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2 ハートちゅん

 ご飯を食べ終えたら、食器洗いをお手伝いしようとします。

 ですが、朝倉さんに「これは僕の仕事だよ」と止められてしまいます。

 ただテーブルに座っているだけでは退屈なので、洗い物をしている朝倉さんとお話をします。


「今日は何をするんですか?」

「そうだなあ。今日も研究だね」

「もー。ずっとお部屋にいたらお身体に悪いですよっ」


 朝倉さんはいつもそうです。

 いつもお仕事を始めると、かかりきりになって夜まで出てきません。

 ひどい時は何日間も出てこないことも……。


 お仕事のお部屋にはご飯らしきものはありませんので、どうして飲まず食わずで続けられるのか不思議でしょうがないです。

 朝倉さんは「仕事だからね」と言いますが、仕事だからといって、自分の身を削るのはダメだと思います。それは朝倉さん自身が一番分かっているはずなんですけどね。


「じゃあ、僕は学校の前にお庭でお水を!」

「うん、お願いするよ」


 お庭はとても広いですから、今から水撒きを始めたら三十分はかかることでしょう。

 そこから通学したらいい感じの時間になります。


「ところでアルト」

「どうしたんですか?」


 お皿洗いが終わったのか、水を止めた朝倉さんは何かを思い出したかのように問いかけつつ、こちらに近づいてきます。

 珍しく、心配そうなお顔をしています。


「ヒミツは誰にも話していないかい?」

「……んえ。なんでしたっけ」

「そうかぁ。まあその調子なら話していないだろうがね。それに、ほとんど忘れてるだろうけど。でも少しばかり心配だったんだ」

「んー。ああ! 僕の昔のことですよね?」

「そうそう。それが誰かに知られたら結構ややこしいからね。気をつけるんだよ」

「はい! もちろんです!」


 僕自身も昔のことは覚えてませんし、そこはきっと大丈夫です!

 時々ふしぎな夢を見て、それが昔あったことのように感じることはあります。でも、起きてみたら覚えてないことばかりです。

 不安になって朝倉さんに相談したら、昨日寝るためセットを全部新しいのに変えてくれたんですよね。


「じゃあ、私は行ってくるよ」

「はい! 僕もお掃除です!」

「おや? 水やりじゃ?」

「あ! そうでした!! 水やり行ってきます!」

「任せたよー」


 そうしてお庭の外に出ます。

 今日は満天の青空で、美味しそうな雲も見当たりません。

 周りは芝が敷かれているので、寝っ転がったら凄く気持ちよさそうです。

 絶好の寝っ転がり日和でしょう!


 ですが寝てしまったらきっと、遅刻をしてしまいます。

 うう、こわい……。

 そうならないためにも、今はやるべきことをやるだけにします。


「お花さーん、おはようございまーす!」


 お返事はありません。もちろん、分かってます。

 でも、きっとお花さんたちは分かってくれています。

 僕たちと同じでお花さんたちにもきっと、心があって、気持ちがあるのです。

 だからいつか応えてくれると信じて、僕は話しかけるんです。


 蛇口をひねると、何本にも伸びたホースがいろんな場所のお花たちにお水を振る舞っていきます。

 遠くのお花は別の蛇口で。

 これを何度か繰り返して、水やりが完了します。


「どうですか? おなかいっぱいですか?」

「…………」

「僕は今日、もふわとろオムライスを食べたんですよ!」

「…………」

「今日も学校、楽しみです!」

「…………」


 きっといつか、お返事が僕にも聞こえると思います!


 あら、鳥さんが……。

 お花のにおいが気になるのでしょうか。

 小さな白い鳥さんがこっちに近づいてきました。


「おはようございます。鳥さん!」

「……ちゅん」


 お返事をくれた!!


「わはー! 応えてくれた! うれしいです!」


 折角応えてくれたんですから、お友達になりたい……!!

 でも、そのためにはこの子のことを分からないと……!


 あら……。


「君、ハートの模様があるんですね」

「ちゅん」


 横腹の辺りでしょうか。羽毛が小さなハートのような黒色になっています。


「きみは、ハートちゅんです!」

「ちゅんちゅん!」

「わは、げんきげんき!」


 鳥さんは僕とお話がしたいのでしょうか?

 名前を付けてからしばらく、僕の周りを駆け回っています。


「ぴーっ!」

「わぁ!」


 バサバサと突然飛んだと思ったら、肩に乗っかってきました!


「えへへ、よしよし」

「ちゅん!」


 撫でてあげると反対の手に飛び移って、じっくりと顔を見てきます。

 一通り眺めたら満足したみたいで、そのまま飛び立っていきました。


「またきてくださいね-!!」


 ハートちゅんから「ぴぃー!」と声が聞こえた気がしました。

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