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スーパースポーツフォーラム

「おお、あれか。俺もあそこ気になってたんだ。んー行きたい、廃案の話、信じていいの?」

「僕は、そんな話無くても、ハナっから消費税は考えてませんよ。」

「それに、他でそんなに絞られてれば、昼食っても大丈夫じゃないですか?今まで食っていた生活と変えたせいで、逆にストレスで身体がまいっちゃいますよ。」

「だいたい職場の回覧で、タウン誌の飯やのクーポンを真っ先に切り取るお方がそんなことしたら病気になっちゃいますよ。」

# んー、んー

  食欲とは、正直で際限が無いものだ。元来ストイックな性格を持っていれば、こんな身体になることもない。そう言えば、まだ小さかった頃、祖母ちゃん家に行けば、何でも食わせてくれた。その時いつも、人生は短いんだよ、だから生きている内に美味しい物は沢山食べておかないと、死んだ時後悔するからね、て言っていた。その祖母ちゃんも、亡くなる近くはボケちまっていたが、決まって都合よく忘れることは、飯を食ったかということだった。人間の欲望は、食うことだけは死ぬまで残るんだろうな。

# 係長、行きますよ。

「お、待ってくれよ~」

 その週末に、俺は娘の真保にせがまれて、民間のスポーツクラブに行く羽目になった。今だと入会金無料、最新のトレーニングマシンの体験、先進の身体測定の受診、希望に沿ったシェイプアッププログラムを個々にカウンセリングにより提示してくれるという。有り難い特別サービス期間中だそうで、当然俺には全く興味が向かないものであるが、仕方なく車を出すことになってしまったのだ。

「パパ、ほら、あれよ。」

 真保の指差す方向に、派手なオレンジ色の建物が見えてきた。

「ああ、あれか、なに、スーパースポーツフォーラム ロマネスクって言うのか。」

「今、凄く流行っているんだよ。♪ヤッテヤッテ、シェイプアップ、♪フィットフィット、ミナミナ、クルクル、ロマネスク、ってサイキックドールの娘がコマーシャルでよくやってるじゃない。」

「おお、あれか!デブタレント、ちずるが、乱入してくるやつか。」

「それそれ、パパは興味無いかもしれないけど、こういう世界もあるって感じで付き合ってくれれば良いよ。それにどうすれば痩せられるか、太り方を診ながら、個人別にアドバイスしてくれるから、相談を受けるだけでも参考になるよ。」

 そうして、大収容の専用駐車場に車を置いて、本館への通路を歩くと次第に人がざわつくのが聞こえてくる。フロントの入口の自動ドアが開くと、館内の騒音が飛び込んできた。

# 増税に勝つ!太ってるだけで無駄に税金を払うのですか?直ぐに痩せるための決め手は、ロマネスク。ロマネスクは、貴方のご希望の身体に仕上げることが出来るフィットネスマネージャーです。 増税に勝つ!・・・

 クラブの会員達だろう、様々なトレーニングウェア姿の人達が、フロア内を見えている。こう云う特別な志向の屋内の雰囲気は、普通人の俺にとっては、目のやり場、居場所が分からずソワソワしてしまう。初めて動物園に連れて来られた猛獣、いや珍獣の気持ちだ。そして、何と無くすれ違う時にジロジロと身体を観察されているような気がしてならない。なんだ、このデブ親父、痩せる為に来たんだろうな。そういう目で見られていると勝手に卑屈に思ってしまう。

# お伝えいたします、13時20分から行われるDスタジオのハイパーインパクトエアロは始業5分前となりましたので、受講される方はお急ぎください。

「パパ、パパ、こっちに来てよ!未成年は、保護者同伴で受付ないといけないのよ。話したよね。」

 うっかりフロント受付に行った真保のことを忘れてしまっていた。

「ああ、スマン、スマン。」

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