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ぼろ儲けでんな!

# プー クワックワッ エヘヘヘヘ

「そ、そうよね、パパには試練の生活なのよね。アハハ、失礼、ママはね、今、凄く楽しんでるのよ。学生時代の友達、玲子と今でも時々連絡取り合っているんだけど、旦那と息子がやっぱりメタボでね、彼女もデブ消費税の対策しているんだって。特に、息子の方が巨デブらしくって、身長172で166キロらしいのよ。こうなると、運動やらせるにしても先に膝やっちゃうでしょう、で、減量飲料で色々と試しているらしいのよ。そこで意気投合、色んなドラッグストアに玲子と行って、薬剤師さんに根掘り葉掘り聞いて、教えてもらって探求の日々を送ってハマっているところな訳よ。ほら、これが期待できる商品の品名、成分、効能のリスト。」

 カミさんは、テーブルにその一覧表を広げた。そこには、百品目程もあろうかという飲料商品が記載してある。

「ウヘー、世間にはこんなに怪しいダイエットドリンクがあるんすね。」

「スグヘルD、バイバイカロリー、劇的スリムボンバー・・・怪しい、怪しいよ、名前からしてヤバすぎるよ。」

「ママ、まさかこれら全部試していくって考えてるのか?」

「当たり前じゃない、折角無料で提供してくれるのよ。全部、特定保健用食品の検査を受けて許可されてますからね、安心して飲んでよね。そうしないとモニターシートが作れないから。」

「もにたーしーと?」

「そうよ、皆、どれほどの効果が出てきたかを報告する試飲者リストに登録したのよ。一品、10日間服用後の効果状況を記録し作成するのよ。シート1部に付き1万円分の商品券を獲得なのよ、だからジャンジャン試飲よ。」

「えっ?、だってこれ3種類飲んじゃってるよ。」

「大丈夫、大丈夫、誰もそんなところ見てやしないし。3種類を4人でしょう、なんと10日で12万円よ!」

「亜希子姉さん、ぼろ儲けでんな!」

『この女、薬屋に魂を売ってしまったのか。』

 海斗や真保も、呆れ顔でカミさんを見詰めていた。

 そういえば昔、付き合っていた頃のことを思い出す。3年ほど経って、俺はプロポーズをした。二つ返事をもらった。そして後日、カミさんから夕食を誘われた。以前からしっかりと計画的にしないと許せない性格だと分かっていたので、まあ、結婚までの今後の段取りを話し合いたいのだろうと思っていた。その点全くいきあたりばったりの俺だ、彼女に口を出すつもりはない。それにプロポーズもいい加減だと思われるのが怖かったので、提案されたことはイエスマンに徹していた。そして当日、カミさんは、紙の手提げ袋を重そうに持っていた。

 ”どれから先に行こうかしら、楽しみ!”俺の前に広げられたのは、大量のブライダルフェアの案内だったのだ。

 ケチということはないのであるが、無料なものや安価なものに異常に興味を示し、とことんまで追求するのである。巷の主婦の方々は、多かれ少なかれ、この傾向がある。懸命になって安売りや節約に走る感覚がよく分からない。その根気と熱意を注ぐ時間と労力があれば、普通に働いた方がよほど楽に金になるのではないかと思うのである。

「駄目よ、そんなことは止めなさい。近所に知れたら恥ずかしいじゃないの。」

「友達から、からかわれちゃうよ。」

「それに、アンタは受験勉強があるのよ、そんなことに時間を費やすのは許しませんからね。」

 俺はまた、自分の世界に入っている内に、どうも会話の内容が変わっているようだ。

「何だ、なんのこと?」

「パパからも言ってあげてくれる。ニイが気持ち悪い路上ライブをやるらしいのよ。」

「なんてことをおっしゃるのだ。神聖な崇拝の舞を侮辱してはならぬ。」

「なんだ、海斗のヲタ芸のこと?」

「そうなのよ、ほら、これ見て!」

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