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スライムシリーズ

なろうランキング無双スキルでラノベ界を蹂躙する~執筆スライムは毛根がお好き

作者: 坂本クリア

380円の謎商品を購入したら、自動で“売れるラノベ”を書いてくれるスライムが出てきた――

代償は、毛根と、自由意思と、創作の喜び。

スライムと共に駆け上がるランキングの頂点で、彼が見たものとは。

※この作品は、創作の“光と闇”と“毛根”について描いたフィクションです。


380円でなろうランキングを無双できるなら安いと思わないか?


俺はそう思い、おもわずポチっとしてしまった。

大手のフリマサイトでの購入

必ず評価してくださいと書かれてあった。

どこかしら日本語が不自然だった。

1週間後一通の封筒が届いた。

送り先の住所は文字化けしている…。

えっこれは日本じゃないの?

一抹の不安

そして中を開けると

水色の粉

そしてこう書いてあった。

これにあなたの髪の毛を3本入れ

水を100㏄注いでください。

そうすれば、あなたはランキングで無双できます。


は?いやいやいや。それはウソだろ。

あー騙された。

文句書いてやろ…。

でもちょっと待てよ。

やった証拠を写真で取ってから、

文句を言って、炎上させてやる。

そう思い、俺は写真を撮り、

水を100㏄用意し、髪の毛を3本抜き

説明どおりしてみた。

なにも変化がない。

俺は動画を撮っている。

もしなんかあった時のため

動画配信サイトでも使おうと

録画していたのだ。

3分後…

水色の粉は変化をしだした。

これはスライムだ。

しかも動いている。

えっなに?

キモ…。


あれ…。急におしっこに行きたくなった。

俺はあわてて、トイレにかけこんだ。

数分後トイレから戻ってくると


あれ…スライムがいない?


気が付くと、ベッドの下にいた。

俺は手を伸ばし、スライムをつかむ。


ぬるぬるぬる…

スライムが俺の手を昇ってきた。

やられるー。

そう思った瞬間


スライムは俺の耳に張り付き、

耳の中に入っていった。


うわー。。。。


あっあっあっ。。。

なんか気持ちいい…。

なんてこと言ってる場合じゃねー。


そんなことをしているうちに

スライムは耳の中に完全に入ってしまった。


どくん。


身体に緊張が走った。


身体のコントロールが効かない。


手が勝手に…。


俺はどうなっているんだ。


…手が勝手にキーボードを打ち始めた。

書いてるのは…ラノベのプロット?


「異世界で奴隷王になった俺が、勇者の剣で学園を統一する話」


なんだこれ…。


しかも面白い。


1時間後には1万文字が完成していた。

気がつくと投稿していた。

そして――3日後、ランキング1位。


これはすごい。


380円ですごいいい買い物をした。


ただほかの人には知られたくない。

俺は

「迅速な対応ありがとうございます」

と対応だけをほめることにした。


内容をかけば…

ライバルが増える。


ただ執筆中はなにもできない。

トイレはおろか飯も食えない。

完全にスライムの奴隷だ。


でも…

いままで何十と投稿したって…

ランキングに載れなかった俺が

今ランキングに載っている。


喜びと少しの微妙さを感じながら…

ランキングを眺めている。

なんだ…この高評価は???


しかも今まで作った評価ゼロの作品まで評価が上がっている。

とうとう俺の時代が来たんだ。


そう喜んでいた。


しかし執筆開始は突然起こる。


こないだなんかは

外出中に

急に執筆をはじめ

カフェの営業終了時間まで

コーヒー1杯ですごした。


周りの視線が痛かった。


ただ狂気の姿で執筆する俺を見て

みんな目をそらした。

見てはいけないものを見てしまった感があった。


8時間連続で執筆すると、

トイレもいけない。ご飯も食べれない。水も飲めないで

まさに生き地獄だ。


俺はしかし回避策を思いついた。

普段からオムツ

そして常にストロー付の水筒にスポーツドリンクを入れておく

これで水分とトイレの問題は解決できた。


どうやら死は回避されたようだ。


しかし…

なにかコントロールする方法はないものか。

そう思い俺は販売ページを覗いてみた。

あれサイト自体が存在しない?

えっ?

不思議に思ってクレジットカードの明細を見るも

引き落とされた形跡もない。

オカシイなと思い。

透明の500円貯金箱に目をやる。

なぜか…

そこには100円玉1枚と10円玉2枚が…

えっもしかしてー

あまりにもホラーな展開ゆえ

俺は忘れることにした。

あれは夢だったんだ。

スライムなんかもいなかったんだと。

そう思う事にした。


なろう経由で編集者からメッセージが来た

書籍化の案内だ。

喜んでいると勝手に手が動く。

すごい…

交渉事も全部やっている。


気付けば…

書籍化していた。


絵師はまったく知らないし

興味もない方

それを勝手にオーダーしていた。

この方じゃないとしないと

おいおい新人なのに偉そうじゃないか。


俺は焦った。


しかも

俺自分の作品ができたら、

推しの絵師さんに書いてもらいたかったのに

でも…

これが通り

売れまくった。

一躍

時の人になった。


天才新人あらわれると…


マーずいぶん書いてるから新人って言われるのも微妙なんですが…


一度チャンスが訪れると

連続でチャンスが訪れる。

よくわからないが

確変というのだろうか?


執筆スピードが加速していく。


なんだか壊れそうだ。


編集さんとの打ち合わせも

インタビューも

メッセージでしかムリだ。

俺に聞かれても答えられない。


俺が執筆しているのに

俺が執筆していない

このあきらかな矛盾に

俺の自我は崩壊していく。


俺はこのまま売れっ子作家として

死んでいくのか?

いや今俺は生きているのか?


書いているの?

いや

書かされている?


小説家に憧れた

自分の書きたい作品で

有名になりたい

オンナにもてたい

お金持ちになりたい


3つは上手くいった。

有名

モテる

お金持ち


でも始めの前提が崩れた

「自分の書きたい作品で」


実際自分の書きたかった作品も

以前には書いていたので

それは多少は評価されている。

でも…

数字は全く異なる。

書籍化の打診もない。

バズらない。


そんな温度感の違いに

切ない気持ちになる。


俺が憧れた小説家とは

こういうものだったのか?


まーいい。

どうせなら楽しく生きよう。

そう俺は開き直った


売れない作品なんて意味がない…

そう公言した。

ははははは…まったく笑えるぜ。


書籍化が1冊2冊と増えるにつれ

身体は変化していった。


165㎝で78㎏のわがままボディは、

58㎏まで低下した。

執筆中はなにも食えないからだ。


そして額が後退した。

特に抜け毛が増えているわけじゃない。

毛根がなくなっているのだ。


10冊目を執筆したとき

俺は気づいた。

これ1冊で1cm髪の毛が後退していると


人生は進んでいるのに

髪の毛が後退しているなんて…

きっと俺のスピードについてきていないんだな

とうそぶいたが…


心当たりがあった。


そうだスライムに与えた髪の毛だ

もしかしてスライムは髪の毛を

いや毛根をエサにしているのかもしれない。


俺は毎日自撮りをして額の後退度をチェックした。


それから3冊執筆し

俺は確信した。

確実に3㎝後退している。


もしかしてハゲルというのは

スライムを飼うということなのか…。


あの作家も…あの有名人も…

もしかして…スライムに

俺の心に

不思議な安堵にも似た

恐怖心がうまれた。


……


どくん。


身体が、ゆっくりと動き出す。


カタカタカタ……(自動タイピング)


俺の意識は、後ろへ、後ろへと追いやられ、

スライムが――物語を、俺の身体で、書き続けている。


俺はもう、ただの“執筆器官”だ。


そして今――


あなたが読んでいるこの作品は……


──もしかして。


あなたの読んでいる作品も、

執筆スライムが書いたものかもしれませんよ。


ふふふふふ。



END


他に書く予定のものがあったんですけど……

昨日の夜、突然「これ」が降りてきてしまって。


気がついたら、予定も仕事も全部すっ飛ばして、2時間で書き上げていました。


我ながら、筆が止まらなかったというか、

なんというか、手が勝手に動いていたというか……。


まぁ、冗談です(笑)


……たぶん。


※本作は完結しておりますが、反響やご好評をいただければ、続編やスピンオフも考えております。

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