が完璧にやってあげる。レッドゾーンにすらさせないから』
何で、ここに、嫌だ。
止めて、見たくない。
「行くぞ!」
『『おぅ!』』
いや、夢なんだ。
これは、変えられる。
変える、私が変える。
絶対に、変えてやるんだ。
「…………」
『……?ドウシタンダマモル?キュウニダマリコンデ』
『ジブンデイットキナガラフアンニナッタノ?』
「兄さんは私が守るので、問題はないです。行きましょう」
黙れ、お前は黙れ。
喋るなよ、役立たずの癖に。
無能の癖に、お前さえいなければ。
僕達はダンジョン攻略作戦パーティーに合流し、ラストダンジョン霧の塔の攻略に取り掛かった。
霧の塔は確かランダム構造の迷宮でマッピングが役に立たない、フロア中の雑魚敵を倒さないと次の階段が出てこないというのが特徴の癖のあるダンジョンだ。
まぁ、この経験値ボーナスも止めボーナスも無視した超人数の集まりならば、基本は何も心配はないだろう。
……何の心配もないとは思ったが、何とどこのパーティーも欠けることなく進めたらしい。
顔馴染みも多かったので安心する。
明らかに雰囲気の違う階段の前で僕達はボス相手に入れる限界の三パーテイを決めた。
彼らは、行ってくる、終わらせると言いながら扉の中に姿を消した。
しばらくして、扉が開いた。
彼らの姿はなかった。
ログアウトしたことを信じた僕達は何時間も待ったが何も変わることはなかった。
最悪の雰囲気の中で次に行くパーティーが決まった。
結果は変わらなかった。
雰囲気は最早絶望的に取り返しがつかないほど悪くなり、僕も地べたに座りながら……
いや、違う。
僕は泣いている親友、震えている仲間、地べたに座り込んだ妹、他にも自棄になりかけた他のパーティーの人、皆を励ましていた。
何時間も励まし続けていた。
少し軽くなった空気の中で中断されていたボス攻略が再開された。
次は僕達だった。
気を取り戻しかけていたのにそれで絶望に落ちた。
何で、私達が、嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
バシンッと背中を急に叩かれた私は、二回目を叩き込まれて振り返った。
彼は大丈夫、大丈夫と言いながら私を抱き締めた。
私は泣いてしまった。
私にはそんなことをされる価値はない。
価値はないんだ。
彼は私達のパーティーの中で先頭を歩いて行った。
防御の低い彼なのに、何時も三番目の彼なのに。
「皆で生きて帰ろうね、優芽、大輝、朱音」
兄さんは後ろを振り返りながらそう言った。
嫌だ
私は、思い出した。
何を失ったのか、何を忘れたのか、何から目を逸らしていたのか。




