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4時間目―四谷花月

 今日から学校です。久しぶりなので、何だかハイになってます。でも、久し振りに皆さんに会えるのが楽しみです。


「お姉ちゃん。急いで急いで」


 私の言葉と共に、お姉ちゃんが階段を降りてきた。まだ起きたばかりのようで、寝癖があり、瞼も覚束無おぼつかない様子だった。


「早く急いで」


 早く行きたくてウキウキしている私。それをまだ覚めていない目で見るお姉ちゃん。


「だって、まだ7時だよ?」

「えっ!? 何言ってるの? もう8時少し前だよ」

「……え?」


 一間を置いて、お姉ちゃんは居間の掛け時計を覗いた。


「ヤバイよぉ!? 忘れてたよ!? 遅刻だよ!? どうしよう!?」


 たくさんの単語を並べて、お姉ちゃんは急いで支度をした。

 お姉ちゃんが支度をしている間、私が私達姉妹の話をしましょう。

 まず、私は四谷花月よつやかづき、中学一年生。その日暮しをモットーに生きてるつもりです。

 そして、さっきから私がお姉ちゃんと言ってる人物は美紀みきお姉ちゃん。お姉ちゃんは見ての通り、マイペースに生きてます。私と一緒ですね。


「ゴメンね。待った?」


 支度が出来たのか、お姉ちゃんが玄関までやって来た。しかし見ると、寝癖や瞼の腫れぼったさが気になった。


「お姉ちゃん、待ってるから寝癖直して、顔も洗ってきなよ」

「いいの? じゃあ、行ってくるね」


 お姉ちゃんは洗面所の方に走り出した。


「すぐだからね」


 声と共にドライヤーと水の音が聞こえてきた。

 お姉ちゃんは朝と昼と夜が苦手なようで、時々こうして私が待たされます。まあ、特に気にしてません。年にほんの2、300日くらいですからね。


「ごめんね。今度こそOKだよ」

「うん。じゃあ、行こうか」


 私は勢いよく玄関のドアを開き、外に出た。

 今日は天気が良く、春の陽気をたくさん浴びることが出来る。こんな日に皆さんと会えると思うと、スキップでもしたくなるような気分になる。

 家の前の道を少し行った所に十字路がある。私達はよくそこで待ち合わせをする。クラスのみんなが来るまで待つのだ。

 待つ、と言えば昨日、恵魅ちゃん達が用があるから待たなくても良いと言ってました。どうしたんでしょうね。

 十字路に着くと、そこには神無月先輩、穂村先輩、そして近衛先輩がいた。


「おはようございます」

「おはよぉ」


 私達が挨拶をすると、神無月先輩と穂村先輩が挨拶を返してくれた。


「おはようでゴザル」

「おはようアルよ」


 しかし、近衛先輩は気付いてないようだった。

 近衛円このえまどか先輩。よく一人でいる。本が好きで、どちらかと言うと無口な方。

 近衛先輩が気付かないのは、本に集中してるからだ。私は先輩の前まで行って、もう一度挨拶をした。


「近衛先輩。おはようございます」


 近衛先輩は本から目を離し、私の方を向いた。その時、私はしまったと思った。集中して本を読んでいるのに、邪魔をしてしまったからです。しかし、


「……おはよう」


 先輩は無表情のまま、挨拶を返してくれた。私は少しだけ、ホッとした。


「あ、みんな。おはよう」


 私達の来た反対の方向から声がした。見ると、そこには麻奈美先輩、海道先輩、それと小雪ちゃんがいた。


「あ、おはようございます」


 私は三人に挨拶した。


「おはよう!」


 相変わらず小雪ちゃんは朝から元気なようです。


「あれ? 千鶴ちゃん達は来てないんだ」


 お姉ちゃんのように眠そうな声で、海道先輩が気付いたように聞いた。


「また井上殿が遅刻でもしたのだろう」

「まったく、裕司の遅刻癖はまだ直ってないアルか」

「進歩のないヤツだな」

「夜未も似たようなものアル」

「すももちゃん。それはどういう意味だい?」

「聞いたままアル」


 どうやら、皆さんは春休み前のままらしいです。


「クスッ、みんな変わってないのね」

「そう簡単には変わらないわよ」


 麻奈美先輩の言葉に、お姉ちゃんが笑いながら答えた。


「ですよね」


 私は皆さんの変わりなさに安心して、吹き出しそうになりながら言った。


「まぁ、みんな変わらないで何よりだね」

「そうでゴザルな。これが小生達のありのままでゴザル」

「そうだよ。……あれれ?」


 その時、小雪ちゃんが何かを探すような素振りを見せた。


「どうしたの?」

「恵魅と君枝がいないのです」


 小雪ちゃんの言葉に、みんなが、そういえばと辺りを見渡した。いつも二人は誰よりも早く来るので、まさかいないとは考えなかったのだろう。


「あ、それなら昨日電話があって、二人は用事があって先に行ってるようですよ」

「そうなの?」

「あの二人、今日日直だったっけ?」

「ううん。今日は千鶴ちゃんと和彦君のはずだよ」

「じゃあ、なんで?」

「なんでだろうね?」


 みんなが疑問に思っているなか、近衛先輩は輪の外にいたが、二人の不在は気になったらしかった。

 みんなが様々な憶測を飛び交わしていた、その時。テッ、テッ、テッとサンダルで走るような音が聞こえた。私達は誰かが走ってきたのだろうと、それを確認するために後ろを振り向いた。

 しかし、さっきまで鳴いていたサンダルの音が止み、そこにも誰も居なかった。私は気のせいだと思ったが、あんなにはっきり聞こえていたのだから、気のせいのはずがなかった。じゃあ、何だったんでしょう? お化け?

 私が先程の不思議な現象を、皆さんに話そうとした時。急に空が暗くなりました。

 一瞬、太陽に雲が重なったと思いました。しかし、今日は雲一つない晴天でした。じゃあ、鳥? それにしては大きすぎる。じゃあ、何?

 私は空を見上げました。その行為は、その場に居た全員が同時に行いました。

 太陽を隠した正体。それは、……。

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