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ネガティブデブの憂鬱

 そして、その日の夜である。我が家では今後、日曜日の夕食時に健康消費税導入に係る対策会議を開くことになった。議題は、それぞれの一週間の活動実績報告、有力情報の提供、今後の取り組み予定、そして最後に健康チェックを行い、努力状況を確認することになった。亜希子の作ったスペシャルダイエットメニュー夕飯を口にほうばりながら、まず俺が、今日の体験プログラムのカウンセリングの様子を話した。

「ふーん、それで丸さんは、取り敢えず提示された1カ月のダイエットプログラムをやってみることにしたんだ。」

「そのアドバイザーのむーさんとツッチーさんって本当に変な、いえ凄く面白い人達ね。」

「デブとマッチョと気弱、アハハ、3人のキモいおっさんの馴れ合いだ。いずれは友、ホモ達になっちゃうんじゃない。」

「バカ言うなよな。まあむーさんはともかくとして、土屋さんは国家資格を持っている立派な人物なんだぞ。ただ、これから協力してやって行く上で、堅っ苦しいものはどこかで協働意識の邪魔になるからということで、我慢してもらって呼び名を付けたんだぞ。」

「それで、パパも丸さんになったの、でも、亮さんにならなかったのは何故?」

 ブタ丸君と言われてたなんて、言えるはずねーよな。

「まあ、そんなことはどうでも良いんだ。そういう事で、どこまで効果が出るかは未だ不安だらけだが、新居購入のためどんなダイエットとするかあーだこーだ言い合いながら、煮詰まったところまでやった。大変だったんだぞ。」

「ふーん、なんか言い包められた気がするけど、それで、いったいどんな事をやるようになったの?」

「ああ、一応提示されたダイエットプログラムを反映したスケジュール表をコピってきたから見てみるか?」

「パパ、見たい見たい。」

 ホチキス止めしたA4の資料を配ると、案の定、皆、見るや即座に予測した反応が返ってきた。

# キャハハハ、何だこれ、おもしれー

「やっぱりそうくると思ったよな。俺も、漠然としか説明を受けてないから、どんなことになるのか怖いんだよな。」

「まず表題だよね。贅肉バスター3 丸さん1か月で激やせしちゃって素敵!

 BY チーム村越マル秘プロジェクト、だって。」

「携帯電話の何かのゲーム名をパクったんじゃねえ?丸さん、本当に大丈夫かよ。ちょーふざけてるよな。」

「ニイ、なに茶々を入れるのよ。私が紹介したところだからね大丈夫なの。」

「そうよ、海斗。パパみたいな身体をシェイプアップするって大変なのは分っているでしょう。相手は専門家、きっとパパに楽しくやってもらおうと考えたのよ、ねえパパ。」

「あ、ああ・・。」

 そこは、海斗の言う通り、ふざけてやがると俺も思ったよ。

「あとこのプログラム名も全然訳わかんないよな。バーチャルファイター・スパルタカス?、スパイスロード巡り?、ビックリエコー?、何だろう、何やるんだろ?」

「まず、最初の3週間で代謝を向上させて、後の2週間で有酸素運動と無酸素運動を組み合わせるそうだ。」

「アハハハ、それがこの変てこなプログラムなんだ。」

「海斗、お前も参加するか?」

「い、いや、遠慮しときます。丸さん、実施後、感想をお願いいたします。」

「な~んだ、海斗は口ばっかりじゃない。パパ、週に火、木、日とスケジュールが組まれてるけれど、疲れちゃわない?、大丈夫?」

「ああ、むーさんは、文科系の人生を送ってきた俺に合った内容を考えてあるって言ってたから、坦々と運動するようなことはさせないと思うよ。とにかく前向きにやってみるよ。」

 そう言っているものの、ネガティブデブの俺、積極的に運動をやったことなどない、暇な時は必ずテレビでつまみ食いの実績があるだけに、全うする自信は限りなく小さいのである。そんなことは十分承知のはずの亜希子達が、妙に期待しているのがおっくうである。どこかで、まあパパにはやっぱり無理だよ、と軽く引導を渡してくれないかと期待しているのに。

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