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幽霊と自殺志願者な少女  作者: 一条 夜月
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episode2:少女のかてい


少女の身体に憑依した少年は不思議だった。

少女の家庭は一般的だった。

普通に彼女を愛して、優しい家庭のように見えた。


しばらくして、少年は気づく。


なるほど、確かに一般的な家庭だ。

少女は一般的な、不幸な家庭の一つだった。

不幸、とは言えないかもしれない。

歪つな、と言った方が正しいだろうか。


少女は3人家族だった。

両親と、少女だけ。

いわゆる少女は一人っ子だった。

父親は平日、夜遅くまで仕事で家に居ない。

問題は、母親だった。

彼女は少女に対して酷く過保護だった。

かと思えば少女の全てを否定したりした。


少女の母親は、幼少期、あまり愛してもらえなかったようだ。

それを補うかのように、昔の夢を少女に背負わせた。


たくさんの習い事を少女にやらせようとしては、少女はやりたくない、と言った。

彼女はそんな少女を叱る。


「なんでも否定しちゃいけません」


少女はやりたくもない習い事に行くことになった。

そこでそれなりに人間関係を築き、友達もできた。

それでも少女はそこまでそれにのめり込めはしなかった。

母親は言う。


「やりたくないならやめなさい」


その言葉は、少女に混乱を招いた。

やめたくはある。

けれどやめてしまったら友達と会えなくなってしまう。

結局、少女は嫌でも続ける以外に道はなかった。

母親にグチグチと嫌味を言われながら。


少女はその年にしては嘘が上手かった。

嘘だらけの彼女はそんな自分に嫌悪感を抱いていた。

けれども彼女は嘘をつき続けるのをやめない。

少女は自分に言い聞かせるようによく「大丈夫」と口に出した。


少女は自分の気持ちにすら嘘をつき続け、本当の心を見失っているように少年は思えた。


少年はさらに少女の記憶を辿る。


少女の転換期。

少女が少女になった瞬間。

少女が、今に至る過程。

それを探していた。

彼女が嘘つきになった理由を。


少女が今よりさらに幼い、幼稚園の頃の記憶にそれは見つかった。


少女は一度、プチ家出をしたことがあるらしい。

理由は簡単だ。

母に叱られ、同じマンションに住むいじめっ子達にもいじめられ、

父親は母の味方である。

そう思い途方に暮れ、家出をしようと考えたようだ。

幸い、駅が近くにあり、そこで泣いていると学校帰りの親切な女子高生が近くの大きな駅まで連れて行ってくれることになった。

少女は喜んだ。

けれどもそこで少女は交番に連れて行かれ、警察が少女を保護した。

警察は即座に母に連絡した。


母親は少女に言った。


「どうしてこんなことしたの?皆に迷惑をかけて!」


少女は言う。


「おじいちゃんに会いたかったから」


この時だ。この時少女は初めて嘘をついた。

確かにおじいちゃんにも会いたかった。

けれども、おじいちゃんの所にいたら家出のことが母親にすぐバレてしまう。

少女は怒られると思ったんだ。

家出のことを。


すると、母親は言った。


「おじいちゃんはお家にいます。

だから、迎えに行くまで大人しく待っていて」


母親は、怒らなかった。

少女が嘘をついたから。


だから少女は、嘘つきになることにした。


それから少女の世界は一変した。

母親に叱られることが一気に少なくなった。

だから少女は嘘に嘘を塗り固め、嘘を積み続けた。


小学生に上がったころ、少年と出会う少し前。

嘘が、バレた。

母親から少女は一日中怒られた。

父親からも。


それでもそれでも。

もう、遅かった。


嘘で塗り固めた少女にはもう、何が本当なのか、自分でもわかってはいなかった。

少女はこの先ずっと、嘘をつき続けるしかないのだ。

嘘をつかないと嘘をつく。

そんな存在になっていた。


少年は少女の精神が疲れきったのを見計らい、少女の意識を沈ませる。

少年は意識の中に沈む少女を優しく撫でてゆっくり意識を上昇させた。


ぼそり、と呟く。


「確かに、遣る瀬無いなぁ」


少年に出来ることは少ない。

少年に出来ることは、ただ少女の意識を束の間だけ安らげる場所を提供する程度だ。


意識は共有されない。

だから、少年には直接少女に声をかけることはもう二度と出来なかった。


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