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規格外の男

# 3回は、唱えることが大切です。人間の五感の中で、最も記憶として残るのが味覚です。味で自分が肥満だと、いやもっと厳しく、醜いブタの方が結構ですね。この味は長年の研究に基づき、継続的に服用するための自己改善意識に働き掛けることに最も適していると結果がでております。当然、自然界にある様々な食材のエキスを組み合わせた味ですから、人体に有害な成分は全くありません。

「へえ、これは痩せるためのものじゃなくて、痩せるんだという意欲を湧かせるために飲むんだ、ふ~ん。」

「亜紀子、随分熱心ね、うちの巨デブ夫は諦めてるのよね。俺は、デブ人種、いや人間とは違う生き物なんだって自慢げに言うようになってさ、ブクブク星からやって来たんだって。」

「アハハハ、ついこの前の不思議系アイドルタレントみたいなこと言ってるんだ。それはかなりきているわね。」

「でもさ、こんなパブロフ犬みたいなことして、痩せる気になるのかねえ。」

「そうなんだけどさ、とにかく可能性の追求よ、デブのマイホームのためならやらなくちゃ。」

「確かに庶民マンションって、デブには何かと不便なのよね。特にキッチンの作業スペースが狭い。調理台の後ろに冷蔵庫があるんだけど、身体がつかえてドアが開けられないのよね。」

「うちの洗面所も猫の額よ。誰かが使っていると塞がれてトイレに行けないのよ。」

「それで、どうなの、あんたの旦那様のダイエット成果は、結構頑張ってるのよね。」

「それがさ、始めたら本当に体重が落ちてきたのよ。」

「へえ、凄いじゃない。若い時から今まで順調にデブを保持して来たんでしょう。じゃあ健康消費税はクリアして、新居購入の心配は大丈夫じゃないの。」

「それが、そうでもないのよ。最近めっきり落ちなくなったのよね。」

「停滞期っていうこと?」

「最初はそう思っていたんだけど、旦那が通っているフィットネスクラブ、担当の方からある日電話があってね、聞かれたのよ。」

「何て?」

「”最近、お勤めでお付き合いが多くなっていませんか”ってね。」

「ははあ、自分に甘えが出て来たのかしらね。影で息抜きしてるんじゃないかってことでしょ。」

# そうです、ダイエットが継続出来ない最大の原因は、自分に対する甘えの意識が必ずどこかで働いているからです。自己管理は、出来て当たり前のように言われていますが、思っている以上にとても難しいんです。つまり人は、殆どが主観的に自分の都合が良いように物事を判断する傾向があるからですね。実は、物事に批判的な方、他人に自己のポリシーを貫こうとする方は、この自己管理が上手くないようです。

「そうそう、うちのデブ亭主、典型的な自己中なのよね。それに客の悪口ばかり言ってるのよ。”あのクソ野郎、ローンの支払いが遅れている割には馬鹿高いアメ車がガレージに駐まっていたぞ”とか言ってるからね。少しは、自分のデブネタで、笑いを取るくらいして欲しいもんだわ。」

「安心してください、産めません、とか?」

「ププ、それ完全なパクリじゃない。」

「そういえばうちの旦那、”俺は規格外の男だった”って言ってたことがあったわよ。」

「なんかカッコイイ言い方ね、どういうこと?」

「取引先の客の自宅へ訪問した時に、2人乗りホームエレベータがあったそうよ。」

「乗ったら、重量オーバーでブザーが鳴ったとか?」

「それがね、腹が閊えて入れなかったんだって、”車いすの回転を超える幅の方は初めてです”って驚かれたらしいわ。」

「それで規格外ってこと、クククク」

# それでは講習にお越しになられた皆様にお知らせいたします。スポンサーより1ヶ月分のトライアルセットを頂きましたので、ご希望の方は後ほど受付にてお申し出ください。全員にお配り致したいのですが、残念ながら数に限りがございます。お1人様4名分まで、無くなり次第打ち切らせていただきますのでご了承ください。

「亜希子、申し込むでしょ?」

「玲子は?」

# それではこれで講習を終了します。

「ヨッシャア、受付直行!」

「ラジャー!」

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