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一.一 エネルギー規制条例

 西暦二〇五〇年。

 世界規模でエネルギー不足が深刻化し、その年の国際エネルギー会議では、一人当たりのエネルギー消費量に規制を設けるべきだ、との提案がなされました。

 特に、一人当たりのエネルギー使用量が最も多いと非難を浴びた日本は、家庭の努力だけではエネルギー規制目標を果たせず、ついに産業活動の抑制も余儀なくされてしまいました。


「あー、もうなんでしょうな。年金は八〇歳にならないと出ないと言うから、懸命に働こうと思えば……開店が午前十〇時で、十六時には強制的に閉店では仕事になりませんな」

「仕方ないですよ、スローライフで行きましょう」

「そうだとも。今こそ日本人は、生活にゆとりを持つ時が来たということだ」

「まあ、確かに時間にゆとりはありますな。その代わり、懐の財布の中まで余裕が空き過ぎて寂しくなりましたけどなぁ……」

「むう、それは……。実は私も今月のお小遣いは減らされてしまってね……わかるよ」

「仮にお金があっても、エネルギー規制の所為で商品の生産が追いついてないですよ。欲しい物は全て受注生産ですぐには手に入らないし……」


 最近になって制定されたエネルギー規制条令で、買いたくても商品がない、売りたくても商品の生産ができない、という悪循環に陥り、ここ独立自治区アキハバラには重苦しい閉塞感が漂っていました。


「そういえば今度、広島県が新核都市宣言をするとか言う話を聞きましたよ」

「ああ……あれですな? 核と言っても核融合の核でしたな、確か?」

「世界でも成功を収めている地域は、核融合炉を持っているからな……。あれはエネルギー規制に引っかからないから、生産活動に制限がないんだ」

「アキハバラもどうにか核融合炉を誘致できませんかねー。はあ……。三〇年前、旧型原発二基と高速増殖炉一基が建設された時には、エネルギー問題なんて解決したと思っていたのに……」


 高速増殖炉のおかげで三百年間は保つとされていた核燃料でしたが、思いのほか世界中の人々がエネルギーを消費した所為で、埋蔵資源まで含めて底を尽きかけていたのです。今は僅かな備蓄燃料を頼りに、原子炉は辛うじて運転を続けていました。

 電気店商業組合の方々は、街路樹を模した太陽光発電電池(ソーラーパネル)の下で、オデン缶をつつきながら揃って溜め息を吐きました。


『いいなあ~……核融合炉……』


 世界各地で競うように核融合炉が建造中! でも、今までの原子力発電といったい何が違うのでしょう?

 それは本当に、世界をエネルギー危機から救うものなのでしょうか……。



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