「裁量労働制」は労働者側に選択出来る権利が無いと「無限サービス残業制」になるぞ!
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は働き方改革として高市総理が提示した「裁量労働制」について個人的な意見を述べていきます。
質問者:
あまり聞きなれない制度なんすけど……一体どういった制度なんですか?
筆者:
遂行方法や時間配分を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務に対し、実際の労働時間にかかわらず、
あらかじめ労使で決めた時間(みなし労働時間、多くは8時間)を働いたものとみなす制度のことです。※現在も一部の業種で採用されています。
一体どういう瞬間にこの制度が活かされるか? と言いますと。
例えば日中業務で与えられた仕事が早く終わったとしても、給料が減るために早く帰ることができずダラダラ「仕事をしているフリ」をしている状況は会社と労働者双方にとって好ましい状況とは言えないでしょう。
早く仕事が終わったのであればサッサと家に帰宅して自分の趣味を満喫したり、
質問者:
あ! 筆者さんが以前おっしゃっていた制度のことじゃないですか! これは自由な働き方ができて流石に良い制度では無いですか?
筆者:
厚生労働省の労働実態調査によると、裁量労働制を適用されている労働者の満足度は比較的高く、「満足」「やや満足」を合わせて約70〜80%に達しているようです。
僕自身としては「適切な裁量労働制」であれば賛成したいところですね。
質問者:
……その「適切な」と言うところはどのようなところに注目するんですか? 不穏当なワードなんですけど……。
筆者:
僕もこの制度が出来るかもしれない……と思っていろいろと調べて考察したのですが、今から語るような様々な課題に直面しました。
メリットばかりに着目すれば「仕事を早く済ませて早く帰れる」のは非常に画期的にも思えるのですが、
逆に言いますと「いくら残業しても残業代が出ない」と言うリスクがあるんです。
質問者:
でも、仕事ができないのであればやむを得ないのではないですか? ある程度のラインの仕事が最低限設定されるでしょうし……。
筆者:
ただ「適切に設定された仕事量」っていうのは日々変化していくと思うんです。特にテクノロジーが進歩していけばいくほど、そのハードルって言うのは上がっていくんですよ。
例えばパソコンがある前と後、スマートフォンが導入される前と後で1人当たりの処理できる業務効率というのは大きく上がっていると思うんです。
とは言え給料そのものは上がらなかったはずです「これはみんなやっているから、当たり前のことだ」とかそういうワードを使ってね。
給料と言うのは労働者全体の相対的に上位にいるかどうかで決まり、実力がある程度に達すれば自動的に上がるわけでは無いですからね(医者などはそもそもの人数が少なく、合格しただけで全体の相対的上位になる)。
そして最近であればAIによって事務作業であれば大きく軽減されています。まだ一般化されていない業界もあるかもしれないんですが、今後も1人あたりに要求されているスキルのハードルは上がっていくことは間違いないでしょう。
質問者:
筆者:
そうなるとそれらを理由に「仕事量の負荷」が大きく増えるリスクがあり、
※法定労働時間を超えた分の残業代を請求できる法的根拠はありますが、会社側が「裁量労働制だから残業代は無し! 家に持ち帰れ!」「あいつが時間外に勝手にやっていただけだ!」などと主張して押し切る可能性もゼロではないからです。
実際に、先行して裁量労働制を採用している企業で月20時間残業してもほとんど残業代が出なかったケースもあるようです。
そこまで悲惨なことにならなくても「早く帰れるぐらい余裕ならもっとできるよね?」といってほとんど給料が上がることなく、仕事だけが増えるといったこともあり得ます。
◇最低でも「労働者側に裁量労働制かどうかの選択権があること」が絶対条件
質問者:
筆者:
このような悲惨なことを阻止するために裁量労働制にあたって絶対的に必要な条件があります。
それは裁量労働制をとるか、従来の労働時間制度を取るかどうか「労働者側に選択権」があることです。
質問者:
筆者:
一定期間ごとに労働者がどちらにするかどうかを選択させるというアドバンテージが無ければ、
企業側が「一方的に企業側が有利な制度」を労働者に押し付ける危険性があるんです。
また従来通りか、裁量労働制かどちらが有利な働き方かどうか? は労働者によって異なると思うんです。
企業側が「労働者を搾取する」ための制度であってはいけないので、こうした制度が必要なんです。
勿論、「自主性」と見せかけた「実質的な選択肢を無くした強要」も駄目であると言えますよ。
日本では悪しき同調圧力や空気感と言ったもので自ら悪い方を選択させることも多々ありますからね。
◇「労使の信頼関係」が無ければ成立しにくい ⇒ つまり今の日本では難易度が高い
質問者:
確かに企業側の「搾取の手札」が増えただけでは働き方改革として意味が無いですからね……。
筆者:
ただ、労働者側に”あまりにも”有利過ぎても問題なんです。
例えばちょっとでも出社すれば丸々1日分の賃金を得ることが出来るようになれば「採用側のリスク」になってしまいます。
ほんのちょっとの出社で1日分の仕事を本当にこなしたのであれば問題は無いですが、そうであるかどうかを立証することは難しいです(中小企業では採用することすら困難である会社が存在しているために現状でも労働者側が有利になっている場合もあります)。
最初に申しましたように「8時間労働に相応しい適切な仕事量」が分からなければ判断不能です。
とは言え今様々な業種が増え続けていますから、そんなことまで個々に法令で決めることは不可能に近いと思います
つまり、労使での「これぐらいの仕事量なら8時間でこなせるよね?」という合意や信頼関係が醸成されている事も「絶対条件」としてあるんです。
質問者:
なるほど。どちらかが大きく有利に傾きかねないリスクがあるんですね……。
今、日本でこの信頼関係が構築されている会社ってどれぐらいあるんでしょうか?
筆者:
制度的に言うのであれば、労使の信頼関係は終身雇用や退職金などと言った強固な基盤が必須だと思うんです。
会社は簡単にはクビにしないし、労働者としても簡単には辞めない――こういう関係だとやりやすいと思います。いわゆる昭和の終身雇用型と言うやつです。
しかし、日本の労使関係で今起きていることは労働者はリスキリングをして転職(企業を踏み台にしている)、会社側は利益が出ているのに早期退職を募ったり(切り捨てが容易になっている)、退職金はカットと言う状況で上記のような終身雇用と言うのは完全に崩壊していると言っても過言では無いでしょう。
そうなると、裁量労働制が企業か労働者のどちらかに大きく偏らない形と言うのは難しいんじゃないのかな? と思ってしまいますね。
質問者:
なるほど、理想は高いですが、現実的にはお互いに不満無く実施できる会社は少なそうという事ですか……。
筆者:
基本的には「企業の搾取の手札が増える」可能性の方が高いような気もしますけどね。
自民党そのものが企業献金を受け取っている「経団連の犬」ですから大企業にわざわざ不利なことを自主的に行うはずもないですからね。
混乱と分断を招いたり、あまり制度理解が乏しい外国人の方を不利な条件で働かせようという魂胆が見え隠れしているのかなと思います。
質問者:
何だかいつも思いますけど、制度の裏に悪意ばかり感じてしまいますね……。
筆者:
僕の心が歪んでいたり汚れているだけかもしれませんけどね(笑)。
上記のことを踏まえてこの制度の動向を見守りたいと思います。
企業側にインセンティブが大きそうなのであれば裁量労働制を採用している企業にはあまり就職はお勧めできない感じですね。
という事で今後も僕なりの視点で政治や制度について解説していきますのでよろしければご覧ください。




