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山龍討伐一日目(3.5):敵拠点

 そこからは、ライアの道案内に従って、二十数名での行軍が始まった。

 ちなみに赤い羅針盤の人達は「専門家の俺たちでも迷う結界を、どうやって?」と聞いてきたけれど、それは企業秘密ということにした。

 というか、自分にはわからないし、ライア自身にもよくわかっていないらしい。

 聞いた話だと「我の視点は、流れの中にいるお主らを川岸から見ているようなものだ」とのことらしい。

 なるほど……よくわからない、ということがわかった。

 概念的な話だと思うので、考えても仕方がないのだろう。

 結局「妖精なら、そういうこともあるか」という結論で落ち着いた。


 どうやらこの世界での妖精は、いわゆる「なんでもあり」な存在として捉えられているらしい……


「チシロよ、そろそろ見えてくるはずであるぞ」

 ライアが戻ってきたので改めて確認すると、確かに大勢の人が集まっている気配を感じる。

 そしてそのまままっすぐ進むと、石垣に囲まれた山城が姿を現した。

 ちなみに城といっても、天守閣があるような豪華な城ではなく、見た目よりも機能性を重視したような城だ。

 背の高い建物はなく、すべて木々の下に隠れるようになっている。

 これは多分、山の外や、空の上から敵に見つからないように……という工夫なのだろう。


 赤い羅針盤の代表が一足先に門をくぐって中に入っていき、十分ほどで手を振りながら戻ってきた。

「おーい! 入城の許可が出たぞ! とりあえず中に入って一休みしよう!」

 その一言を、待ってましたとばかりに赤い羅針盤の隊員達は城の中へと飛び込んでいく。

 白黒姉妹と自分は少し反応に遅れて、隊長さんと一緒に彼らの最後尾につくことに。


「傭兵二人と、妖精使いのチシロさん、赤き農民のギルマスが話があるらしいんだが、今すぐでも大丈夫か?」

「もちろんです〜、いろいろと事情も聞きたいですし〜」

「そうだぞ☆ いろいろと文句を言いたいことも、あるんだぞ☆」

 シロヒメさんとクロヒメさんは賛成しているみたいだし、自分としても特に断る理由はない。

 自分も、黙って頷くと、代表は「よし、それじゃついてきてくれ」と自分たちを案内した。


 城の中に入ると、そこが森の中であることを忘れてしまいそうなほどに、近未来的な空間だった。

 床や壁から天井まで、謎の金属のような物体に囲まれていて、照明のおかげで昼間のような明るさが確保されている。

 空調が行き届いていて森特有の湿気も匂いもなく、まるで近未来的な病院に迷い込んだかのようだった。

 自動扉が音もなく開き、その先で一人の男が、偉そうに椅子に腰掛けて待っていた。

「やっと戻ってきたか、傭兵ども! 一体どこで油を売っていたんだ!」

「油を売っていたというか〜……」

「遊んでたんじゃないんだぞ☆ 道に迷ったんだぞ☆」

「プロの傭兵が、道に迷った……? まあ良い、それで? 例の奴は捕らえたのか?」

「あ〜……それが〜、ですね〜」

「端的に言って、逃げられたんだぞ☆ あの侵入者は、なかなかの強敵だったんだぞ☆」

「おいおい、それでも傭兵かよ……まあ良い。それで、そっちの方々は?」


 シロヒメさんとクロヒメさんがひとしきり怒られた次は、その視線が隣にいた赤い羅針盤の代表へと移った。

「俺は、探索ギルド『赤い羅針盤』の代表だ」

「ああ、やっと来てくれたか……俺は『赤き農民』のギルマスだ。そっちのそれも、お前の仲間か?」

 自分の方に指をさされた。それを見た代表は、面倒くさそうな顔をして頭をかく。

「あ〜まあ、うちの有力な新人……って、ところだ」

「まあ、んなこたどうでも良いか」


 まあ実際は、自分は別口でクエストに参加しているわけだけど、聞いてきた本人があまり興味なさそうだ。

 自分としても、「実は一人で森に入って迷子になって……」という説明はできればしたくないし、とりあえずそういうことにしておこう。

 黙って頭を軽く下げると、赤き農民のギルマスは興味なさげに視線をそらした。


「それじゃ、状況が変わったこともあるから、まずは状況の説明から……探索ギルド、お前達を呼んだ理由は聞いているな?」

「ああ、もちろんだ。山龍の調査……だろ?」

「表向きは、その通りだ。だが、山龍なんていないだろうから、他に頼みたいことも……」

「いや、おそらくだがこの山には、山龍がいるぞ?」

「……なに!?」


 代表の言葉を聞いて、赤き農民のギルマスは驚いた表情を浮かべる。

 ……ってか、え? その反応ってことは、黄金に依頼したのはなんだったんだろう。

 むしろ一番驚いたのは自分なのだけど、そんなことは気にせず二人は会話を続ける。


「まだ調べたわけじゃないがな。俺の経験から、いても不思議ではないってことだ」

「そうか……だったら今すぐに、詳しく調査してくれ!」

 赤き農民のギルマスの表情からは、さっきまであった余裕が消し飛んだかのようだった。

 青ざめた表情をする彼に、代表は冷静に告げる。

「こっちにも準備がある。明日の朝から調査を開始して……結果が出るのは明後日(あさって)だな」

「そ、そうか……わかったそれで良い。一刻も早く、事態を解明してくれ……それで、傭兵達。もし山龍がいたときには……」

「もちろんだぞ☆ 荒事なら私たちに任せておくんだぞ☆」


 そんなわけで、話し合いはそれで終わりになった。

 赤き農民のギルマスは、慌ててどこかへ走り去っていく。

 赤き農民の別メンバーに、相談でもしにいったのだろうか……


「チシロ、さっきは済まなかったな……勝手に赤い羅針盤(オレら)の仲間ってことにして」

「それはまあ、別に良いですよ……それでこれから、どうするんですか? 何か自分に手伝えることとか?」

「いや、特にないな……明日は大変なことになるから、今日は休んでおいてくれ」


 自分たちはそれぞれ案内されて、ビジネスホテルのような個室へ通された。

 小さなテーブルと、ベッドが一つだけある。他には何もない簡素な部屋だ。

「休んでくれ……と、言われても」

 まだ外は明るいし、眠くもないし、そこまで疲れてもいない……

 ローブをハンガーに掛けて、自分はベッドの上に腰掛ける。

 すると、ローブのフードから、マテラとライアが這い出してきた。

「チシロさま、お暇なようですね」

「マテラよ……では、チシロを案内してやってはどうだ?」

「そうですね。それが良いかもしれません!」

 マテラとライアは、何やらコソコソと話をしている。

「案内するって……どこに?」

「それは……見せてからの方が早いです」

「チシロよ、少しの間目を閉じて、身体の力を抜いておくのだ……」

 ライアに言われたとおりに、目を閉じる。

 力を抜くと、自分の身体がふわりと浮かんだような感覚に包まれる。


 肌に触れる空気が切り替わったような気がする。

「チシロさま、目を開けても大丈夫ですよ」

 まぶたの先には、さっきまでの個室の様子はなく……知らない光景が広がっていた。

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