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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

めちゃくちゃ胡散臭い教祖の売る水

教祖の売る水、怖くない?

 深夜0時、名前も知らない虫が街灯に群がっている。理由は水である。普段はこんな時間に出かけることなんてない。正直手頃に水道水を使うのも良かったのだが、生前の母が「水道水あんまり使わない方がいい!いい水使え!」なんて呪文のように言い続けていたから今は素直に聞こうと思う。



家を出て左の公園の方に進んで行くこと2分。

「あった自販機!!意外と近くにあるもんだな!」

ここの公園にはよくくるが自販機なんて知らなかったぞ。俺が興味あるのは土管ぐらいだからな。でも23歳にもなって自販機で喜ぶなんて思ってもいなかったぞ。運命という凄さの割には多用される言葉を俺は使いたくないが、これは運命だ!


ドスン!ドスン!


なんだ、近くで祭りでもやっているのか?と錯覚するほど大きい音が聞こえる。だがこの大きさなら神輿が逆さから転落したんじゃないか、と思い焦りながら後ろを向くと、

「水一本いかが!ブランド水だよ!いい水だよ!」

まさに教祖といったような格好をした太った老人男性が俺の元に近づいてくる。その背中に担いでいるのはペットボトルの塔。中身に入っているのは水だろう。俺は焦りながら自販機に札を入れる。

「おい、おい新札対応してねーじゃん!!」

「私対応してますよ!焦ってますね手が赤いですよ!」

聞いてないんだけど!妙に馴れ馴れしく話しかけてくるなこの人。でもしょうがない、水買わないといけないからこの人から買うしかないな。でも顔を見られたくない。マスクしてくれば良かったー。ホラー映画の首ポキを想像させるほどに大きく首を曲げて教祖に問いかける。


「何円ですか?」

「あなたの言い値でよろしいですよ?」

おいおい何を言っているんだこの教祖様は!?

「何を言っているんですか?あなた水の値段がないんですか?」

「あなたは私を見て何を思いましたか?」

問いに問いで返さないでくれよ!

「まあ教祖みたいって感じですかね...」

そういうと待ってましたと言わんばかりに頷いた。

「そうなんです。そんな教祖みたいな私が売る水、どう思いますか?」

また問い?!オート設定してんじゃないだろうな。

「高そうですよね...」

「そうなんです!!」

また引っかかったよ!俺が相手を引っかけるのが上手いのか?それとも俺が相手の誘導に引っかかりやすいのか?俺も異様な空気に飲まれ自分で問いを作ってしまった。俺が自分の問いに困惑していると教祖は話し出した。

「水!あなた水道水があるのになんで水を買おうとしているんですか?おかしいでしょ!」

俺さっきその自問自答済ませたばっかだけど...まあその通りなんだよな。

「何か理由があるんです。その理由はいろいろあるでしょう。誰かが言ってたとか、そんな理由が!」

理由が少ないよ。それにさっきからペットボトル落ちてるし。それ支えようとして一本指しか出せないから一個しか言わなかったのか?

「まあ簡単に言えば水を買うには理由があるんです!そう言った状況が水を買わせる要因の一つです。そしてもう一つは付加価値です!」

急加速したぞ話が!教祖は背中が重すぎて後退りしてんだけどな。

「私はこの水、サンズイコーヤを売っています!この水はただの他のミネラルウォーターです!」

嘘でしょ嘘でしょ?!なんか勝手に白状しちゃったよ?ブレーキ無いの?まあ背中重いからしょうがないか。

「でもこの水の付加価値あります!!エグい付加価値あります!!」

語彙力のせいで言葉が軽すぎるよ。背中のボトルから重み分けてもらって欲しいんだけど。

「サンズイコーヤ、この名前は私が由来なんです!」


名前知らないから付加価値ないんだけど!!無名の水を買おうとしてたの俺?!水道水の方がまだ情報がありますよ。

「さんずいのこう、あるじゃない、浩。私その浩也なんだよ。」

知らないって。

退屈だなーー。

首痛っ!

「だいじ、大丈夫?」


あんたも大丈夫なのか?転倒しかけてるぞ。ちょっとかわいそうだから買おうかな。そうだ、自分で付加価値つけて値段決めればいいんだ!



「あの、付加価値って自分でつけてもいいんですか?」

教祖は戸惑いながら重さで倒れない程度に頷いた。

「まず母さんが水道水が嫌って生前言ってたでしょ。」

まあ俺普段飲んでるけど今日は大事なことに使うからな。

「でサンズイコーヤ、そうか!」

おお、俺が欲しかった理由とマッチしてるよ!ありがとう教祖!いや浩也。

「じゃあ千円で、10本。いいですか?」

「毎度あり!」

いやーいい買い物したな!!


そして帰路を辿り家に帰ってきた。

「母さん、水買ってたよ!サンズイコーヤ!いい名前だよね!でも母さんの前に俺が使うよ!」

蓋を開けて頭からかぶる。いやーいい気分!

「あー、こんなに顔赤かったのか。隠しといて良かったー!」

床にこぼれた赤い水。血を洗い落とすとこんな色なんだ、勉強だなー。


「母さん、水道水嫌っていうから買ってきたんだけよ!千円使っちゃったよ!」

風呂場に移動させた母さんの方を向く。

「あれ、手が赤いな。手が赤いならバレてたかな?まああいつバカそうだし気づいてないか!」

あの教祖のことだから今頃またあの辺をたむろしてるだろ。



「母さん、母さんの水道水の願い毎日言ってたでしょ?だから最後ぐらい願い聞いてあげたよ、喜んでくれるでしょ、あの世で。」

そして死体を解体して洗い流していく。



「母さん、三途行こーや!!」

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