ヲタ芸
真保のカウンセリングは、いたって普通のダイエットプログラムをアドバイスされたようだ。俺としては、それはどう見ても納得いかん!というところであるが、騒いだところでどうこうなる訳ではない。それより今回の消費税の一件で、引きこもり寡黙デブ、海斗が、このところ妙に生意気な発言が多くなっていることに興味が沸いている。
「ところで、海斗、お前は対策活動は進んでいるんのか。スポーツセンターのジム通いで手応えがあったのか。」
「そうよ、パパのことばっかり言ってないで、あんたはどうなのよ。」
すると、ごそごそと手元から一枚のカラープリントの画像を出した。
「吾輩の身体の運命は、この女神達様と共にあるのであります。」
それは、派手なメルヘンチックなコスチュームの3人の女の子の画像であり、小汚いビル屋内の仮設ステージに立っているようである。
「これが、チームバッチとウェアであります。」
「なんだ、観たことないアイドルだな。最近、すげー数の集団で次々に出てくるから何が何だかオジサンには分からないよな。それに、皆、同じような姿格好してるから全く見分けがつかん。でも何処かの雑居ビルの中か?、結構ダサいステージだな、お前、この娘達の親衛隊にでもなったか。」
「親衛隊?、亮さん、昭和のアイドルファンクラブの話でっせ。この女神様達は、もっと身近にコミュニケーションを頂ける崇高なる方々でありまする。」
すると、真保が話に割って入ってきた。
「パパ、ママ、大変よ!ニイは、ヲタ芸グループに入っちゃったみたいよ。」
「おたげい?・・・何それ。」
「パパは、本当に浦島さんね。海斗、ママはそんな訳の分らない気持ち悪い集団は認めないわよ、早く手を切りなさい。」
「いやだよーん、だいたい名前だけで勝手に先入観で決めつけないでくれよ。とにかくこれを見てくれよーん。」
次に海斗が出してきたものは、その集団の活動画像、組織説明、年間スケジュール等の活動報告書だった。
「何々、我々スーパーパフォーマンスユニット、カマラージャは、鎌田信吾を代表とし、常にヲタ芸の技術を磨き、日々の鍛練のみならず創造と革新を目指していく組織集団である。ふーん、結構真面目に取り組んでいることが書いてあるな。そう言えば俺が高校の時、さっき言ったアイドルファンクラブの南関東地区親衛隊K県支部長をやってた奴がいてさ、これがほとんどボディガードの様なことやってたな。コンサートの応援が終わると、アイドルの身辺警護の指示のために、夜行電車で次の会場に向かうんだよ。期末テスト前でも関係なかったな。本当に高校生がだよ。」
「そんな子、さぞかしどうしようもなかったんでしょ。」
「ああ、常に学年トップ5にいたな。」
「アハハハ、スゲーなそいつ。」
「海斗!だまらっしゃい。パパ!こんな時、そんなくだらない話しないでくれる。何せアンタは、来年受験なんだからね。分ってる?」
「おーコワ。」
「どうもこの私達のダイエット計画に、オタクのアンタが乗り気だと思ったら、そういう魂胆だったのね。」
「ママ、ちょっとばれちゃうわよ。」
私達?計画?ばれる?とはなんだ?
# 海斗!
「まあまあまあ、ママ、落ち着きなさいよ。ところでさ、そのヲタ芸っていうので海斗、痩せることが出来るのか?」
「亮旦那、あたりめーですぜ。ほら、このスナップの中央のお方が代表の鎌田さん、身体はプロダンサーなんですぜ。まあ、ここまでなるには、僕じゃあ無理がありますが、活動報告とスケジュールを見ればマジの活動団体だと分かってくれるよね。」
「それでどんな芸をやるの?集団コール、統制エール、ペンライト振りとかか?」
「なんすかそれ?亮さんの時代とは違いますよ。それは、女神様達に捧げる舞であり、アーティスティックパフォーマンスなのです。ひとーつ、タイガーは崇高な精神で眼差しを向けるべし。ひとーつ、ロマンスは心が伝わるべく熱く腕を差し示すべし。ひとーつ、PPPHは鋭く拍手し、切れ味良く声を掛けるべし。ひとーつ、マワリは優雅に身体をひねり、大胆に跳び上がるべし。ひとーつ、・・・」
「ママ、ニイ怖いよ!」




