悪魔と呼ぶ妹
こんな私なんて消えちゃえばいいのに
そう呟いたとき、天から声が聞こえた気がした。
なら、消しちゃえばいいよ
真っ暗な部屋の中、誰かが僕を抱きしめている。
「ごめんなさい」
かすかに聞こえた声に顔を上げるとそこにいたのは、三つ上の僕の姉だった。
表情は暗くてよく見えなかったけれど、あのとき姉はどんな顔をしていたのだろうか。
僕には、いつもにこにこしている優しい姉と少し強気だけど根は優しい妹がいる。
超仲良し!というわけではないが、犬猿の仲でもない。
だけど、一つだけ不思議に思っていることがある。
「ららちゃん、なにか怒ってる、、?」
「なんでもないよ、話しかけないでよ悪魔のくせに」
「!、、そっか、ごめんね」
まただ、
妹はなぜか姉を悪魔と呼んでいて、喧嘩こそしないが関係は良好とはいえない。
両親も僕も以前まで、なぜそう呼ぶのかどこが気に入らないのか話を聞こうとしてきたが、妹が口を割ることは一度もなく、その呼び名は今も健在だ。
なにより、姉がそれでいいと僕たちを説得するもんだからもう誰もこれを咎めることはなくなってしまった。
僕は、姉を悪魔だなんて思ったことはない。
むしろ、悪魔とは真逆の存在だと思う。
いつも笑顔を絶やすことはなく、友達もたくさんいる。
怒ったところなんて、一度も見たことがない。
だから僕は
「なあ、らら」
「なに」
姉が出ていった部屋で、妹に問う。
「お前はいったい姉さんに誰を重ねているんだ?」
姉を悪魔と呼ぶ妹は、姉の向こう側にいるはずのない誰かを睨んでいる気がしたから。




