銀杏
どうも、星野紗奈です。
秋の文芸展に向けて、異世界モノでプロットをたてて頑張っていたのですが、どうにも難しそうなので、別で短編を一つ書いてみることにしました。
衝動書きのようなものなので、あまり長くありません。
お気軽にお楽しみいただければと思います。
それでは、どうぞ↓↓
きみちゃん、僕ァね、君と友だちでいたかったんだよ。
あの銀杏並木を、君と二人で歩いているだけで、僕ァそれで満足だったんだよ。
それなのに、きみちゃんってば可愛いから、落ち葉で作ったバラをくれちゃってね。
僕ァ、浮かれちまったんだ。
それで、何も言えなくなっちまって。
そしたら、君ァ、無邪気にそれを僕の胸ポケットにさしてさ、「かわいいわね」って、一言。
嬉しかった、アァ、嬉しかったんだ。
でも、本当は怒って言い返さなきゃならないはずだったから、僕はどうしたらいいのかわからなくなっちまった。
それでまた、何も言えなかった。
きみちゃんは、それを照れていると思ったのか、いたずらっぽく笑っていた。
顔をちょいと傾けておさげ髪を揺らしたきみちゃんは、僕なんかよりずっとかわいかっただろうよ。
でも、僕が「かわいい」なんて言ったら、きっと明日から学校に行けやしないね。
教室でどんな噂が広まっているか、分かったもんじゃないからさ。
男ってだけで、君にたった一つの言葉も贈れやしない。
僕ァね、寂しいなと思ったよ。
君と、本当に友達ならよかったんだけれどね。
きみちゃん、僕ァね、君と友だちでいたかったんだよ。
どうして、こうなっちまったんだろうねェ。
赤ん坊のころから一緒に遊んで、同じ銀杏を踏みしめて歩いてきた仲だ。
僕ァ、君が可愛くて可愛くて仕方がないんだ。
でもねェ、恋仲になりたかったわけじゃなかったんだよ。
僕ァ、君の親友でいたかったんだ。
一緒に楽しく遊んで、泣きたい時は胸を貸して、悩める時は背中を押す。
それこそ、恋愛の相談なんかもしてさ。
そういう、何にも証明されない、固い絆を信じてたんだ。
それなのに、きみちゃん、君はまた僕にバラの花を贈ってくれたね。
黄色く、柔いバラの花。
指先は赤く震えてた。
夕焼けのせいかもしれない。木枯らしのせいかもしれない。
でも僕ァ、その時気づいちまったんだ。
今のきみちゃんは、「かわいいわね」と、あの時と同じように僕に笑いかけてくれるわけじゃないんだと。
僕ァね、寂しいなと思ったよ。
君と、本当に友達ならよかったんだけれどね。
きみちゃん、僕ァね、君と友だちでいたかったんだよ。
でも、僕ァ、傲慢だったのかもしれないねェ。
どうして、こうなっちまったんだろうねェ。
あれから色気づいて、他の男と恋仲になって、別れて、その繰り返し。
挙句の果てには、身投げするなんて思わなかった。
自惚れかもしれないが、僕ァあの時、嘘でも君の恋人になるべきだったのかもしれない。
僕の願望なんか捨てて、君の黄色いバラを受けとっていれば、少なくとも僕ァ大切な友だちを一人失わずに済んだのかもしれない。
僕ァね、寂しいなと思ったよ。
「かわいいわね」と言ってもらえなくても、肩が触れ合う以上に距離を縮めなくてはならなかったとしても、それはきっと、親友を失う苦しみよりはずっとマシだったはずだ。
後悔してるんだ、すごく。
君と、本当に友達ならよかったんだけれどね。
きみちゃん、僕ァね、君と友だちでいたかったんだよ。
あの銀杏並木を、君と二人で歩いているだけで、僕ァそれで満足だったんだよ。
それなのに、僕ァ一人で地べたに這いつくばって、必死で落ち葉をかき集めて、バラの花を作るような人間になっちまった。
でもねェ、何回やってもきみちゃんみたいに上手に作れないんだ。
それが悲しくてねェ。五個試したあたりで、全部くしゃくしゃにしちまった。
地べたに座って、そのまんま泣いていた。
僕ァね、寂しいなと思ったよ。
銀杏も、夕焼けも、木枯らしも、全部ここにあるのに、君だけが足りないんだ。
後悔してるんだ、すごく。
君と友だちになれないことを悟ったときの比じゃないくらい、息苦しくて仕方がないんだ。
僕ァこんな気持ちは初めてで、くしゃくしゃに丸めた落ち葉を両手で抱えて、白い息を吐き出しながら駆け出して、君を奪ったあの川にばらまいた。
どうしていいか、わからなかった。
そのまま、欄干に丸まって嗚咽した。
きみちゃん、僕ァね、君と友だちでいたかったんだよ。
君と、本当に友達ならよかったんだけれどね。
本当に、ね……。
(現場に残されていた遺書より)
最期までお読みいただき、ありがとうございました(*'▽')




