7 ウエソラさん
それから結構な時間が経ち、外ではカラスさんが鳴いています。
先ほどからクラスメートのルディミハイムさんのお話で盛り上がっていました。
それも終わり、気づけば夕方です。
「姉さんそろそろ部活終わりかなー」
「ウエソラさんですか?」
「そうそう。姉さん忙しいらしくて」
シタソラさんのお姉さん。夢空アカリさん。
皆さん「ウエソラ」さんって呼んでます。
目立つオレンジ色の髪が特徴で、いつも元気ハツラツです。
その元気印をみんなに分けようという思いから、チアリーディング部で活動しています。
「運動部の方々の応援って、大変そうですね……」
「応援する部の圧倒的熱量に負けない必要があるものねー。底知れぬ体力が必要なイメージがある」
一緒に居るアマノさんも同意を示します。
「大体が炎天下の中だからね! 今の姉さんが負けるとは思えないけど!」
「それどころか、勝っちゃいそうですもんね!」
ウエソラさんの凄い所は、何よりそのパワーです。
見た目はシタソラさんと変わらず痩せ型です。
でもパワー勝負になったら、学年の誰も勝てないぐらい、強い人なんです!
「最近『じゃれ合い』が多すぎて困ってるんだけどね~」
「あー。一部の生徒に、不意にタックルかましてるのは注意しようと思ってたよ」
「そんなことなさってたんですか!?」
「うん。でも姉さん『じゃれ合いじゃれ合いじゃれ合いじゃい』って言ってた。リズム良く」
「ブフッ……適当すぎない……?」
「関節技決めながら。被害者が『ぎゃあああああ』『ギブギブギブ』って言ってる上で」
「あははは!! だめだめ!! あたしってば、笑っちゃだめ!! ふ、ふ、ふふ……」
僕も一緒になって笑います!
しょうがないんです! シタソラさんの話し方が面白いんですから!
それにしても、アマノさんはツボを押されてしまったようで、笑いがなかなか止まっていません。
「ひーっ、ひーっ……まさか……夜天くん……保険室行った理由それ!? ははははは!!」
ガチャンバタン。またお部屋を出て行ってしまいました。
「めーっちゃツボってるね。ありゃしばらくあのまんまだわ」
「そういえば、ルディミハイムさんとウエソラさんって、どっちが強いんでしょう」
「んー……。そういえばじゃれ合ってるところを見たことないなあ……」
シタソラさんはしばらく考えて、うんと頷いてから続けます。
「たぶん決着がつかなくて終わりそうね」
「やっぱり! そうですよね!! どっちかが負けるとは思えませんし!」
どっちも強いので、きっとそうなると思うんです!
それに、どっちも負けてほしくはないですから!
「さて、そろそろお暇しようかな」
「そうですね。さっきカラスさんが夕方を伝えにきてました」
「……いちいち表現がかわいいよねえ」
「そ、そうでしょうかぁ……!」
かわいいと、言って頂けるのは嬉しいです。
でも、僕は男の子なので、かっこいいって言ってほしい気もしますね……。
「じゃあアマノ、帰るねー!」
「けほっ! けほっ! ふひっ……うん! わかっ……ははは!!!」
「まだツボが押されてるんですね!?」
帰り際、しばらく笑い声が遠くで聞こえていたのは忘れられない思い出です。




