第2章 急 襲 ―2―
三本あったマストのうち、ミズンとフォアはすでに無く、唯一残されたメインマストが砂山に立てられた小枝のように見えた。舳先も無く、船首楼も叩き壊され、船長室が剥き出しになっている。
水浸しになった甲板には、瓦礫と共に果敢に戦ったであろう船員が倒れている。中には逃げ遅れた船客の姿もあった。横たわる者の殆どが、こと切れているのか、ぴくりともしない。
それでも、その者達は、まだ幸福といえるだろう。あれほど居た船員の人数が淋しい。おそらく、何人かは繰り返し押し寄せる高波にさらわれたに違いない。
頭上をよぎるのは巨大な蛇の胴。四、五人の大人が両腕を広げても、到底 抱えきれはしない。蛙の腹をひきのばしたような、つるりとした肌がうねうねと動き、影を落として海水を降らせてゆく。
ディレイは無意識に逃げ場を求め、背を扉に押し付けた。力が抜ける膝を励まし、崩れまいと必死に耐える。
「着水する」
「!? ゾル?」
耳元で聞こえた声にハッとなった。反射的に身をひるがえし、扉の取っ手にしがみつく。
「手を放してはならぬ」
ディレイは両手に力を籠め、体を引き寄せた。背中にほのかな温もりを感じる。薄目を開け、かすかに見えたのは闇色をした獣の体毛。
「ハシュレイは……」
無事かと、問いかけたディレイの声が、竜蛇によってかき消される。
海面を割り、間欠泉の如く海水が巻き上がる。
船は急速に回頭をし始め、強い遠心力がディレイの手にかかった。
ディレイは歯をくいしばり、引き剥がされるものかと粘った。同時に、背後から押し付けられる力を感じた。
着水の余波が、濁流となって甲板を浚う。波に船首を向けきれなかった船が大きく傾いだ。ゾルに支えられているにも関わらず、小さな掌一点にかかる重量は凄まじい。たまらず片手を放してしまった途端、更に左舷に向かって放り出されそうになった。
「私に掴まれ」
無我夢中でしがみついたディレイは、黒い体毛に突っ伏した。すると、体毛がざわざわと蠢き、腕を絡め取ってゆくのが分かった。不思議と先程のような不気味さは感じられない。人の手の感触に近いものがあったのだ。ふと目を開けてみると、密度の濃い靄が腕にまとわりついていた。
ディレイは揺れが収まったのを見計らって、顔を上げた。
「ゾルって、お前の事?」
是、とゾルが応える。ゾルは、漆黒の大狼の姿をとっていた。
「……ハシュレイ。ハシュレイは無事?」
「無事だ。負属性の竜蛇が相手といえど、屈する者ではない」
「……竜蛇って、あれの事? あれは何?」
ディレイは水面ぎりぎりをたゆたう竜蛇を見た。まるで蚯蚓のような環形動物が地面の表層部を突き進むが如く、海面が盛り上がっている。
「あれは竜蛇と云う。戦神カダモスの眷属で、聖天主セレニアに属し、ファーンに組みしモノ。水属性の最高位格の魔獣にして、最下級位の獣神」
神と聞いて、ディレイは身を固くした。まさかと疑いながら、悠然と離れてゆく竜蛇に視線を巡らせた。丁度その時、竜蛇の白い尾が見えた。長い尾を跳ね上げ、水中へと消える。音は届かない。場面を切り取れば、海竜が優雅に去っていくように見えるだろう。だが、幼いディレイでも、それは更なる猛攻への助走にすぎないのだと分かった。
「ハシュレイは何処に居るの?」
ディレイは背伸びをし、辺りを見渡した。ゾルの仔馬ほどの大きさを保つ体躯が恨めしい。回り込んで、甲板に一歩を踏み出す。
その行く手を、のそりと動いたゾルが阻んだ。
「行ってはならぬ」
向けられた紅い視線を、ディレイは上目使いで睨みつけ、跳ね返す。
「主殿より命ぜられたのは汝の護衛。場合によっては主殿を含め、ここに在る全ての命を盾にしてでも島へ導け、と」
ディレイは驚き、目を見開いた。
「嘘だ! ハシュレイが、そんな……。そんな非道い事、言う筈ない!」
「自覚を持たれよ。汝の命は、万の命より優る尊きもの」
ディレイは、胃の奥がカッと熱くなるのを感じた。眉が逆立ち、怒りに唇が震えた。俯いて、ぽつりと呟く。
「……命に優劣なんてない。なのに、皆を犠牲にして、ハシュレイも死ぬ気なの?」
そして、一歩、また一歩と後退り、ゾルとの距離をとった。
「船室に戻られよ。竜蛇に新たな動きが感じられる」
四方に首を巡らせ、竜蛇の気配を探るゾルに、ディレイはしめたと思った。先程の呟きも、気付いてはいないようだ。
ディレイは、次から次へとわき出るハシュレイへの文句を胸に刻みつつ、じりじりと動いた。足音を忍ばせ、ゆっくりと慎重に。
不意にゾルが振り向く。
咄嗟に背をかがめ、ゾルの死角に潜り込む。四つ這いになり、そろりそろりと進む。しかし、微動だにせず、小さく唸り出したゾルの視線の先が気になった。
振り向いたディレイは、ゾルが見詰めていたものを捉えると、蒼褪めてゆくのを感じた。
海面が盛り上がっていた。しかも、驚くほど近い。
疲弊し、寡黙になっていた甲板が、応戦に色めき始めるのが分かった。何者かが中心となり、隊列を組み直させようと躍起になっているようだった。時間を稼ぐよう、指示を出している。
耳を澄ますと、ディレイにとって聞き慣れた声も混じっていた。ゾルの体の陰から覗き込むようにして姿を捜したが、届くのは声ばかりだ。
ディレイは首を捻じって、肩越しにゾルを盗み見た。
気付いていない。そう感じると、ディレイは思い切って立ち上がり、いなや ありったけの力を脚に籠め、前傾姿勢で走り出した。
視界の端にディレイの姿を捉えたゾルが、苛立ちながら息を吐いた。そして、双眸を伏せ、ディレイを引き戻すべく輪郭を崩し始めた。
陽 落つる所 影在り、影 在る所 我在り。この船の規模ならば、どこに居ようとも手の内にある。
そう高をくくったのが、間違いであった。
突然、身が竦むような強大な魔力を感じたのだ。
狼狽しながらも、魔力の出所を探った。何者だと問うても、返ってくるのは沈黙だけだった。
足元から迫るものだと気付いた時には、すでに手遅れだった。甲板から伸びる無数の黒い鎖に全身を絡め取られ、身じろぎひとつさえできない。
ゾルは焦った。ディレイを捜し、彼の背を見つけると、その向かう先に視線を泳がせ、主の姿を求めた。
しかし、鎖が悉く締め付け、望みを砕こうとする。
ゾルは呻《うめ》いた。床に縛りつけられ、抗えぬと悟って瞑目する。
そして、輪郭を保てなくなったゾルは、ついに霧散した。
その時、ハシュレイは夢現の中に居た。安楽椅子に座り、穏やかに揺られながら午睡を愉しむ。そんな感覚があった。
誰かが呼んでいる。ひどく くぐもって聞き取りにくい。シードが呼んでいるのかと思い、心地良い時間を邪魔する旧友を恨んだ。
―――放っておいてくれ。疲れているんだ。
そう言ったつもりだった。
「さっさと起きやがれ! まだ終わっちゃいねぇぞ!」
だが、返ってきたのは、地を揺るがさんばかりの怒声だった。ハッと開いた双眸に、船長の顔が映る。目尻は吊り上り、蟀谷にくっきりと血管が浮き出ていた。
ハシュレイは、どうせ起こされるなら美女の微笑がいいと思った。少なくとも、こんな狒狒と河馬を足して二で割ったような男だけは遠慮したい。そんな場違いな事を考えながら、胸倉を掴む船長の腕に触れ、愛想笑いを浮かべた。
「どうやら、気を失って……。夢を見ていたようだ」
床に手をついて起き上がろうとすると、ズキリと頭に激痛が走った。顔を顰め、頭部に触れると、ぬるりとした生温かいものを感じた。
「呑気な野郎だぜ。……ほらよ」
右手を差し出され、ハシュレイはその手を取った。ぐいっと強い力で引き上げられ、あまりの勢いに立ち上がり様よろめく。
「何だよ、これしきの事で。情けねぇなぁ」
支えられ、ハシュレイは反論できずに、軽い自己嫌悪に陥りながら苦笑した。
「面目ない」
掌を染めた赤い血を眺めた後、ハシュレイは物足りなさを感じた。持っていた筈の物が無い。自分を中心に甲板上を見渡すが、どうも頭を強く打ったらしい。考えがまとまらず、ついぼんやりしてしまう。
おい、と呼びかけられ、肩を掴まれた。振り向くと、船長が邪黒の剣を眼前に突きつけてきた。
「ああ、そうだ。これ。こいつを探していたんだ」
「……大丈夫かよ」
よほど間の抜けたように聞こえたのだろうか、船長に憐みを向けられ、ハシュレイは苦笑した。
頭を軽く振り、深呼吸を一度してから船長を見る。
「竜蛇は?」
邪黒を受け取りながら、ハシュレイは尋ねた。船長が顎で示した先に視線を巡らせる。
「まるで、泥鰌か鯰がのたうってるみたいだな」
海面ぎりぎりを泳いで離れてゆく竜蛇を見て、ハシュレイはぽつりと言った。それを聞いた船長が豪快に笑う。
「怪物相手に泥鰌とは恐れ入った。……で、お前ぇなら、どうする。憎まれ口を叩くからにゃ、策はあるんだろう」
ハシュレイは一瞬 沈黙し、言いよどんだ。
「……ない、わけじゃぁないが……」
そう言って、低く唸る。
ハシュレイは、竜蛇の一撃を受けた直後、即座に、風の古代精霊ウェルトーラの召喚を考えた。ウェルトーラの力を最大限に使えば、致命傷は無理にしても、深手を負わせるくらいの事はできるだろう。けれど、その時は船自体も余波を受け、木端微塵になるおそれもある。
ウェルトーラを召喚せず、風の女王の息吹だけを引き出すこともできなくはないが、それでは威力が半減してしまう。
ならば、他の精霊をとも思ったが、契約を交わしているのは、どれも最高位の精霊ばかりであったから、ウェルトーラを召喚する場合と何ら変わらない。
ハシュレイは顎に当てていた手を降ろし、船員の様子を見渡した。皆一様に傷を負い、動けそうなものはぐったりとしていた。
「使える人員は?」
「正確にはわからねぇ。半数にはなっていないと思うが、かなり海に浚われたようだ。若い奴らは腰を抜かしちまってるしな。俺ぁ、元は海賊だ。その頃からの古参は、これしきのことじゃぁ、へこたれねぇ。十分使えるだろうが……」
確かに、わずかではあるが、この期に及んでも威勢のよい者がちらほら見受けられる。あれらが使える駒として、ハシュレイはその数を半数以下と予測した。いささか心許ないが、それは今に始まったことではないと思い直し、船長に視線を移す。
「大砲の数は?」
「二門。あとは流されちまった」
ハシュレイは滴った血に気付き、懐からナイフを取り出した。袖を切り離し、それを裂いて包帯代わりに傷を覆った。
そうしながら、ハシュレイはある一戦を思い出していた。
あれは、ディレイを捜し出した頃より数か月前にあった。白に近い金髪の紫色の眼をした少年との、邪黒の剣をめぐっての一戦だった。名は、ファーンと呼ばれていた気がする。ハシュレイは一目でこの世界の住人ではないと悟り、我らに仇をなすモノとして対峙し、排除を試みた。
しかし、少年の魔力は絶大だった。剣術にしても、剣豪として名を馳せたことのあるハシュレイであったが、圧倒的な差があった。そして、ハシュレイは重傷を負った。
その時、ファーンの傍らに居た白い犬。
あれは、竜蛇が化身した姿だと、ゾルは言った。
ハシュレイは、それが信じられなかった。竜蛇一族は、この世界の瘴気を嫌い、数十年前に天上の世界へと引き上げた筈だったからだ。
竜蛇一族は個体数が極めて少ない。最下級位とはいえ獣神と謳われるようになった竜蛇一族が、わざわざ個体数を減らす危険を冒してまで、この世界に降りてくることなど考えられない。降臨したという事実も、噂すら耳にしたことがないのだ。
だが、ゾルは、おそらく降臨した唯一の竜蛇だと言い、陸に在るうちに討てと言った。水を得た竜蛇には太刀打ちできぬから、と。
そうしなかったのが悔やまれるが、当時はどうしようもなかった。奴らは絶対的に有利な力をもって、執拗なまでに追って来た。ゾルが居なければ、邪黒を奪われていたに違いない。結果、ゾルと共に重傷を負い、邪黒を奪われぬよう逃げるので精一杯になったのだ。
ハシュレイは、そこで溜息を一つこぼした。
眼前の竜蛇が、偶然 通りすがった、腹を空かせただけの竜蛇であればと思いたかった。海に落ちた船員や乗船客を平らげて満足してくれたらよいものを、生憎 奴は見向きすらしない。
悔やんでみても、あとの祭り。
ディレイには、ゾルを付けた。ほんのわずかな影、―――例えば木片のひとかけらであっても、そこに影さえあれば、ゾルは形を成し、ディレイを島へと導いてくれるだろう。島へ渡りさえすれば、あとはクィントロー島に呼んだ同朋がディレイを護る。ならば、やらなければならない事はただ一つ。
足留め、だ。
邪黒との契約がある限り、死は恐れるものではない。例え、深海に沈もうとも、だ。
包帯代わりにした布を、ハシュレイは固く縛った。邪黒を手にして、海を見る。今までの戦闘が嘘のように、しんと静まり返っている。
「船長、俺が奴を惹きつける」
「惹きつけるって言ったって、どうやって……」
これで、と言って邪黒を掲げる。
船長が呆れたように溜息を吐いた。
「これで……っつったって、届きゃしねぇだろうがよ」
ハシュレイは小さく笑い、付け加えた。
「斬るわけじゃない。魔法だ」
「……魔法?」
噛みしめるように言った船長の眼が、じわじわと瞠られてゆく。やがて、眦が険しくなり、頬も震えだした。見れば、握られた拳にも血管が浮き出ている。
魔法は万能だと思っている者からすれば当然の反応だ、とハシュレイは思った。
「……てめぇ、そんなもんが使えるなら、始めっから、」
使いやがれ、と怒鳴りかけた船長の言葉を、ハシュレイは遮った。
「俺は負属性なんだ」
困ったように笑んで、詰め寄った船長をやんわりと押し返す。
「奴は水、俺は火の属性。火は水に弱く、水は火に強い。精霊魔術なら、他属性の術式の心得も無いわけではないが、俺は大魔導師ボードウィックのように極めてはいない。火以外に自在に操れるのは風くらいなものだ。加えて、奴は獣神ときてる。獣神相手に俺如きの他属性の魔術なんて、効果のほどはたかがしれているんだよ」
「なら、その火だか風だかの魔法は……」
「それはとっくに考えた。傷を負わせるくらいはできるだろう。ただ、使ってもいいが、この船が木端になるぞ」
うぐっ、と船長が唸る。
「俺にも護らねばならん要人が居るから、それは避けたい」
可能な限りと胸の内で付け加え、ハシュレイは続けた。
「そこで、だ。奴は雷撃に弱いと聞いたことがある。俺の雷撃の魔術では、傷を負わせることは無理だが、目くらましくらいはできると思う」
項垂れていた船長の顔が、はたっと上がる。
ハシュレイはにやりと笑った。どうやら、意図をつかんでくれたようだ。蒼褪めた顔に喜色が宿り、見る間に口角が上がってゆく。
「そうか、大砲……。俺らの出番か!」
鼻息が荒くなった船長に、ハシュレイは強く頷いた。
「だが、奴は聡い。二度は通用しない。それに、術式の構築を終えるまでは持ちこたえてもらわなければならないぞ」
「任せておけ! それで、どこを狙う?」
「首だ。砲弾が首を貫けば、暫くは動けないだろう。その隙に退避するしかない」
「首を飛ばしても殺れねぇのか?」
目を丸くした船長に、ハシュレイは目許に伝った血を拭いながら言った。
「奴は最下級の獣神だが、最高位格の魔獣でもある。俺が使役している闇の魔獣同様、簡単には死なない」
「お前ぇの魔獣は、……要人とやらに付けているのか。仕方ねぇな。まぁ、犬っころなんざ当てにしても、埒はあかねぇ。やってやらぁ」
ハシュレイはゾルの憤りを思い出し、内心で笑った。無知は恥ずべきものだが、時として幸をもたらすこともある。船長が良い例だ。ゾルは一族の中でも、かなりの高位にある。決して侮れるものではない。それを知らぬとはいえ犬と称し、獣神相手に任せておけと言う。この単純さ、豪胆さに、ハシュレイは思わず奇跡が起こるのではないかと思ってしまう。
―――否、起こさねばならないのだ。
「……頼んだぞ」
船長が拳で掌を打った。何度も頷いた後、ハシュレイの肩に手を置く。
「その、済まなかったな。魔法と聞いてカッとなっちまった。俺の手下どもの死が無駄にされたと思っちまって……つい、な。すまねぇ」
ハシュレイは静かに首を振り、船長の手を取った。握ることはしなかった。彼の腕を軽く叩き、静かに微笑し、ゆっくりと頷く。
それを皮切りに、船長は踵を返した。
去ってゆく船長の背を見送りながら、邪黒の蒼玉を額に当てた。
詫びなければならないのは我々の方だと言わねばならなかった。けれど、現在することではないし、詫びたとしても死者が生き返るわけでもない。
ディレイを護るということは、犠牲者を振り返っていてはいけない。無血では不可能な事なのだ。それで生じた死を背負うのも、己の使命だと、ハシュレイは改めて思う。
蒼玉が淡い光を放った。疼いていた頭部の痛みが徐々に薄れてゆく。傷の程度にもよるが、これで止血もなされる筈だ。
ハシュレイは音も無く息を吐き、邪黒を降ろした。反転し、瞑目する。
背後では、船長の怒号が響いていた。船員達も俄かに活気づく。
「皆、済まない」
そう小さく呟いた時、唐突に竜蛇の気配を感じた。目を開き、視線を上げる。
海面が盛り上がっている。それも、至極近い。
ハシュレイは、無意識に後ずさっていたことに気付いて、踏み留まった。
甲板中で悲鳴が上がる。果敢にも、皆を統率する船長の声が響いている。
ハシュレイの鼓動は早鐘を打った。胸倉を掴み、鼓動を落ち着かせようとした。
巨大な水柱が海面上に現れた。豪雨のような水滴を降らせながら水の幕が落ちる。
姿を見せた竜蛇に、ハシュレイの呼吸が一瞬止まる。
白く輝く巨体に、ハシュレイは言葉を失った。
眉間から額を通りうなじへと続く金色の鬣。そそり立つ湾曲した鋭い1本の角。硝子細工のように透き通った緋色の眼。全てが美しい。畏怖と畏敬の念を抱かずにはいられない、これが、―――これこそが、最下級位の獣神。
ハシュレイは愕然とし、全身の力が抜けてゆく気がしてならなかった。
こんにちは。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
第2章 2節を届けさせていただきました。
……と言っても、再度、書き直したものになります。誤字を調べているうちに、以前、投稿した この話をうっかり消してしまい、急遽、再作成。これを機に、大幅に改訂しました。
いかがでしたでしょうか? 少しは読みやすくなりましたでしょうか?
楽しんでいただけたとしたら、とても嬉しく思います。
D創は、まだまだ続きます。
もし、よろしければ、引き続き、ディレイやハシュレイ達を見守ってください。何卒 よろしくお願い致します。
それでは、皆様。風邪などに気を付けて、体調を崩されないよう、ご自愛ください。
陸王一式 改め 陸王壱式