ニンゲン
普通の人間は生身でクマに勝てない
普通の人間は生身で大空を飛べない
とっても非力で
ちっぽけだ
雨の寒さで風邪を引いたり
太陽の熱で倒れたり
やはり非力で
弱い生き物だ
生身で戦ったら
自然になんか勝てっこないからね
だから知恵を使うんだ
猟銃とか作ってさ
クマをバァン!ってやってさ
オマケに手とか食べるんだよ?
「おいしいおいしい」
って言って食べるんだよ
人間って
おかしいね
空だってそうだ
機械の翼を手に入れて
鳥よりも速く飛んでゆく
飛行機っていうんだけどさ
それまでに何度も
失敗してるんだって
よくもまぁめげずに
ムキになって……、
人間って
どこか変わってる
自然にだって抗っちゃう
冷たい風や
暑い熱風を
適温にしちゃうエアコン
ねぇねぇ
人間ってどうして
弱くてちっぽけなのに
こんなにも諦めが悪いの?
とうのとっくに
滅んでいてもおかしくないはずなのに
なぜか生き残っている
人間って
おかしいねぇ
そうやって生き延びているかと思えば
見えない所でいっぱいいっぱい
死んでいるみたい
その人たちの物語は語られないまま
心臓が止まればそれでおしまい
街中を歩いている人は
そんな事などお構いなしに
普通に生きている
人間って
やっぱりどこかおかしいや
きらびやかな世界に吸い寄せられて
暗い影には目もくれず
誰かが明日の甘い蜜を吸うために
誰かの物語が風に溶けてゆくよ
寂しいね
痛いね
そんなときには深呼吸
誰かが風に溶けて今が在るということ
世界には物語が溢れているということ
忘れずに
生きていきたいな
ニンゲン
それは不思議な生き物
数多くの語られない物語の上に、世界は成り立っている。




