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山龍討伐一日目(3):傭兵と探索ギルド


 ◇


 商談を終えたあいつらは、俺たちのホームから出て、外に放置してある馬車に戻っていくようだった。

 ここまでは、俺たちの思い通りに動いている。

 それにしても、敵に「まぬけ」がいたおかげで楽ができた。

「親方……上手くいきましたね!」

「ああ、そうだな。だが油断はできない……それで、捕虜の様子は?」

「確認してきます、少々お待ちください!」

 質問をすると、その部下は慌ただしくどこかへ走り去っていった。

 本当は、部下達とはもっと仲良くしたいのだが、今はどちらかというと恐れられているような気がする。

 ……まあ、こういう信頼関係は、じっくりと築いていくしかないのだろう。


 しばらく待つと、別の部下が、身体を縮めながらおずおずと部屋に入ってきた。

「どうした?」

 優しく声をかけたつもりだったが、彼はびくりと身体を跳ね上げる。

「それが……例の捕虜の件ですが……」

「どうした、何かあったのか? 怒らないからいいなさい」

「その……見失いました。十人以上で見張っていたのですが、突然姿を消したのです! 結界で方向もわからないはずなのに、見張りの包囲の隙を正確に縫うようにして! まさか逃げられるとは思わず……」

「わかった、言い訳はしなくていい。それよりも、結界の外に出たりはしていないだろうな!」

「捕獲用の結界からは、すでに逃してしまいました。ですが、山全体の結界からは、まだ逃がしていません」

「そうか……報告ご苦労。今すぐ追撃部隊を手配してくれ……それとこのことは『黄金』には気づかれないように」

「はい、わかりました……」


 あいつも反省しているみたいだし、怒りをぶつけても事態が改善するわけじゃない。

 だが、事態はかなり深刻だ。

 仕方がない……奥の手を使うことにするか

「おい、だれか! 例の傭兵をここに呼べ!」


 部下に声をかけてしばらく待つと、二人の女がノックもせずに乱雑に部屋に入ってきた。

「お客様ぁ〜、私たちを〜、お呼びですか〜?」

「だから最初から、私たちに任せておけばよかったんだぞ☆」

 間延びした話し方をする白髪の女性と、ふざけた話し方をする黒髪の女性。

 この二人は、俺が念のために呼んでおいた傭兵だ。

 高ランク冒険者を、かなりの割安で雇うことができるということで念のために声をかけておいたのだが、まさか本当に利用することになるとはな。

「お前達は、森に逃げた冒険者を捕らえてくれ。手段は指定しないが、人質に傷をつけないようにだけ、気をつけてくれ」

「かしこまり〜ました〜!」

「それじゃあ早速出発するんだぞ☆ お前は、ふんぞり返って結果を楽しみにしているといいんだぞ☆」

 ふざけた二人だが、それでも今は、あいつらに頼るしかない。


 あとは……捜索専門のギルドにも声をかけて、森の結界の強度も上げて……

 最悪なのは、人質が結界から抜け出したり、あるいは勝手に怪我をされること。

 そうなると……俺たちの方が契約違反をしたことになって、ペナルティを受けることになってしまう。


 俺たちには、もうあとがない。

 どんな手段を使っても、今回の作戦を成功させなければならないのだ……


 ◇


 白岩の獣は、術式が成功して元気になったようだ。

 体調が良くなったことが嬉しいのか、それとも感謝のつもりなのだろうか。

 もふもふになった毛皮をこちらに擦りつけてくるのだが、これが暖かくて気持ちが良い。

 そして、ひとしきりじゃれあった後は、また眠るようにおとなしくなった。


 存在感が薄まっていく。

 ついさっきまで『獣』と認識していたにもかかわらず、今は『白い岩』にしか見えない。

 森の中にこんな『白い岩』があったら違和感があるはずだけど、不思議なことに何も感じない。

 そしてやがて、自分はその白い岩を見失ってしまう。

 あれだけ大きかったのに、辺りを見渡しても全く見当たらない。


<<ふむ、森との調和もうまくいっているようであるな>>

<<これにて、我らの役割は完了である>>


 声の主たちの声色からも、緊迫感の角が落ちている。

 どうやらこれで、彼らにとっての問題は解決したことになるようだ。

 その後、声の主達とコソコソやりとりをしたライアは、自分の元へと戻ってきた。

「それでは、チシロを案内しよう……向かう場所は、人間が集まる集落で良かったか?」

「最終的に森の外に出ることができれば、自分たちはそれで良いんだけど……」

「チシロさま、ひとまずライアちゃんが言う、集落へ向かいましょう! そこからなら、きっと外と連絡も取れるはずです」

 マテラの言う通りかもしれない。

 もし森の外に出たとしても、自分たちが入ったのと正反対に出たりしたら、迷子の状況に変わりがない。

 だとしたら、もし人が集まっている場所があるなら、まずはそこを目指すべきなのだろう。

「じゃあライア、そういうことだから、道案内をよろしく!」

「うむ! 我に任せておくが良い!」


 ◇


 当てもなく山の中を進んでいると、私はすぐに敵ギルドの戦闘員に囲まれました。

 数は……数えるのも面倒なほどですが、気配を消すこともできない程度の相手なら、警戒する必要もありません。

 チシロさんだけでは人質として足りないと思ったのでしょうか……


 当初の作戦であれば、ここで手を抜いてあえて捕らえられていたのですが、今となっては手加減は不要。

 さて、では逆に返り討ちにしてやりましょう。そう考えていたのですが……

「くっ、片田舎の農村ギルドに、これほどの腕を持つ戦士がいるとは……またも計算違いです!」

 どうやら私は、敵ギルドのことを甘く見ていたようです。


 飛び込んできたのは明らかに異質な『白い影』でした。

 私はカードを破って大剣を出現させて、そのまま勢いよく振り下ろす。

 相手は驚いたように身体を捻って避けながら、細い剣を鋭く突き出してきます。

 私も身をずらして刺突を避けて、今度は剣を横薙ぎに、何度か繰り返しましたが、すべてが空を切りました。


 一呼吸の間に数十回の攻防を繰り返し、お互いに弾けるように距離を取りました。

 1トンを超える大剣の重さに耐えられるように地面を魔力で強化しながら敵を観察します。

 姿が見えるほど目の前にいるのに、その相手からはまったく気配を感じない……

 その立ち姿からだけでも、かなりの実力者であることがわかります。


「なるほど……なかなかやりますね!」


 一度小さく息を吸い、今度はこちらから攻め込みます。

 地面を蹴って敵の元へと飛び込むと、相手は私の剣を真正面から受け止めました。

「っう〜!」

 軽くうなり声を上げた敵の細剣と、私の大剣がぶつかり合って火花を散らします。

 私のこの、1トンを超える重量を持っている大剣と、芸術品のように白い細剣が火花を散らし……結果として吹き飛ばされたのは、質量で勝っているはずの私の方でした。

 まあ、距離を取るためにあえて力を抜いて、後方へ下がったというのもあるのですが。


 飛ばされた先の地面に着地すると、すぐそばから黒い影がヌッと現れます。

 まるで、そこに私が飛ばされるのをわかっていたかのように……いえ。

「これも、計算ずく……ですか!」

 とするとこの黒いのは、白いやつのコンビなのでしょう。

 僅かにも殺気を感じさせないまま振り下ろされる黒剣に、私の大剣を合わせる。

 同時に、私に追撃を加えようと前のめりになった白い方に、複数枚のカードを投げつける。

 大剣からギシッと鈍い音が鳴り、それでも押し込むように黒を弾き、私も後ろへ下がる。

 剣は……だめですね、さっきの一撃で使い物にならなくなりました。


 白い方に投げたカードは確かに効果を発揮し、魔力のこもった鎖や縄などが巻き付いていく……のですが、白はそれらを細剣で丁寧にそぎ落とし、数秒の時間稼ぎにしかなりません。

 そして黒が、白のとなりにスッと舞い降りる。

「Aランク以上の魔物を半年以上拘束できる、はずなんですけどね……」

 二人で何やら、私を指さしながら楽しげに雑談しています。

 どうやら敵は、まさしく化け物のようです。


 改めて、敵の様子を確認します。

 最初に攻撃を仕掛けてきた白い方は、装備から長い髪まで全身真っ白な騎士風の女。

 もう一人の黒い方は、対照的に全身真っ黒な装備で、長い黒髪の死神風な女。

 その立ち姿だけ見れば、彼女たちがただ者ではないことがわかります。


 折れた剣を投げ捨ててから別のカードを破って予備の剣を出しますが……

 少なくとも今の私の装備では、戦って勝つことは難しいでしょう。

「ならば、こうです!」

 とっておきのカードを二枚取り出して、破る。

 一枚からは、魔力のこもった『霧』が吹き出して敵の視界を奪い、もう一枚は私の背後に『城』を生成する。

 本当は、黄金の新拠点にする予定だったそれには、対軍規模の防衛施設もあります。

 これで少しは時間を稼げるでしょう……そのうちに!


「ガストフ、聞こえますか?」

 連絡用に渡していたカードに魔力を込めながら声をかけます。

<<アウラか? どうかしたのか?>>

「面倒な敵に絡まれました! 離脱したいので、カードを破ってください」

<<確か、カードを破ればお前が召喚されるんだったか。今すぐやれば良いか?>>

「そうですね……」

 今すぐに、でも良いのですが、せっかくなのでいろいろ試してからにしましょうか。

「通話はこのままつなげておいて、私が合図をしたらお願いします」

<<ああ、わかった>>


 さて、では何から試してみましょうか。

 あれだけの相手に、通常兵器では時間稼ぎにもならないでしょう。

 この拠点も、どの程度耐えられるか……そうですね。

 まずは手始めに『天空城』でも試してみることにしましょうか。


 懐から一枚のカードを取り出して、破り捨てる。

 同時にあたりが薄暗くなる。見上げると、空を隠すほどの巨大な岩が。

 ゆっくりと……落ちてきている?

 あれ、もしかして浮力が足りなかった?

「ガストフ……早速ですが、カードを破ってください」


 ◇


「チシロさま、あれは……?」

「人……? どうしたんだろう、道に迷ったのかな」

 ライアの案内についていくと、不思議な二人組がそこにいた。

 変な地響きがあったり、結界が急に強化されたりしたらしいけど、マテラとライアにも原因はわからなかったらしい。


 全体的に白い衣装な女性と、逆に黒い衣装でまとめた女性の二人組。

 顔つきがそっくりだから、おそらく姉妹なのだろう。

 道に迷っているのだろうか、彼女たちは地図を見ながら困ったように笑っていた。


「こんにちは、大丈夫ですか?」

 自分が声をかけると、二人は驚いたようにこちらに振り向いた。

「あら〜、こんにちは。この森の人ですか〜?」

 白い方の女性が、顔を手に当てて聞いてくる。

 別に自分は、森に住んでいるわけではないけれど、この世界では森に住む人が当たり前にいるのだろうか……

「自分たちも、外から……クエストでこの森に来ただけですよ。お二人とも、道に迷っているようなのでお手伝いしましょうか?」

「お手伝い〜?」

「でも……まずはこのやっかいな結界をどうにかしないと、いけないんだぞ☆」

 黒い方の女性は少しいらだたしげに、手を振り払うようにしている。

 どうやらこの結界は、自分たちだけを対象にしたのではなく、無差別に人を迷わせているらしい。


 念のためにライアに視線を送ると、腕を組み、胸を張りながらその場で縦回転して身体をこちらに向けた。

「うむ、チシロよ。その点は安心するがよい。我にこの結界は影響しない。我と人族どもでは、見ている世界が違うからな!」

「……と、そういうことです。よければ二人も一緒に来ませんか? 自分たちも、人の集まる場所へ向かっているところなので」

 困ったときはお互い様だと思うからね。

 二人からは、自分に対する敵意みたいなものを感じないし、悪人という雰囲気でもない。

 それに、たった二人でこの森に入るということは、少なくともある程度の実力者ではあるはず。

 危険な魔獣が出たりしたときに、一人でも多い方が心強いというのもある。


 自分の提案を聞いた二人は、悩む間もなくパッと笑顔になった。

「ありがたいんだぞ☆」

「そうですね〜、お言葉に甘えることにしましょうか〜」

 そんなわけでとりあえず、自分たちは人の集まる場所まで、一緒に行動することになった。


「ああ、そうだ。自分の名前は、チシロ。こちらの妖精は、ライアとマテラです」

 せっかくだからということで、こちらから名乗ると、二人は顔を合わせて少し悩んでから、まあ良いかと気持ちを切り替えるように自分の方に顔を向けた。

「私はシロヒメです~。『白騎士(しろきし)』というギルドの隊長でもあります〜」

「アタシはクロヒメ。こう見えて『黒鉄(くろがね)』の幹部なんだぞ☆」

 真っ白な方の女性がシロヒメ、黒い方の女性がクロヒメ。

 色に名前を合わせたのか、名前に色を合わせたのか……おそらく後者だと思うけど、覚えやすくてありがたい。


 でもそれだと、所属しているギルドまで、名前に合わせて選んだことになるのか……?

 そして、肩書きを聞く限りだと、二人はどうやらそこそこ偉い人らしい。

 まあ、

「転生してきたばかりなので、二人のギルドがどの程度なのかわからない……」

 というわけだけど。


 今回のクエストが終わったら、アウラかガストフ(おやっさん)に聞いてみよう。

 まあ、二人の方は、むしろそのことを聞いて安心したように表情を緩めていたけれど。

「チシロ、そんなこと、転生者なら誰でもだし、気にしなくても良いんだぞ☆」

「そうですよ〜。それにしても〜、チシロさんも転生者だったんですね〜」

 二人とも、転生者であるという事情をくみ取ってくれたようだ。

 というか、ん……?

「『ちしろさん()……』ということは、シロヒメさんと、クロヒメさんも?」

「そうだぞ☆ 私たちは、双子の転生姉妹なんだぞ☆」

「ま〜私は転生者というか、転生特典なんですけど〜?」

 道理で、二人とも顔立ちが似ているわけだ。


 もしも二人が同じ格好をしていたら、見分けがつかなかったかもしれない。

「私は、転生しても白姉(しろねえ)と一緒で、うれしいんだぞ☆」

「ま〜〜、私もまあ、嬉しくないわけじゃない〜、ですけどね〜」

 いや、性格はだいぶ違うみたいだし、なんだかんだで、区別はできそうかな。


「それでチシロは、こんな森の中で何をしていたのか、教えて欲しいんだぞ☆」

「自分たちは、赤き農民っていうギルドから依頼を受けて……」

 それで、道に迷ってライアに出会い、その後クロヒメさんとシロヒメさんにも出会った。

 今にして思えば、自分を取り囲んでいたあの気配は、結界で迷う自分達を救出しようとしていたのかも……

 いや、自分の『想力』の感覚を信じるなら、あれはどちらかというと敵意だったから、あの場面は逃げていて正解だったと思うのだけど。

「それなら〜、私たちと同じですね〜」

「そうだぞ☆ 確か私たちの依頼主も、赤きなんとかだったんだぞ☆」

「なるほど……依頼をしていたのは、自分たちだけではなかったんですね」


 まあ、そりゃ。

 山龍の討伐っていうのがどの程度の難易度なのかは知らないけれど、これだけ巨大な敷地で何かをしようというのだから、メンバー数三人(プラス、助っ人二人)のギルドだけに任せることはないのだろう。

 そんなことを話ながら、歩いていると……目の前に何かが見えた気がする。


「……ん? あれ、なんだろう。ライア、少し止まって?」

 自分たちを先導してくれているライアに声をかけ、目をこらしてみると、どうやら人の気配があるようだ。

 一人や二人ではない。結構な数の人が、何やら困っているような気がする。

「チシロさま、どうしました?」

「いや、少し先で、人が……二十人ぐらい、集まっている気がするんだけど」

「うむ? だがチシロよ、我らが向かっている集落までは、まだ距離があるのだが?」

 そうはいっても、あれは明らかに人の気配だ。

 少なくとも何かがいるのは間違いないし、獣の気配とは雰囲気が違う。


 自分たちが急に立ち止まったからなのか、クロヒメさんが自分の見ている視線を追いながら、近づいてくる。

「チシロ、チシロ☆ 何かあったのか? 教えて欲しいんだぞ☆」

「えっと……少し先に、人の気配があるみたいなんです」

「人の、気配……だぞ?」

「それは〜、もしかしたら私たちと同じ、依頼を受けたギルドかもしれません〜。行ってみましょう〜!」

「これも人助け……なんだぞ☆」

 シロヒメさんとクロヒメさんははずいずいと森を進んでいくので、自分たちも後を追うことにした。


 相変わらず森の結界は元気なようで、まっすぐに進んでいるのに気配を感じる方向がぐるぐるとずれた。

 そのたびに自分が指さしで方向を訂正しながら、しばらく歩くと大勢の人が集まっている様子が見えた。

「本当にいたんだぞ☆ ここまで近づけば、私にもわかるんだぞ☆」

「早速、声をかけてみましょう〜!」

 クロヒメさんとシロヒメさんは警戒する様子もなく、堂々と集団の方へ近づいていく。


「こ〜んに〜ちは〜!」

 シロヒメさんが、のんびりとした大きな声で挨拶すると、見張りをしていたと思われる数人が、こちらに気がついたようだ。

 彼らは彼らの隊長と思われる人に慌てた様子で話をして、二十近くある視線が、一斉にこちらを向いた。

 それはまあ、こんな森の奥深くで、まさか他の人に出会うとは思っていなかったのだろう。

 警戒されたとしても、それは仕方がないのかもしれない。

「こんにちは、だぞ☆ 探索ギルドの人達……? 警戒しなくて、大丈夫なんだぞ☆」

「私たちも〜、同じ依頼主から仕事を受けたのです〜。そちらに向かってもよろしいですか〜?」


 クロヒメさんとシロヒメさん達は、あくまでその場から動かずに、彼らに声をかけ続ける。

 こちらは五人(二人の妖精含む)で、相手は約二十人。

 人数差があるから、警戒されたら面倒だと思ったのだろうか。

 いかにもベテランらしいやりとりを、とりあえず自分は邪魔をせずに見ていることにした。


 しばらく待つと、探索ギルドの方で意思がまとまったのか、代表らしき一人がこちらに近づいてきた。

「……俺は『赤い羅針盤』の代表だ。お前達はどうしてこんなところに?」

 赤い羅針盤……という名前のギルドらしい。

 代表を名乗る彼が挨拶を終えると、続いてシロヒメさんが前に出た。

「私たちは〜、赤き農民に雇われた傭兵です〜」

「そうか、俺たちと同じだな……そんで、道に迷ってるのも同じってところか? ったく、赤き農民(あいつら)、好き勝手に結界のパターンを切り替えやがって!」

「そうなんだぞ☆ でも大丈夫、チシロが私たちを案内してくれるんだぞ☆」

「チシロ……? そいつのことか?」


 急に自分の話になったので、慌ててローブの裾を直す。

「あ、はい。自分がチシロです……ちなみに、案内するのは自分ではなく、妖精のこの子が……」

 ライアを呼んで指さすと、赤い羅針盤の代表は、驚いた顔をした。

「そうか、なるほど妖精……つまりあんたは、妖精使いの方でしたか!」

 ……妖精使い?

 そんな職業がこの世界にはあるのだろうか。まあでも、今の自分の状況は、確かに妖精使い(それ)が近いのかもしれない。

 使っているというより、依存していると言った方が近いかもしれないけど、とりあえずそういうことにしておこう。


「……まあ、そんなところです。自分たちは、人が集まっている場所へ向かっているのですが、よかったらご一緒しますか?」

「人が集まっている場所……赤き農民の拠点のことだな? そいつは助かる、ぜひお願いするぜ!」

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