2時間目―我孫子和彦
学校の最寄り駅の隣の駅。俺等の朝はここから始まるような感じだ。
俺は我孫子和彦。神様学園に通っている。身長は190ほどあるが、中学生だ。むしろ、俺が正常なんだ。みんなが小さすぎるだけだ。世界を見てみろ。200を越える人なんて珍しくないぞ? みんなが小さすぎるだけたんだ。
「和彦? どうかしたの?」
「あ、すまん。何でもない」
ちょっと取り乱してしまったようです。すいません。
今、話し掛けて来たのは相原千鶴。いつも明るい性格の天真爛漫。と言うより、何も考えてなさそうな猪突猛進娘。俺等のクラスの中じゃトラブルメーカーの地位を保っている。ある意味はた迷惑な奴だ。
「ねぇ、和彦?」
「ん?」
「蹴るよ?」
「すいませんでしたッ!!」
俺は深々と頭を下げた。
こいつには頭が上がらないのは、今に始まったことでない。
その時、肩をポンッと叩かれた。見ると、笑顔で血管を飛び出させた拳を握り締めている千鶴がいた。
「すいやせんでしたッ!!」
俺は公衆の面前で土下座をした。今しないと、次の瞬間には裸でボコボコにされ、気絶した状態で放置されそうだったのだ。
「おはよーッス」
眠そうな声で、井上裕司が現れた。
「何で土下座なんかしてんだ?」
「色々と諸事情……がな?」
「ふーん」
こいつは井上裕司。簡単に言うと、千鶴の男版のような感じだ。少し違うのは腕力があり、喧嘩早い所もある。しかし、仲間思いな面もちゃんと備えている。
「まぁ、ドラ○エで言うスライムみたいな感じだ」
「ほぉ? お前はそんな目で俺を見ていたのか?」
裕司が怒りマークを額に乗せて、俺に迫ってきた。
「ち、違う! 今のは千鶴がだな」
原因を作った千鶴は、そっぽを向き、わざとらしく口笛なんかを吹いていた。
こいつ、さっきの仕返しか?
「違う。誰の男版だって?」
千鶴は目を逆二等辺三角形にして、俺を睨み付けた。
「すいませんしたぁッ!!」
今日の朝だけで三回。だから、語り手なんてやりたくなかったんだよ(涙)。
『だけど、千鶴や裕司がやってもロクな感じにはならんだろうな。ましてや、あの娘にやらせたら……(汗)』
「和彦くぅん? 呼んだぁ?」
後ろから気配もなく、そんな声だけが聞こえた。
「い、いいえ。よ、よよよ呼んでませんよ?」
「あらぁ、そぉ?」
語り手やると踏んだり蹴ったりだなぁ。
「皆さん、おはようございますぅ」
「おはよ。弥生ちゃん」
語尾を延ばすゆっくりに喋る不思議系少女、白鳥弥生ちゃんの登場だ。いつも何処からともなく現れる。まるで生えてくるようにだ。
「かぁずひこくぅん?」
「違います。私が思ったことではありません。台本、……そう! 台本に載ってたんです」
「じゃあ、私が燃しますので、それを差し出せですぅ」
100円ライターをカチカチと鳴らせながら、近づいてきた。
「安心してください! 自分が燃やしておきました。跡形もなく(涙)」
「そうですか。なら、良しとしましょう」
ライターなんて何処から出したんだよ!? ってか、俺ってこんな苛められキャラなのか!? 降板したいよ(涙)。
「さて、行こうか」
「和彦、行くよ」
「和彦くぅん、大丈夫ですよぉ〜。私が降板なんかさせないですぅ」
俺、あと何話生きていけるかな?