序章Part2
ピクリとも動かない蜘蛛の様子を見つつ槍を投げた男が地に降り立つとユウスケは笑顔で駆け寄り嬉しそうに口を開いた。
「さすがユキにぃ!一撃だったね!」
「俺だけの成果じゃないよ、ユウスケがコイツを足止めしてくれたから手間がかからず上手く事を運べたんだよ!あと、兄ちゃんや姉ちゃん達のおかげでもあるね!」
もう一人の男の名はユキと呼ばれ、今回の件は兄や姉の協力があってこそだと言い協力に感謝していた。
「ところで、コイツは死んだの?」
全く動かない蜘蛛を少し警戒しながらも剣で突ついて生存確認をするユウスケの疑問に「今は仮死状態だね」とユキは答えた。
「今回の依頼はこの絡新婦を退治する事だけど、依頼主からはコイツが現れた経緯を調べてくれって言われてるからまだ生きててもらわないと困る
わざわざユウスケに足止めをお願いしたんだから」
そう話すユキは、仮死状態の絡新婦に手を当ててブツブツと呟くと絡新婦の身体が一瞬だけ光を放つと同時にイバラの紋様も一緒に浮かび上がるが直ぐに消えてしまった。
その様子を隣で見ていたユウスケは、ユキが何をしたのかわからず不思議そうな表情を浮かべてると何をしてたのか話してくれた。
「さっきも言ったけどコイツには生きててもらわないと困るから憑依してる人の所に戻ってもらうのよ………正直、気は進まないけどね」
この二人が住む世界には人間や動物以外にもエルフや亜人、その他にも多種多様な生物や種族が存在している。
ユキとユウスケが住んでいる世界は地上世界と呼ばれ、人や動物の他に亜人族や獣人族の他に人や家畜を襲うモンスターなどが居て、二人はそんなモンスター退治や街人達の問題などを解決して生計を立てている何でも屋で、10代ではある武芸や魔法にも長けている事もありこの街ではちょっとした顔役でもある。
そんな二人が今回、依頼されたのは数ヶ月前ほどから出現し人を拐う絡新婦退治だった。
しかし、この絡新婦と言う存在はモンスターや突然変異した蜘蛛などではなく、この世界では「モノノケ」と呼ばれる特殊な存在であることだ。
「モノノケ」は人間や他の生物と違って実体がなく、他の生物に憑依しないと生存や実体化出来ないと言う点だ。
また、それだけでなく「モノノケ」の正体はこの世界中に蔓延してる負のエネルギーが何の影響などを受けて集まり蓄積して生まれるとされている。
そうして生まれた「モノノケ」は人や獣などに憑依して己の力を維持するために他の生物を襲う習性がある。
しかし、負の塊の集まりのせいか「モノノケ」と言う存在は武器や魔法で傷を負わせて殺す事は出来ず、退治するのには根元である負の塊そのものを浄化しなくてはならない。