IWGP台湾大会
台湾は、日本のプロレス熱が高い。テレビ放送がちゃんとされていて、シン・ニチは特に人気がある。
蔵前国技館でのオープンニング・マッチを終えて、この国から記念すべきIWGP構想はスタートする。
IWGPについて確認しよう。アントニオ猪木が提唱した世界戦略である。世界のプロレスを、シン・ニチが統一するというものである。
日本からアジア、さらにヨーロッパへとサーキットしていって、最後はアメリカ大陸へと渡り真のプロレス王者を決めようという目論見。
具体的には、いつも通りの興業を行う。但し、挑戦者があるというなら、誰であっても、その挑戦を受けてたち、シン・ニチの強さを世界に見せつけようという壮大な構想であったのだ。
台湾では歓迎はあっても、悶着はおこらないであろう。故に、台湾からのスタートでもあるのである。
メインは、アントニオ猪木 対 カナディアン・ストロンゲスト・マンこと怪力男ディノ・ブラボー。
さらに台湾のファンを盛り上げたのは、地元台湾出身、大相撲の元花籠部屋の羅生門綱五郎のリング登場であった。
羅生門は、既に役者に転身していて、力道山に破門されたのだとも伝わっている。
あの黒澤明監督の「用心棒」にも出演。
ヤクザの「丑寅」の子分として、用心棒「桑畑三十郎」を、さんざんに殴り付けて、お化けのようにしたのが、この人である。
映画「用心棒」は1981年の作品であった。
当初、アントニオ猪木は、台湾大会での羅生門とのマッチメークを考えた。羅生門は身長もさることながら、顔かたちも実にジャイアント馬場に似ている。
「用心棒」を観て、「馬場が出演している」と勘違いしている人も多いのではないか。その意味でも、猪木 対 羅生門は話題になると考えられた。
しかしながら、既にプロレスラーとしては相応しくなく、いくら台湾の元英雄だとしても、猪木が勝ちを譲る訳にもいかず。
引き分けも、おかしかろうという事でメインの試合前、リングに上がるのみにとどまった。
羅生門は、まず青コーナーのブラボーに握手を求め。赤コーナーの猪木に対しては握手とともに深く頭を下げた。
さらに、観客に対して、両手をあげて2m3cmの身長を見せつけると、万雷の拍手が起きたのである。
こうしてIWGP台湾大会は盛況のうちに幕を閉じたのである。
しかし、次は韓国大会である。
そこには、因縁の大木金太郎が手ぐすねを引いて待ち受けているはずであった。