表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【SF短編小説】星々の方舟 ―アストラル・アーク―  作者: 霧崎薫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/7

第4章:星空の真実

 朝日が地平線から昇り始めた時、生存者たちは徐々に我に返り始めていた。先ほどまでの戦闘の痕跡が、朝もやの中にぼんやりと浮かび上がる。


「まだ信じられないわ」


 サラが静かに呟いた。彼女の表情には、困惑と理解が入り混じっている。


「でも、考えてみれば分かるはずだった。アークの行動には、すべて意味があった」


 リナは黙って聞いていた。確かに、これまでのゲームも、すべて意図的なものだったのだろう。人類の協調性、知性、そして道徳心を試すための仕掛けだった。


「でも、まだ分からないことがある」


 メリイムウスが口を開く。


「どうして、今になってこの真実を明かしたんだろう?」


 その問いに答えるように、再び機械音声が響く。


「最終フェーズを開始します」


 全員の視線が、再び装置に向けられる。しかし今度は、それは過去を映し出すのではなかった。


 代わりに、巨大なホログラムが空中に展開される。それは、地球全体の姿を示していた。そして、その表面には無数の点が光っていた。


「これらは、世界中に設置された同様の施設を示しています」


 機械音声が説明を続ける。


「そして今、すべての施設で同じ真実が明かされました」


 リナは息を呑む。この光景が意味するものを理解し始めていた。


「つまり、これは世界規模の……」


「そうです」


 機械音声が、リナの言葉を遮る。


「これは、人類全体に対する呼びかけです」


 ホログラムの中で、光点が互いにつながり始める。それは、まるで星座のように、一つの巨大なパターンを形作っていく。


「見て」


 メリイムウスが指差す。


「これ、さっきの暗号と同じ構造!」


 確かに、光点のパターンは、彼らが解読した星座暗号と酷似していた。しかし今度は、その意味は明確だった。


 それは、協力を呼びかける信号だったのだ。


「人類は、もう一度チャンスを与えられた」


 機械音声が告げる。


「しかし、それを活かすかどうかは、あなたたち次第です」


 サラが、ゆっくりと前に踏み出す。


「私には、分かるわ」


 彼女の声は、確信に満ちていた。


「これは、新しい始まり。でも、簡単な道のりじゃない」


 リナも頷く。これまでのゲームは、まさにその縮図だった。争いと協力、裏切りと信頼。人類は、その両方の可能性を持っている。


「ねえ」


 メリイムウスが、空を見上げながら言う。


「もしかしたら、星を見上げることができる日が、また来るのかな」


 その言葉に、リナは微かな希望を感じた。確かに、それは遠い未来かもしれない。しかし、不可能ではないはずだ。


「きっと来るわ」


 彼女は答えた。


「でも、そのためには――」


 その時、突然の振動が施設全体を揺るがした。


「警告」


 機械音声が、緊迫した調子で響く。


「予期せぬ反応を検知。施設の量子観測装置に異常が発生しています」


 装置が、不規則な光を放ち始める。その様子は、明らかに制御不能な状態を示していた。


「これは……」


 サラの表情が変わる。


「まずい! 装置が暴走している!」


 施設からは、轟音が響き始めた。床が揺れ、壁にはヒビが入り始める。


「避難を!」


 リナが叫ぶ。しかし、その声が届く前に、さらに激しい振動が襲う。


 そして、予想もしない光景が、彼らの目の前で展開され始めた。


 暴走した装置は、もはや過去を映し出すだけではなかった。それは、時空そのものを歪め始めているように見えた。


 施設の上空に、巨大な渦が形成され始める。その中には、星々が見えた。しかし、それは単なる映像ではなかった。


 現実の星空が、彼らの目の前に開かれようとしていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ