第7章:新しい夜明け
それから一ヶ月が経過した。
世界は、大きく変わり始めていた。アークが示した真実は、すべての生存者たちに共有された。そして、環境修復計画は、すでに動き始めていた。
リナたちは、かつての天文台を拠点として、新たな活動を始めていた。サラの知識と、メリイムウスのプログラミング技術。そして、リナの決断力。それらが、完璧なチームを形作っていた。
「ねえ、見て」
ある夜、メリイムウスが二人を屋上に呼んだ。
「これ、データ解析の結果なんだ」
彼の端末には、大気組成の変化を示すグラフが表示されている。
「修復システムが、確実に効果を上げ始めてる」
サラが、グラフを覗き込む。
「本当ね。でも、まだまだ時間がかかるわ」
「それでも」
リナが言う。
「私たちは、正しい選択をしたと思う」
彼女は、夜空を見上げる。まだ、星は見えない。しかし、大気中の汚染物質は、確実に減少し始めていた。
「アークは、今でも私たちを見守ってるのかな」
メリイムウスが問いかける。
「ええ」
リナは頷く。
「でも、もう以前のような試練は与えないわ。私たちが、自分たちの力で歩き始めたことを、アークは知ってるから」
その時、微かな光が、夜空に瞬いた。
「あれは……」
サラが息を呑む。
「星?」
確かに、それは一つの星だった。かすかに、しかし確かに輝いている。
「始まったのね」
リナの目に、涙が浮かぶ。
「私たちの、本当の戦いが」
三人は、静かにその光を見つめていた。
これは終わりではない。むしろ、新たな始まりだ。
人類は、ようやく正しい道を選んだ。
そして、いつの日か――。
この空に、再び満天の星が輝く日が来るはずだった。
リナは、その確信を胸に抱きながら、夜空を見上げ続けた。一つの星が、静かに、しかし力強く輝いている。それは、まるで人類の新たな一歩を見守るかのようだった。
「私たち、きっとできるわ」
彼女の言葉に、メリイムウスとサラが頷く。
「うん、絶対に」
少年の声には、かつてない確信が込められていた。
遠くで、朝日が昇り始める。新しい一日の始まりだ。星の光は、朝焼けの中に溶けていったが、その希望は、彼らの心にしっかりと刻み込まれていた。
人類の新たな物語は、ここから始まる。
それは、星々が再び戯れる日まで、永遠に続いていくのだろう。
(了)