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鬼査察官

「ああ、そうだね、宜しくな。」

 無能な奴ほど、高飛車な態度を取りたがるものだ。つまり、同じ土俵に上がれば相手以上の仕事が出来ないと分っているからである。それは君がやる仕事だと頭ごなしに言ってくる奴は、無能なのである。

 早速俺は自分の椅子に戻って、恐怖の部隊の全貌を知ることになる。

********

# うえ~

「亜希子さん、この気持ち悪い液体は、拙者にはかなりきついですぜい。」

 カミさんが勧めるSMDTは、効き目は抜群なのだろうが真保も海斗も文句ブーブーである。もちろん俺もである。

「スペシャル?ミラクル?」

「そうよ、究極のドリンクダイエット法よ、何か意見を言いたい人がいらっしゃるのでしょうか?」

「だってさー、激マズの食前茶、食中茶って、ママ、これって食欲抑制方法なの?これじゃあ、少なくても一番楽しみな食事も興味無くなっちゃうわよ。」

「ちゃんと計算されているのよ。食後のお茶も決まっているからね。それから、これからは冷蔵庫と食品庫の在庫管理も徹底するからね。ほら、これが入っている品物の個数、栄養価、カロリーの一覧表、取り出した人は自分の名前の欄にその個数を記入するのよ。」

「ええっ!、そこまでやるの?」

「ついに我が家に、カロリーの鬼、ダイエット魔王が降臨したのか~!」

「何よ、その酷い言い方、私は皆の夢、希望、そして栄光の為に闘い続けているのよ。」

「ん~、その台詞、どっかで聞いた気がするな。感動する言葉だなあ。」

「パパ、それどういうこと?」

「ん、いや、つまらない話だ。」

『まさか、素っ裸でトレーニングに興じていたことを話せないよな。』

「俺も思うに、そこまでやらなくても良いんじゃないか。皆それぞれに頑張っていることだし。」

「何を甘いことを言っているんですか。ほら、海斗に作ってもらった皆のダイエットの進み具合をご覧なさい。ほら、ここが目標地点の国民健康調査の予想実施日、このままだと到底追いつかないわよ、皆、死ぬほど運動するつもりないでしょう。とにかく代謝力が上がる体質に変えることが大事なのよ。特に、パパ、この体脂肪率は何よ。」

「そうよ、そうよ、一か月経つのに0.1ポイントしか下がっていないとはどういうことなの?」

「なんだ、なんだ、2人の鬼査察官に詰め寄られるブーデーの容疑者、亮さんはこの後、どう白を切るのでしょうか~。」

「海斗、お前な。俺は、言われた通り忠実にやってるよ。担当スタッフも言ってるけど、俺の身体は元々デブ細胞が多いんだそうだ。体質が変わるまで時間がかかるかもしれないって。だから、これからだよ、これから。」

「怪しい、怪しいよ、まさか、会社でたらふく食ってないでしょうね?」

「あ、当たり前じゃないか。俺は、皆の夢、希望だ。そして自由を勝ち取る為に闘っているんだぞ。たとえそれが無謀な挑戦であっても、最後まで諦めるつもりはない。」

「・・・亮さん、何のことでしょうか?」

「それよりママ、お前はどうなんだ。俺や海斗、真保と違って、運動らしいこと全くやってないが、大丈夫なのか!」

「おっ、遂に窮鼠猫を噛むですか?」

「パパ、せっかくトレーニングが順調に行ってるのに、どうしてそんな事するの。」

 女の感の鋭さとは、恐れ入る。しかし、人間は生活に楽しみを失っている時ほど不幸なことはないのである。

「それでさ、皆に聞くがこのダイエット生活が苦しくて、止めたいと思ったことは無いか?」

 すると、これだけ騒いでいたいつもの状況が一変し、誰も言葉が出なくなった。

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