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5人の信徒

「そうなの、この変な集団の中にいると思うと、もうあの子は助けてあげられないんじゃないかと心配で、心配で。」

 この轟音の中である。俺は亜希子の言っていることを聞き取れずに、全く勘違いした。

「このライブが何を意図してやっているのかサッパリだけど、皆、楽しそうにやってるよな。俺はもっと気持ち悪くて引いてしまうんじゃないかと思ってたよ。以外と活気のあるライブじゃないか。」

 すると間髪入れずに、返事が帰って来たのだ。

「何を悠長なこと言ってるのよ!こんなことに熱を入れている暇があったら、受験生としてやるべきことがあるでしょう!いったいこのライブのどこが面白いのよ!訳が分からない歌と踊りで馬鹿な連中と内輪で盛り上がってるなんて、何の得るところがあるの、自己満足の極みよ!パパは、こんなくだらないことをやらせるために、養育費を出しているの?」

 相変わらず、手厳しい御意見である。まさにその通り。世間様の次元では、正論でありまする。遇の値も出ないのでありますな。

「ん、ま、まあ、そうだな。・・・しかし、何だな、大人しい根暗なアイツがこんなことをやるとは思ってもみなかったよ。」

「何よ、見直したとでも言いたいの?」

「い、いや、そういう意味じゃないんだけどなあ。」

 この前の家族ミーティングでもしかり。口喧嘩で玉砕することは分かっている。このまま付き合って、無駄に精神力を削ることもなかろう。

「そうだな、この気合いを受験勉強にも活かせればと思ったんだよ。」

 結局、ジジイの寝言発言でかわしてしまった。よく言う、暴走族はあの情熱を働くことに使えばいいのに、である。

「何よ、その言葉で終わらせる気?」

 ヤバイ、戦闘モードに入りかけている。ここは一旦逃げること、イカ墨の如く、目くらましを打つベシ。

「海斗は、見付かりそうもないな。どうだい、折角外に出て来たんだ、隣のK田に学生の頃良く行った喫茶店があってね、懐かしいし寄ろうか。この煩い中だからな、続きの話はそこで良いだろ?」

「パパ、この後仕事は大丈夫なの。」

 お、俺のイカ墨が効いたか。

「ああ、ちょうど出張の帰りだ、別の取引先についでに打ち合わせに行って、終わったら直帰するって言っておくさ。」

「へえ、そんなことが出来るの。」

「えへへ、そこが営業職の良いところさ。」

 という訳で、亜希子とその場を立ち去ろうとした時である、賛美歌が終わり、そのままリズミカルなビート音が流れる中、みくりんのMCが始まった。

# ありがとうクリン!、今、カブラム様から皆の拝礼の真心が伝わったとお告げがありましたよ、喜んでクリン!(イイェーイ!)

  それじゃあ次は、今年のギャリソンマスターをはっぴよ~うクリン。(待ってました!)今回の予選参加者は、史上最多の156名だったのよね。そして、3次の予選会を勝ち抜き、先週の決選ライブで踊った5人の信徒の方を呼ぶから、上がって来てクリン!(ウオオオ、イイゾ~)

  先ずは、チームらむラムブートからのチクタクさん!(ウオオオー、チクタク、いけー!)チクタクさんは、独創的なロマンスの演舞が素晴らしく、決勝進出しました。(パチパチパチ)

  次なるは、マルミットDTの無駄ボウシさん!(いよ~、ゲーハ、最高! アハハハハ)そうなんです、ユニークな部分が評価されて、見事に決勝です。(いよ!毛ぼうしダンス!)

  そして3人目は、カマラージャのブヒ夫さん!(この贅肉野郎、スゲーぞ!養豚場のカリスマ!)彼は天才です!踊りを初めて2年程なのに、このメタボ体型からは想像もつかないキレキレの演舞に審査員も驚愕クリン!

# あれは、・・・か、海斗だわ!

 マスクを着けて顔は確かめられないが、出て来る時のひょうきんな仕草といい、確かにうちの引きこもりデブである。

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