episode:4 幸せへの選択肢
少女は死ぬ準備を始めた。
遺書を用意し。
生きているうちに出来そうなことを次々と消化していく。
そんな少女に少年は危機感を抱き、少女の意識を沈める。
少女に成った少年は考える。
少女に言葉を伝える方法を考える。
少女を止める方法を、考える。
ふと、手にした携帯を見つめ、閃いた。
「あぁ、これだ」
今まで何故気付かなかったんだろう。
少女は目覚めると、少年の期待通りに一番目立つ場所に保存されたボイスメッセージを見つけた。
好奇心に駆られた少女が再生ボタンを押すと、少女の声をした”別の人物”からのメッセージだった。
『あー、えっと。久しぶり?
覚えてるかな、俺のこと。
君がつけた名前でいうなら冬綺だよ。
俺がコレを録った理由、多分君ならわかってると思うけど。
あのさ、俺、まだ君に死んで欲しくない。
最初はただ君に死なれると俺も成仏しなきゃいけないからだった。
けど、最近は……なんか違うんだ。
君に幸せに、誰よりも幸せになってほしいのに君が俺じゃない誰かに幸せにしてもらっているのを君の中から見てるとさ、すごいイラつくんだよね。
やっとわかったよ。
きっとこれが俺の君への愛なんだね。
俺は、君を好きになってしまったんだろう。
幽霊というより悪霊に近かった俺が君を殺すつもりで現れたのに、君が俺を受け入れた時からきっと俺は君のことが好きだった。
俺は君に死んで欲しくない。
俺が君を幸せに出来たなら最高なんだけど俺は幽霊だから。
俺は君だから。
それはできない、叶わない夢だって知っている。
だからせめて俺に出来ることを考えてみた。
君に選択肢を与えよう。
選択の出来ない君には酷なことかもしれないけど。
それでも俺は、君に生きてほしいから。
俺は君がこのボイスメッセージを聞き終わったら君の人格を俺ごと消そうと思う。
所謂心中ってやつだね、俺的に。
君という存在は俺と共に消えるけど、君の身体は残る。
そのうちに新たな人格が発生して”君”は幸せになれる。
つまり、君に幸せになってほしい俺的には何の問題もないわけだ。
もし、それが嫌なら君は俺に呼びかけてくれればいい。
ただ一言、冬綺と、俺を呼べばいい。
そうすれば俺は君の過去の記憶のみを道連れに消えよう。
君は過去に囚われすぎている。
だから、その全てを断ち切ってあげる。
記憶が消えれば君は新しくやり直せる。
君は、俺が愛した君という人格はそれだけできっと幸せになれるだろう。
どちらの選択を選んでも夢のない内容となってごめん。
けど、これが君にとって一番、良い方法だから。
あぁ、君はもしかしたらなんでどちらの選択肢にも俺が消えるという前提なのかを不思議に思うかもしれないけど、単純なことで、俺の力が弱いからってだけだから気にしないで。
じゃあ、待ってる。
……好きだよ、夏美』
少女の頬に涙が流れる。
少女は携帯を握りしめ、ぽつりと呟いた。
「ずるいよ……」
少女の選択は、一つしかなかった。




