来ちゃった☆
◆◆◆18:00 自宅◆◆◆
「──と、いうことで……明日からオレ、三日間ほど友達の家に泊まるから」
そう両親と一羽? に、告げオレは自室へと篭ってお泊まりの準備を開始した。
……ちなみに、両親はオレの能力を知っているので事情を説明したら快くお泊まりを許可してくれた。
だが──、
『………………狡い』
──と、ふくれっ面な鳥が一羽。
『お泊まりとか言って一人だけ豪勢な食事を愉しんだり、広く快適な部屋でのんびりと寛いだりするつもりであろう貴様!!!』
鳥はまるで威嚇するように、姿勢を低く翼を半開きにし、口を開けてオレに向けてくる。
……あ、言い忘れていたけど、この鳥の種類はオカメインコだ。色はルチノー。
──自称『神獣』ということだが……妖と神獣の違いがサッパリ理解らんので、オレは妖としてコイツを扱っている。
あと、見た目は可愛いオカメちゃんだが中身は凶暴だし食い意地も張っている。口も悪いし、すぐにキレる。
なので……、
「あーはいはい、そうかもね〜」
と、オレは適当に話しを流しつつ明日の用意に専念させてもらおう。
『どうせその写真だって光の加減とかであろうに! 人間はすぅぐそういうのを『妖』の所為にする!! 現実的に考えろ! もしくは儂が確認してやるから一緒に連れてけ!!』
現実的に考えろって……非現実的存在が何言ってんだ? と、思わなくもないが今は口では無く手を動かそう。
◆◆◆翌日13:00 西園寺邸 客室◆◆◆
『……来ちゃった☆』
「………………」
西園寺の家に着き、客室へと案内されたオレは昨日用意したお泊まりセットを開け絶句した。
──オヤツにと入れておいた菓子類は無惨にも食い荒らされており、その残骸が着替えにまで付着しグッチャグチャの地獄絵図と化していたのだ。
そして……この地獄絵図を作り出したであろう犯人は、この現状を可愛ぶりっ子して誤魔化そうとしている!
──どうする?
許す/ 許さない/→絶対に許さない
「絶対に許さんからな貴様……」
オレは犯人の身体を片手で鷲掴み、ド低音ボイスで告げてやる!
『……ひッ! わ、儂に何をするつもりじゃ!? 言うておくが今の儂はか弱い小鳥ちゃんじゃぞ!! 動物虐待で訴えられたら負けるのはお主の方じゃかr──』
「──お前は動物じゃなくて……あ・や・か・し、だろうがぁああああああああああ!!!」
そう、コイツは動物ではなく妖だ。
故に……これは動物虐待にはならんのだよ残念だったなぁ鳥!!!
──さぁ〜て、先ずは手始めにその伸びた爪を切ってやろう! その後、菓子の食いカスまみれのその身体を水で綺麗にしてやる!!
「さぁ、覚悟するんだなぁ!!!」
◆◆◆14:30 西園寺邸 書斎◆◆◆
「──これが、その問題のラジオなのか?」
鳥への仕置きが終わり、一応だが荷物の整理も済んだので……西園寺に案内してもらい、例のラジオを見せてもらう。
「ああ。父さんが骨董品屋で見つけて買ったラジオなんだけど……えぇっと…………」
西園寺は口ごもり、オレの右肩辺りをチラチラと見てくる。
『……なんじゃ? 儂に何か言いたい事でもあるのか小僧』
今、オレの右肩には小綺麗になった鳥が一羽……不機嫌そうにとまっている。
「えと、火神? この鳥はいったい……?」
「──ただのペットだ気にするな」
『ペットじゃと!?!!? 儂の名は鳳凰! ペットでも妖でもない、神獣じゃ!!!』
鳥──鳳凰は声を荒げ抗議するが、西園寺は、
「あ〜、家から着いてきちゃったのかぁ」
……と、疑問が解けスッキリしたような顔で言っている。鳳凰ざまぁあああああ!!
◆◆◆
──ふぅ! 多少スッキリしたので本題に戻ろう。
今、オレ達の目の前に鎮座しているのが件のラジオらしいが……ひと目見ただけで年代物だと理解る。
しかし……小型の冷蔵庫ほどのサイズがあるこのラジオだが、その隅々を確認してみても別段嫌な感じもしないし、おかしな部分があるようには思えない。
「ど、どうだ? 何か変な気配とかするか……?」
西園寺は心配そうに訊いてくるが、
「いや全く。ホントにこのラジオから夜な夜な不気味な声が聴こえたのか?」
そう──オレは逆に訊き返していた。
◆◆◆16:00 西園寺邸 客室◆◆◆
「んーーーーーーぁーーーーー……」
客室へと戻り、オレは机に突っ伏し呻く。
『結局、この家の何処にも異常は無かったの』
オレの気持ちを代弁するように鳳凰は呟く。
──書斎を後にしたオレ達は、西園寺に案内を頼みこのデカい家内を片っ端から探索した。
だが、結果は上記の通り芳しくない。
……不自然なほど何も無いのだ。妖一匹見当たらない。
それに、西園寺の親父さんにも話しを聞いてみたが……
● ラジオを購入した骨董品屋へ連絡したが、ラジオが店に置いてあった時にはその様な事は一切無かったとのこと。
● 気味が悪くなり処分を検討したが、どうやっても壊すことが出来ず……且つ、捨てても家へと戻ってくる。
● 最初の頃はラジオから声が聴こえるだけだったが、段々と獣のような唸り声も混ざり、今では何処からともなく異臭もするらしい。
● ラジオを購入してから、家の壁に獣の引っ掻き傷のような跡が所々にでき始めた。
● 霊能者をこの家に招いて以降は、窓も開けていないのに家具が急に倒れる。家中で不可思議な音が鳴る等、明らかに異常が増えだした。
……と、簡単に纏めるとこのような現象に襲われているらしい。
うん。此処はホラーハウスなのかな?? 異常が多くて驚いたわ!
それに──、
オレは自身のスマホで撮った写真を見比べる。
──実は、この家を探索している最中……オレはこの家の写真を数枚撮らせてもらっていたのだ。
そして、この家に着く前にも付近の写真を何枚か撮った。
学校で見た西園寺が撮った写真、それがあまりにも気掛かりだった為そうした訳だが……。
──先ず、この家の敷地外の写真を見る。
何ら異常性の無い普通の写真だ。
特に赤みがかっているワケでも無いし、変なモノが映っている訳でも無い。
まぁ……妖がピースして映ったりしているが、それはオレにとっては日常的な光景なので無視しておこう。
──問題は、この家の敷地内の写真の方だ。
写真の全体が僅かに赤みがかっている。
件のラジオも撮らせてもらったが、特にラジオだけという事もなく……この家の敷地内、何処を撮っても赤みがかっているのだ。
敷地の内外を何度も行き来し、写真を撮ってみたが──何度やってもこの家の『敷地内だけ』赤みがかる。
──試しに敷地の境、その部分で写真を撮った結果……綺麗に半分だけ赤みがかった写真が撮れた。
その結果……オレの脳内からは『光の加減』や『カメラの異常』などという線は消えた。
間違い無く、この家で……もっと言えばこの『西園寺邸の敷地内』で何かしらが起こっているのだろう。
◆◆◆
「──まぁ、その『何か』がまだ解らない訳だけどな!」
ため息混じりにそんな事を言っていると、突如!
──コンコンッ!
と、客室の扉をノックする音がした。
(──び、びっくりしたぁあああああああああッッッ!!)
オレ、情け無くも心臓バックバクである。
……今笑った奴ら、実際やられてみ? 吃驚するから!!
「は、はぁーい……」
相手を待たせるワケにもいかないので、小走りで扉を開けに行く。
そして扉を開けると其処には、西園寺に見せてもらった写真に映っていた──あの黒ローブのオッサンが立っていたのだった。