表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

昔はよかったな・・・

続くか不明ですが、たのしんでいただけたら、さいわいです。。

数々のかわいいぬいぐるみ。大量に積み上げられた本の山。コンセントにつながれたパソコン。充電の切れた携帯。穢れのない真っ白な空白だらけのカレンダー。机に広げられたノートの走り書き。長く暑苦しい髪の私。ここは、私の、私だけの自由な世界。誰にも邪魔はできない、させない。だから、あなたもいれてあげない、あげれない。その結界が目の前でくずれだす時、この決心が揺らぐのだろう。あなたは、この結界を力尽くでも壊し去ってくれる?



中三の春。桜が満開になり、新学期が始まったばかりの校庭。4時間目の授業はお腹が背中にくっついてしまうかと錯覚してしまいそうで、先生の話を耳にすることですら疲れと空腹の原因になる。しかし、この日はちがう。水曜4時間目、つまり、体育の授業。走るのは辛いが、バスケだのティーボールの日はラッキーだ。別にそのスポーツが得意とかではない。むしろ運動は苦手。でも、女子だけでできる体育の授業は楽でいい。男子の目を気にせずに、女子だけで盛り上がるのだ。こんなのって、普段の数学や英語の授業ではめったにないし、特別な感じがする。特に男子が苦手な私にとっては願ってもない幸運である。

「お~い!!ボール!そっちいった、とって!」

後ろの方から声がする。振り返って驚いた。なんと声の主はクラスの目立つ人気者の斎木優聖さいきゆうせいだった。そして、斎木君は私にむかって「あい!ボール!」と私の元へとやってきたボールを投げるように催促する。私を下の名前で妙に馴れ馴れしく呼ぶ彼は実は幼馴染だったりする。と、いってもそれほど仲がいいわけでもない。会えば挨拶くらいするし、立ち話もする。だけど、私と斎木君はなにもかもちがう。ちがいすぎる。とっつきにくい私と誰にでも優しい斎木くん。「笹原ささはらさん」と他人行儀に皆から呼ばれる私と「ゆーせい」と男女問わず先生にまでも呼ばれる親しみやすい斎木君。とにかく、私と斎木君はあまりにも違いすぎてミスマッチ。だから、「藍」って斎木君が私を呼んでも、いつも斎木君との仲を争っている女子は余裕ぶっているのか気に留めない。もし他のかわいい子が呼ばれていたら目が血走り、爪を噛み、どういうことなのか、と問い詰めていたであろう。でも、私は今斎木君の中ではわりとランキングの上位に入っていると思う。だって、 斎木君は同年代の女子だと私のことだけを名前でよぶから。他の人だと頑なにはぐらかして呼んだりしない。

「おい~!藍はやく!」

「はいはい」

私はボールを手渡した。だって、投げたりなんかしたら少ししか飛ばないし、コントロール悪いので恥ずかしい。

「なんで投げないんだよ~」

そう言いつつも何故か笑っている斎木君。なんだかちょっぴりくすぐったかった。


更衣室での着替えを早々にすませ、いつもの制服姿。校則のとうりに膝下5cmの灰色のスカート。初夏にふさわしく2、3度おった白いカッターシャツ、青いリボンはきっちりと、肩くらいの髪はポニーテイル。これぞthe校則違反0。

教室に到着すると男子たちはまだ着替えていなかったので仕方なく廊下で待つ。よく見ると同じような子たちが何人かいる。そうして暇に待っていると、突然教室のドアが開き「はいっていいよ~」と中から顔を覗かせた斎木君が言った。その声を待ってました、というようにあっという間に教室の中はにぎやかになる。お弁当箱をひろげる人あり、おしゃべりに興ずる人あり。私はというとお弁当にはいる前に駆け足で大好きな図書室へとむかう。ものの5分で本を借り、戻ってきてからゆっくりとお弁当を食べるのだ。待っていてくれたたった1人の友達の飯島紗枝いいじまさえの机に移動しお弁当を広げる。紗枝はこの学校で斎木君以外に私を名前で呼ぶ。だからといって、私みたいなぼっち予備軍とは違って人当たりがよくて割とだれにでも同じように接する。なので、紗枝は特定の人とあまり仲良くしないが、なぜか私によくしてくれている。たぶん、小学校のときたまたま同じ料理教室に通っていて私が知らぬ間に餌付けしてしまったからであろう。しかも、紗枝が料理教室に通っていた理由は食べることが好きだかららしい。

「たまご焼きもーらい!」

「あっ、」

うぅ、楽しみにしてたのに、たまご・・・、私のたまご。恨めしそうな目をしていると「おっいし~」と紗枝はみせつけるようにいった。

「おいしいものはさっさと食べないと出世しないよ~。」

私は自分のお弁当箱を見た。確かに・・・。たこさんウィンナーと生春巻きが残っていた。両方とも好物だ。一方、紗枝はブロッコリーをころがしていた。確かに・・・。紗枝は言わずとしれたB(ブロッコリーと呼ぶのもいや過ぎるらしい←G的な)いつだったか、私がBと人参でカップケーキをつくったとき、1口食べて絶叫していた。

「しょうがない、許してあげる。駅前のケーキ屋のシュークリームでいいよ。」

「それ、ぼったくりーー!!」

「ぼったくりとは人聞きが悪い。紗枝が悪いんだから。」

そう言ってどちらからともなく笑いあった。


「うん、おいしい!」

私はシュークリームをほうばった。季節限定の蜂蜜味だ。やっぱり人に買わせたものっておいしい。そんな私を見て買わされた人、紗枝はミルクセーキをごくり。

「それはようございました。」

「いいでしょ。」

「ほんと、いいな~!あたし、あんたのせいで金欠!!」

「元はといえば紗枝が悪い。」

「一口ちょーだい♪」

「しょうがないな~、紗枝は。」


こんな、日常が続くと思っていた。




コメントお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ