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お気楽な男等

「まあ、そうだけど、でもそんなに突き詰めて考えなくてもいいじゃない。そりゃあ、新居購入に奔走するデブ親父の姿より、女剣闘士の方が数倍カッコイイ、けどね、たかがゲームの中のことじゃないの。」

「いいや、これは僕自身の人としての在り方の問題なんです!」

「頑固者なのねぇ。まあ、いいわ。この体験は大成功、丸ちゃんのアドレナリンが大量放出されて、デブ体質改善に貢献したんだから、良かったわ、良かったわ。」

「むーさんは、あっさりし過ぎですよ・・・それに・・・」

「何か気になることでも?」

「またこのバーチャルゲームをすること出来ますか?」

「ははーん、女剣闘士のことが心配なのよね。もう手が届かないと分っていても幸せを祈る優しい男心、素晴らしいわ。」

「茶化さないでくださいよ。」

「それがね、ゲームの内容は、キーワードを入れるとそれに従ってシステムが取り敢えず最初の設定をしてくれるんだけど、後は、使用者が発した言葉や感情の動きによって神経から出て来る微弱な電気を、体中に貼ったセンサーで読み取って、勝手にアレンジしていくのよ。だから、パターンは無限大、同じストーリー展開しないのよ。」

「へえ、で何って入れたんですか?」

「格闘、デブ、ブタ。」

『何でデブ、ブタ?って、道理で出て来るキャラクターが、そんなのばっかりだった訳か。』

「でも、楽しそうにブンブン、パワースティックを振り回してたわよ。もう、激しいのなんのって、贅肉が踊ってたわね。」

「それは、それは、滑稽だったでしょうね。・・・そうかぁ、もう彼女には会えないのかあ・・・。」

 そうして、翌日の昼。俺は、いつもの職場の部下達と唯一の楽しみの飯を食いながら、ダイエットトレーニングの様子を会話のネタにしていた。

「へえ、そんなリアルなビジュアルゲームがあるんですか、スゲー面白そうだな。」

「ネエネエ、係長、キーワードを入れると如何様なシュチュエーションにもなるんですよね。」

「あーあ、吉田ちゃん、美奈子、ホテル、××とか入れてみたらなんかで妄想してたんじゃない。」

「そうかぁ、相変わらず助平だねえ。」

「な、何、言うんですか。僕がネクラ変態だと思われるじゃないですか。」

「まあ、そうだよな。」

「酷いな、よってたかって弄らないでくださいよ。・・・言われていることは当たってますけどね。」

# ドアーハハハ

「ところで、ついに本会議可決になりましたよね。」

「例のデブ税法だろ、全く無茶苦茶だよな。俺もダイエットしろって母ちゃんから言われてよ、一応、この身体は筋肉質だから大丈夫、体脂肪率18%だって言って瀬戸際で踏ん張ってるんだ。」

「ぷぷ、伊東先輩、何ですかその無茶苦茶な戯言は、その腹で言われても奥さん信じないんじゃないですか。」

「吉田ちゃん、人間は思い込みが大事なんだよ。そう考えていることを継続していれば次第にそうなってくる。現に、気を使ってるせいか腹周りの肉が減ったような気がする。」

「気がするだけでしょう?」

「絡むね~、吉田ちゃんも妄想で恋愛したところで、進展しないんだよ。」

 全くお気楽である。この2人は現実的な意識が無いのだろうか。

「マアマア、ところで伊東ちゃんも健康消費税の為にダイエット生活を始めたらどうなの?」

「そうですよね、法律実施に向けて、役所の方じゃ、国民健康調査の臨時予算を組み出した様ですよ。積算のために地元の医療機関に受け入れ人数を報告させているみたいです。」

「いや、俺はそれよりも会社の動きが心配なんだよ。」

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