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パパを外したら

 人は、大人になればなるほど自身をコントロールできなくなる。それは、自分への愛着観念が浸透してしまうからである。心や肉体に経験したことのない変化を加えることは恐ろしく、不安であり、そして苦痛なのである。平たく言えば、人は皆、自分には甘い。そして、省みなくなっていく。結果として同じことを繰り返す。年を取るほど戒めてくれる者が居なくなり、死ぬまで治らない。例えば、いつまでたっても遅刻癖が治らない者のがそうである。何故かこれ位遅れても許されるだろうという意識が働いているのである。ダイエットできない者も、これ位食べても大丈夫だろうと意識が働く。

「ママ、もう、国民一斉健康診断が始まっちゃうよ。」

「あーあ、そうよね。ここでパパを問い詰めても、何か劇的に改善する訳じゃないし、海斗の悪ふざけで怒る気も失せちゃったわ。家の購入どころか、これからの生活費のことが心配になってきているからねえ。」

「健康消費税の直撃を喰らって、我が家は暮らして行けるの?ニイ、どのくらいの生活費増加になるの?」

「ではでは、拙者の緻密なエンゲル生活指標計算によると・・・。」

# カチャカチャ カチャカチャ

「出たでござるよ、むむむむ、に、2割5分から3割増でござりまする。」

「ニイ、全然アバウトじゃないの、それ。」

「そうかあ、じゃあ残業増やせば、現状維持はなんとかなるな。」

「ええ~パパあ、なんで考えがそっちに行っちゃうの?」

「それじゃあねえ、海斗、パパを外したらどのくらいになるの?」

「亮殿を無しでござるか?」

# カチャカチャ カチャカチャ

「むむむむむ、出だぞよ、な、なんと、いいい1割弱でござるよ。」

「フーン、そうなの、やっぱり。」

「なんだなんだ、俺を外して考えるなんて、ママ、どういうことだ。」

「あら、あらゆることを想定して、どういうことが一番賢い選択か探らないと最適な将来か決められないじゃないの。これはあくまでも仮によ、仮に。健康消費税の負担率は世帯毎でしょう?折角、皆で頑張って下げた分を反映させたいじゃないのよ。」

「なななな、そ、それは、離婚も辞さないというお考えなのござるですかあああ、亜希子のお方様アアアアア。」

「海斗は黙っていろ!」

「ええ!、亮様までも拙者を、ぷしゅるるるる~」

「ママ、どうしてそんなこと考えるの?私達、パパの給料で暮らしているんだから、外すなんて有り得ないでしょう?」

『真保、よう言うた!』

 やはり娘は違う。息子は母親と、娘は父親と、愛情が通いやすいと云う。へらへらと馬鹿な言葉を吐きまくっている海斗など毒を吐きまくっているカミさんには丁度良いではないか。するとである。

「真保、好きな人ができるようになったからとはいえアンタはまだまだこの厳しい経済社会を生き抜く術を知らない子供なのよ。現実はそんなに甘くはない、そんな考えじゃあ直ぐに叩きのめされて、後悔しても許してはくれないのよ。私は母親として、アンタ達を守って行く使命を負っているんだよ。生き抜くためには、何処で身を切るかも考えてないとね。」

『身を切る?』

「なななな、亜希子、お前・・・。」

「ぬおおおおおお、亮さんは、動物界脊索動物門爬綱有鱗目なのでありますかああああ!」

# パシ!

「イテテテ。」

「お前、ふ、ふざけ・・。」

「ふざけないでよ!私は、もう、ママの命令に従う子羊じゃないのよ。」

「子羊でなく、コブタじゃな・・。」

# パシ!

「いてーな、何で皆で寄ってたかって拙者を。」

「私は、パパを見下すような恐い妻になるつもりなはいわ。一緒に何でも話し合って、心を通じ合える人を選ぶの。それが、本当の夫と妻の姿じゃないの?こんな形の夫婦っておかしいわよ。」

# パシ!

「痛!」

「ワオ!息子だけでなく娘の頬っぺたへも!”私、お父さんにも打たれたことないのに!”BY海斗。」

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