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生き方のギャップ

「当たり前よ、死ぬことは無いけど、自分の腹を思い切り突いたんだからね。ほら、良く見てみなさいよ。」

 確かに、みぞおちの付近が真っ赤になっている。明日には、デカい青タンになっているんだろうな。俺は、その部分の周りを静かに触りながら、しみじみと感傷に浸って呟いた。

「あの娘は、家族や仲間を買えたのかな・・・。」

「あの娘?どういうこと?」

「あっ、いや、何でもないんだ。ちょっと、ゲームの中での出来事を振り返って、思い起こしていたんだ。」

 するとむーさんは、いやらしい目付きでニヤつきながら、それと無くツッコミを入れてきた。

「さては、自殺の理由は、その女のことなのね。女のために命を絶つなんて?・・・ふふーん、丸ちゃんにそんなところがあるんだ。」

「ち、違いますよ。」

「アハハハ、いいオヤジが、ゲームの女とプラトニックラブに陥ってる。モバイルゲームのイケメン男子に夢中になるブス女と一緒じゃない、こりゃ参ったわね。」

 俺は最近、言動や仕草から、むーさんが隠れオネエではないかと思うようになった。高野女史にコンプレックスを持っているようだし、今言っているように、オタク系の女子に対する差別視したような発言からみても、女性に対する考え方がかなり手厳しいのである。

「それじゃあ、どういうこと?華々しく自害して有終の美を飾るストーリー設定なんか無いわよ。」

「がぶりの厳しい詰め寄りだなぁ、答えなきゃ駄目?」

「そうよ、このシステムは一般商品化を目指しているのよ。今は色々な体験者の記録を積み上げているの。利用するかわりに報告書を提出するのが条件なのよ。特に危険な場合に到った時は、どうしてそうなったか詳細な記録を残すことになっているの。」

「んー、仕方ないな、絶対言ったことは外に漏れないよね。」

「そんなに内密にしたいことなの?」

「いや、そんな大袈裟じゃないんだけど。」

 俺は、むーさんに闘技会で女剣闘士と出会い、ついに最後には決着を着けることになった経緯を話した。

# アハハハハ

「何が可笑しいんですか。人が真面目に話しているのに。家族や仲間を奴隷から救う為に、若い女性がですよ、命を懸けて闘う、その崇高な志に胸を打たれていることが変でしょうかね?」

「むふ、そうよね~、自然な気持ちだわ。笑っちゃってごめんなさい。丸ちゃんが、そんなピュアな心の持ち主だったとは、に驚いているのよ。」

「なんだ、ヤッパリ馬鹿にしていますね。でも、僕は村越さんに感謝していますよ。」

「そう?感謝?」

「僕等は生まれながらにしてある平和という名の下に、ぬくぬくと暮らして来ている。危機的な状況にこそある自分の本来の姿を、正面から見つめるなんてないじゃないですか。」

「どういうこと?」

「僕は、グラディエーターになって闘っている時、自分の憂さ晴らしなんか考えていた。」

「ふーん、どんな憂さだったの?」

「小さいことですよ。彼女との生き方のギャップに、もう恥ずかしくなった。いったい自分は何のために、何故生きているんだって。」

「フフフ、取り合えず今はデブからの脱却じゃないの?」

「ぶっ、確かに!、確かにそうですよね!」

「何もそんなに怒らなくったって良いじゃない。別に、デブは生きるなって言ってる訳じゃないのに。」

「彼女と自分、どちらが存在している価値があるかですよ、生きている価値!どうみても僕が闘いに負けた方が意義がある!」

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