家族達
「ブライの言う通りじゃぞユキ、そろそろワラワ達にも話してもよかろうも」
古風な口調でブライの意見にする女性の声が背後から聞こえるとユキオは反射的に顔を振り返っていた。
だが、振り返ったユキオの瞳に映るのは暗闇と顔に伝わる柔らかい感触だった。
そんな事を気にせずに顔を上げると、褐色の肌をした女性が少し呆れた表情をしてこちらを見つめていた。
その容姿は誰もが目を奪われるであろう整った顔立ちと腰まで伸びた漆黒の黒髪美女、一見すると人間に見えるが耳だけが尖っている。
「マオ……姉ちゃん」
マオと呼ばれる彼女は、ダークエルフと呼ばれるエルフと魔族の混血児でユキオ達が住む地上世界とは違う世界の住人である。
ユキオとは主従関係の契約を交わした間柄だが、初めて会ってから数年も経っているのでユキオやこの孤児院の者達とは家族のように接している。
マオの他にも何人かと主従の契約を結んでいるが、ユキオ的には頼れる兄と姉と思っている。
そんな頼れる兄と姉がいつものようにこちらに来てくれたのに浮かない顔をしているばかりか思わず目を反らしてしまう。
「いつも、迷惑をかけてすまぬの!とりあえずワシの書斎で話そう」
孤児院の主として頭を下げるブライにマオ達にとってはそんなにかしこまらないでほしく、頭を上げるように伝えると書斎へと移動していく。
※
書斎に移動したユキオ達は、ソファーに腰を下ろして今回の件について改めて話をするのだが………
ユキオの膝枕でくつろいでいる白にユキオ達は何となく締まらない気持ちであった。
だが、特に誰も彼女の行動を責めたり突っ込んだりはしない。
この白の性格と言うかユキオに対する愛情であり少しでも不安を和らげたいと思う気持ちからこの様な事を毎回しているからだ。
そんな白の事はとりあえず置いておいてユキオは、半年前の出来事から今日に至るまでの事をこと細かに話し始めた。
ただ、悪夢の事に関しては初耳だったが、その他の部分、特にユキオに宿る力に関しては特に驚いた様子を見せることはなかった。
何故ならユキオの様子が半年前の件を境に確実な変化が見られ、心配したマオ達がユキオと同じように色々と探っていたからだ。
だから、とっくにこれからユキオが歩もうとする道を一緒に進む覚悟を決めていた。
しかし、その前に本人の気持ちが知りたかったのであえて言わないでいた。
そんなマオ達の気持ちを知ったユキオは目を瞑り、内心穏やかではない気持ちを落ち着かせて再び口を開いた。