episode:3 ストッパーは加速装置にもなり得る
少女は死ぬこともできず、ただなんとなく、理由もなく生き続ける。
ずっと心の中で死にたいと願いながら。
少女は少年に出会う前から一つの事を決めていた。
大学に行く前までには死のう、と。
少年は少女と過ごすにつれ、少女の本質を少しなりとも理解した。
少女は依存体質なのだ。
最初は父親に依存していた。
次は祖父。
祖父と会える時間が少なくなってからは友達に。
友達に依存するのが難しくなれば本の世界……つまりフィクションに。
いつでも、少女は”誰か”に依存していた。
そんなある日。
少女と少年が出会って数年後。
少女は高校生になり、携帯を買ってもらった。
そこで少女は格好の依存先を見つける。
ネット、だ。
ネット上の友達に依存して生きる。
それが少女の”世界”になった。
同時に少女は相手にも依存してもらいたがった。
だから少女は作ることにした。
自分だけに依存してくれる、そんな存在を。
作り方は至極簡単。
所謂病み期の人間に積極的に話しかけ、頼られる。
思ってもいない言葉でも、相手が必要としているだろう言葉を選べばいい。
そうすれば、人は簡単に少女を信用した。
少女はそこから選べばいいだけだった。
少女の”依存”はやがて”恋心”と変わらなくなり。
少女は初めての恋人を……いや、”停止装置”を手に入れた。
少しでも悔いがあるなら、生にしがみつけるから。
少年は少女が”幸せ”になればその分少年も”生き”られる。
だから、そのことを喜ばねばならないのに、何故だか酷く、イライラした。
『好きだよ』
『君だけが好きなの』
『愛してください』
繰り返されるその言葉を見るだけで少年のイライラは増していく。
ネット上のくせに。
どうせ長続きしない。
今すぐ、別れればいいのに。
気づけば少年は少女の”不幸”を願っていた。
その願いは程なく叶えられた。
恐らく、考え得る最悪の方法で。
『最近、冷たいね』
『君は……私のこと、好き?』
『……嘘つき。本当はもうどうでもいいくせに』
『だって君は、もう私を見ていない』
『別れようか』
『……そう、結局は私が悪かったんだね』
その瞬間、恋人は少女にとっての停止装置から加速装置へと成り代わった。




