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転生生活1日目(2):マテラ解放

 ラビさんと別れた自分は、ギルドの近くにあった喫茶店に入ることにした。

 一番安い飲み物だけ注文して、席に座ってサポートブックに目を通してみることにする。


<<転生システム使用時の注意事項>>

・困ったことがあったら、転生担当者に聞きましょう。

・転生特典は、転生前の世界で使っていた道具を『持ち越し』するか、戦闘、商売などが有利になるスキルを『獲得』するのがお薦めです。

・ステータスは、体力と魔力にバランスよく強化した後、残りを好きなように振るのがお薦めです。

【注意】転生が完了してしまうと、ステータスの振り直しは出来ません


「……なるほど」

 そんなことを言われても、自分はすでに転生後(ておくれ)なわけだけど……

 他の人は、転生前にこれを渡されるのだろうか。

 終わったことに文句を言っても仕方がないのだろうけれど。


<<ステータスカードの使い方>>

・ステータスカードは、改ざん不能な身分証明として用いられます。

・「ステータス閲覧」と唱えることで、ステータスを確認することができます。

・ステータスカードをかざした状態で「鑑定」と唱えることで、対象を鑑定することができます。


「ステータス閲覧」

 書かれているとおりに念じてみると、自分の名前と、今のステータスが表示された。


<<チシロ・ミト>>

 想力 : 100

 やさしさ : 30


 相変わらず、絶望的なステータスだ。

 『やさしさ』という、なんの役に立つのかわからないステータス。

 『想力』に関しては、もはやこれが何なのかすらわからない。

 とりあえずこれに関してはもう、気にしても仕方ないかな……

 ということで次は『鑑定』だけど……特に今、何か調べたい物があるわけでもない。

「そうだ、それなら……」

 ラビさんから受け取ったお守りを取り出して、机の上に置く。

 その状態で、ステータスカードをかざして……

「鑑定!」

 小声で口に出すと、ステータスカードの画面が再び切り替わった。


<<お守り>>

・幸運:10

・紹運:4

・加護:7

[解放(想)]


 なるほど、お守りというだけあって、幸運系のステータスが高いようだ。

「……ん?」

 なんだろう、この一番下のボタンは……

 末尾に「(想)」とついているから『想力』に関係するのだろう。

 少し不安ではあるけれど、迷っても結論が出そうにないから、思い切って押してみることにした。


<<お守りに対して、[想力 解放]を実行しますか?>>

[はい][いいえ]


 取り返しのつかないことにならないか、という不安はあったけど、覚悟を決めて[はい]を選択する。

 直後、ステータスカードに次々とメッセージが表示されていく。


<<お守りに込められた想いが解放されました>>

<<「幸運を願う想い」が「解放」されました>>

・幸運 10 → 100

・紹運 4 → 5

・加護 7

<<「安全を願う想い」が「解放」されました>>

・幸運 100 → 120

・紹運 5

・加護 7 → 8(限界突破)

<<「水音千代の力になりたい想い」が「解放」されました>>

・獲得:人格


 めまぐるしいほどの変化が落ち着いたと思ったら、次はお守りの本体から「ぽんっ」という軽快な音が聞こえた。

 視線をお守りの方に移すと、そこには小さな人形が、いて、お守りをリュックサックのように背負っていた。

 腰まで届きそうな長い黒髪で、巫女装束のような朱と白の衣装を身に纏う彼女は、じっと自分の方を見つめている……

「えっと……初めまして?」

 自分がそう話しかけると彼女はスッと立ち上がり、そのまま地面から離れて空中でくるりと一回転した。

 何かに吊されているようではなく、まるで重力を無視しているかのような挙動の彼女は、同じ目線まで浮き上がってから優雅に一礼した。

「はい、この姿では『はじめまして』ですね。チシロさま! 私はマテラ。見ての通り、チシロさまのお守りです」

 彼女は、マテラというらしい。

 お守りと名乗るということは、本体は自分のお守りなのだろう。

 マテラは自分を頭からつま先まで視線を移して観察して、まるで「ちょうど良い場所を見つけた」と言わんばかりに自分の肩の上に乗る。

 そしてそのまま、自分が羽織っていた異世界風ローブのフードの中に、もぞもぞと潜り込んでいった。

「あの……マテラ、さん?」

「なんでしょうか、チシロさま?」

「なぜ、フードの中に……?」

「目立ってはいけないと思いまして、隠れさせていただくことにしました。それよりもチシロさま、早速ですがクエストを受注しませんか?」

 フードの中のマテラは、姿を見せずに耳元でささやいた。

 これだと、周りから見たら独り言を呟いているやばい奴に見える気もするけど……視線を左右に振って周囲を確認しても、幸いなことにこちらを気にしている人はいないみたいだった。

「クエスト……?」

「ギルドの職員達がそんな話をしていました。この世界の冒険者達は、クエストで生計を立てているそうです!」

 そういえばサポートブックにも、クエストについて紹介しているページがあった。

 クエストはギルドで取り扱っている、冒険者向けのサービスで、イメージとしては単発のアルバイトに近いらしい。

「自分に……このステータスでもできる仕事があるのだろうか」

「悩んでも仕方ありませんよ、チシロさま! 何はともあれ、ギルドに向かいましょう!」

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