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救いのメカ神

#“気がついたか?”“吉積君、吉積君 生きてるよな?”“オイオ~イ”

副社長、常務、総務部長、経営企画部長、なんとそこには、辞令交付式を行う特別会議室に飾ってある額入りの顔写真でしか見たことのない、そうそうたる重役達の顔が並んでいるのである。つまり、その前でウ×コ塗れの下半身丸出しで倒れているのだ。俺は、もう、醜悪なる汚物体であることは紛れも無い。この醜態では、どんなに繕い足掻いたところで、俺の社会的品位は、いや、人としての地位を維持できなくなった。それでも、この姿は自分ではない、不可避な事情があってやむを得ずなのだと言い張る輩には成れない。やっちゃった政治家、買っちゃった芸能人がよくやる開き直りの姿には頭が下がるよな。

# ツンツン ツンツン “ホレホレ” ツンツン ツンツン

『やっ、やめろおー!』

なんと、皆でよってたかって、俺の身体を棒の様な物で突きはじめた。

# ツンツン ツンツン “ホレホレ” ツンツン ツンツン

『あは、あは、や、止めてくれ、やめ、やめ。』

# ツンツン ツンツン “ホレホレ” ツンツン ツンツン

『やめて、やめて。』「あは、あはあああん、あは。」

# ツンツン ツンツン “ホレホレ” ツンツン ツンツン

「やめれろおおおおおおおお、お?」

ある刺激が限界に達した時、脳からの理性の制御を遮断してしまうことがある。そう言えば、昔、風邪をひいて、極度に睡眠不足になっている時に、当日で期限切れになる映画の券が2枚あることに気付いたカミさんは、無理矢理に俺を映画館へ連行した。よりによって一番話題のアクション映画で、案の定、最前列の席しか空いてなかった。それでも音圧を感じるほどのスピーカーを前にしても、熟睡したことがある。爆音で面白さもくそもないと、カミさんはブーブー不満を言っていたが、そんな状態でも、結構、熟睡でスッキリしていたのを憶えている。能書きは長くなったが、ツンツンの刺激が続き、ついに羞恥心による躊躇の制御を麻痺させてしまい、勝手に身体が起きてしまったのである。

「あ・・・ああ、あああー、す、すみません、誠に恥ずかしい、ご迷惑を、ご迷惑をかけてしまい、お、お、お許し頂けますかあああああ。」

俺は、もう、どんな事になろうが、構わない。この醜態を逃れたい一心で、今考えうる限り、結局は子供じみた救いを乞うしかなかった。

「お許し下されエエエエエエエエ!」

俺は、汚れたケツ丸出し、その場でうずくまっている姿で、身勝手な救いを懇願した。

「怒らないで、お願いだから、私目を、なんとか、許してくださいませエエエエ!」

 もう俺には、羞恥心というものが存在しなくなったのかもしれない。自分でも驚くほどの開き直りの姿をさらけ出している。これで即刻解雇され、明日から何処かの公園で、暇な時間をどう潰すかのお。

#“・・よし・・づ・・み・さ・”

するとすぐ傍で、聞き覚えのある声が話し掛けてきた。

「吉積様・・・、吉積様。」

それは、このウ×コ塗れの汚物体とは正反対の、清らかで、透明な美声が耳元に触れたのだ。

「誰も怒っている人なんて居ませんよ。ですから、私が他の皆さんを一旦この場から離れさせますので、目を覚ましてくださいな。」

オオ、そのかぐわしき、慈愛に満ちた語りかけは、あのSM推進課で出会った女神のようなコンシェルジュコンピュータ。

『‘アカネ’さーんだよ。』

#「お集まりの皆さ~ん。このように注目の的になられていては、吉積様も同じ様に、目を覚まして頂くタイミングを見つけ出せませんので、ここは一旦お下がりくださいませ。」

#“そうかあ、仕方ないな。”“ここは離れるとしますか。”

「ささ、皆様方、ご協力をお願いいたします。」

# ザワザワ ザワザワ

素晴らしい!次第にざわつきが遠退いていき、人の気配がしなくなった。やっぱりアカネさんは、気遣いがクソ・アホ・ゲス・カスを含め全人類に対して分け隔てない、この上なくエクセレントな性格である。人間の女性なら、間違いなく嫁さんにしたいところ。将来の介護問題を解決するであろう、支援ロボットとして登場すれば、間違いなく世界を凌駕する大ヒットとなるであろう。もし彼女?が、俺と一生添い遂げてくれるなら、カミさんと縁を切っても構わない。


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