5 シタソラさん
午後1時。
また外に出て、アマノさんのお家に向かいます。
今日はあったかいですね。
お日様が高いところから僕たちを見下ろしています。
「えっと、ついてきてくれるんですか?」
「ちゅん!」
さっきお庭で話したハートちゅんが肩に乗ってくれています。
小柄な子なので重たくないです。でも相変わらずもふもふです。
僕が話しかけた時以外は静かに真っ直ぐ前を見ています。
「それにしても、君はとってももふもふですね……」
「ちゅふー」
言葉は分かりませんが、なんだか誇らしげです。
「僕、君みたいなふわふわさんが大好きなんです」
「ちゅ、ちゅん……」
言葉は分かりませんが、なんだか照れてませんか?
「さっき間違えて登校しちゃったんですよねー」
「ぴぴぴぃ!」
言葉は分かりませんが、なんだか笑ってるみたいです。
鳥さんも僕たちと同じで、心があるのは間違いないんですね!
しっかりお話を聞いてくれて、そして思いを分かってくれて、それに応えてくれるんです!!
こうしてお話ができてるんです。
なら、僕は……。
「えっと、その、ハートちゅん……?」
「ぴぃ?」
「お友達に、なりませんか……?」
「ぴぃー!?」
「い、嫌でしょうか……?」
「ぴぃ!? ヒョロロ、ちゅーん!!」
「よ、よかった……!」
驚いていただけみたいです!
しっかり喜んでくれています!
パタパタと両方の羽で僕を仰いでいて、とってもかわいい!
荒れ地を抜けた辺りで、ハートちゅんが肩から地面に飛び移ります。
「あら、どうしたんですか?」
「ぴぃ!」
僕の顔を眺めながら、今度は空へと飛び立ちます。
そうしてまた、僕を見つめているのです。
「ええっと、ハートちゅん?」
「ぴぴぃ~」
足でとっても器用にお顔を掻くと、木の上で力を抜いてしまいます。
そうして気づけば、目を瞑っている様子。
「なるほど、おねむだったということですね……?」
「ぴょむぴょむ……」
「もう、自由なんですからー」
でも、時間を大切にしていますね。
ハートちゅんは、さっきから急がずに僕の肩に留まってくれていました。
あの子自身の気分で、きっと僕の肩に留まりたいから留まったのでしょう。
すると、今あの子がしたいことは寝ること。
だから肩からは下りて、暖かい木の上に移って眠ったんでしょうか。
「帰りにまた呼びますねー!」
「ぷひゅるるる……」
あー、もうしっかり寝てますね……。
さて、アマノさんのお家はもう近くですし、向かいませんとね……。
「――イヤくーん!」
「おーい!!」
っと、誰でしょう。
……あ、いえ。分かります!
この声は、シタソラさんと、アマノさんでしょう!
声の方向へ振り向くと、やっぱり!
アマノさんのおっきいお家の窓から、二人がお顔を覗かせています!
「アマノさーん!! シタソラさーーん!!」
急ぎ走ってアマノさんのお家へ一直線!
きっと、今僕はルディミハイムさんぐらい速いかもしれません!
「うおーー!!」
シップウジンライ! 僕は今すっごく速いのです!
いつもよりすんごいスピードになっています!!
下り坂もなんのそのっ!
このまま一気に……。あ、石――。
「――っあ」
あ、れ? なんか僕、浮いて――。
「――んぎゃっ!」
「「えーーっ!?」」
急ぎ、すぎました……。
鳥さんのように空を飛び、そのまま地面に……。
「いった……いぃ……」
お膝が、痛いです……。
きっとこれは、すりむいてます。
でも、見たらもっと痛くなりそうで……。うぅ……。
地面から起き上がることも、ままなりません。
「もう、世話が焼けるんだから」
「肩なら貸せるよ。星夜くん軽いから」
「うぅ、すみません……」
急いで駆けつけてくれた二人に両脇を抱えられます。
なるべく見たくないお膝がチラッと見えてしまいます。
ですが、どうやらズボンのお陰で守られていたようです。
「ぷにぷにだね、星夜くん」
「……そう、でしょうか」
「シタソラさん? よくないよ?」
……何かが聞こえている気がします。
お膝が痛いせいか、おぼろげです。
「ずっと触っていたいぐらいだし」
「恥ずかしいです……」
「シタソラ?」
「えーいぷにぷに」
「うぅ……」
「シタソラッ!」
「はぁい」
よく分からない会話が続いていましたが、やがてお家に入ることができました。
左腕をたくさんぷにぷにされたように思います。
シタソラさんてば、いつもこんな調子なんですよね。
触られるのは、なんだか恥ずかしいです……。
それに、お膝がジンジンと痛みます。
お薬をお借りしたい、ですね。