episode1:はじめまして、さようなら
どうもこんにちは
他の作品を完結させてから書くべきなのですが、どうしても書きたくなって書いてしまいました。
会話文が多めの、小説とはとても言えないような代物になるでしょうが生暖かい目でご覧下さい。
その幼い少女はどうやってそこに行ったのかは不明だが、廃れたビルの屋上を囲うフェンスの外側に立っていた。
少女はじっとそこから動かず、眼下に広がる景色を眺めていた。
「おい」
そんな少女に声をかけた少年が一人。
年はその少女と同じくらいで、短パンとパーカーを身につけた、ごく普通の少年だった。
「お前、死ぬの?」
子供故か、単刀直入に尋ねた少年を少女はみる。
そして彼女は微笑んだ。
「わかんない」
「わからない?自分のことだろ」
「そうなんだけどね?
私は死んでしまいたい。けど怖いという気持ちもある。
なら生きたいのか?と聞かれるとそうでもないの。
私は、死にたい。けど死ぬのは怖い。
私はこの手を離すべき。けどそれするのは恐ろしい」
「わけわからん」
「でしょ?」
「ちなみに死にたい理由は?」
「さあ?それもあんまり。なんとなく。漠然と?」
「なんだそれ。この世の中には…」
「わかってる、生きたくても生きられない人間がたくさんいるんだぞ、でしょ?
それくらいわかってる。私程度の悩みを持つ人なんてそこら中にたくさんいる。それもわかってる。私よりもひどい環境でも一生懸命生きてる人がいることも知ってる。”私は弱いから”それが逃げだとも知ってる。
それでも死にたい。
なのに、怖くて死ねない。
矛盾しすぎていて笑っちゃうでしょ?」
少女は笑みを浮かべたままだった。
そして彼女はそのまま……核心を、突く。
「君さ、私を殺しにきた幽霊さんだよね?」
「……」
「いいよ、殺してくれて。私はきっとみっともなく泣いて死にたくないって懇願するだろうけど。それを無視して殺してくれていいよ」
少年は黙って目の前で微笑む少女を見てため息を吐いた。
「お前の言う通り、俺はお前を殺すつもりだった。道連れにするつもりだった。けど気が変わった。
……俺は、生きたかった。だからさ、お前の体……俺に貸してよ」
「?」
「俺がお前に憑依するってこと。お前は死にたい。けど死ぬのが怖い。
俺は生きたい。けど生きられなかった。
俺がお前に憑依すれば、俺の意識が前面に出ている間はお前は一時的にだが”死ね”る。
俺はお前の体を借りているわけだから”生き”られる。
見事なwin-winの関係じゃん」
「いいよ。けどね、約束してほしいことがあるの」
「なんだ?」
「まず、私があなたに体を貸している間は私の意識は完全に消えること。
次にあなたは”私”になるんだから勝手に私を殺さないで。
知らないうちに死んでるっていうのは少し、私の目指す死とは違うから。
もう一つ。私の記憶は勝手に覗いてくれていいけど、私は君の記憶なんて見たくない。その辺の分離はしっかりしてほしい。
……できる?」
「あぁ、わかった」
こくり、と少年が頷くのを見て少女はホッとしたように顔を綻ばせた。
「私の名前は夏美。君は?」
「名前なんてない」
「そう、なら君はわたしとは正反対で、それでも”私”なんだから綺麗な冬、冬綺でどうかな」
「とうき……冬綺。うん、いいね。
これからよろしく、夏美」
「うん、よろしくね、冬綺くん」
こうして、幽霊と少女の奇妙な関係がスタートした。




