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自遂  作者: 安宰
3/9

服屋

彼と出会った日の続きが少し入っています。

*彼と出会った日三


 玄関の外の誰かの足音に目が覚める。

窓からは日が刺していて一時間は眠ったのかなと部屋を見渡す。

トケイだけがカチカチと音を立てていて余りの退屈さにもう一度眠ろうかなと思う。まぁそんなに寝れるわけもないですし料理はできないので朝御飯を拵えてやろうなんてことも出来ずに仕方なく椅子を1つノイズの眠るベッドに近づける。何冊が本があるので字でも読めたら良いんですけどと思いながらカチカチとなり響く部屋でノイズの寝顔を眺める。





 それからトケイの針が丁度1週くらいした所でノイズの枕元でベルが鳴り始める。急な事にびっくりして身構えると嫌そうにトケイに触り音を止め大きな欠伸をしながらおはようとノイズに言われる。

『おはようございます』

『もう起きてたのか、今朝ごはん作るから待ってね』

と着替えを始めるノイズ。

『あんたいつ起きたんだい?』

『何時ですか、よくわかんないですが今の時刻より一周前に目覚めました』

と、トケイを指差しながら答える。着替え終わったノイズが食材を出しながら

『一周?七時頃か、というかアンタは時計が読めないのか?』

『生憎小学校も行ってないもので字すら読めないです』

『そうかそうか、なら俺が教えてやるよ』

と何枚かに切ったパンとバターを机に置きながらニコリと笑う。

『必要性はあまりないと思うのですが、』

ノイズが一切れのパンにバターを塗って渡してくれたのを受け取り食べ始める。

『起きて、朝食が有るのはいいですね。ていうか私は名乗ったのですが、どうして名前で読んでくれないのでしょう?』

自分の分を作り終わったノイズが一口頬張ろうとしたところで少し驚いたように止まる。

『結構饒舌なんだな、名前は誰がつけたんだ?本名じゃないんだろう?』

『無口を名乗った事はないです、母親がそう呼んでいたので名乗っていました』

まだ半分も食べ終わっていないと言うのに私が喋る間にノイズは全て食べ終わり2枚目を作り始めている。

『なんか嫌じゃんか、1人って』

意味なんて気にする人が居たとは、と驚きながら

『貴方も対して変わらないのでは?』

と、言い私も食べ終わる。ノイズってうるさいって意味ですよ?人の事言えないじゃないですか。

『俺には今は名乗れなくても本名があるんだよ。いいからいいから、二枚目いるかい?』

『いえ、結構です。じゃあつけてくださいよ名前。丁度飽き飽きしてたので』

じゃあこれ棚に戻してくれと言われ任意の場所にものを片す。二枚目を食べ終わったノイズが机に散らばったパン粉を掃除しながら、

『えー考えとくよ、まぁ名前なんてのは良くて今日は服を買いに行こう。アローンが来る前にミスって燃えちまって俺の服は今俺が着てるのとあんたが着てるのしかないからな。勿論俺が奢ってやるぜ』

と、まるで自分のミスで服がない事など悪くない様にドヤ顔で此方を見ている。

『借りを作るのは嫌なので私もなにかお返しさせてください。』

『えーなんでだよ黙って感謝しろよ』

年端も行かぬ男に奢られて黙っているほうがどうかしていると思ったが下手なことを言って追い出されてしまうと困るので仕方なく飲み込み口を紡ぐ。





*服屋



 仕方なく奢られる事にして街を歩く。

家を出る前に『流石にそのまんま出るのはやべぇよな、指名手配犯だし』と、眼帯と帽子を貰った。歩いていて気付いたのが彼は思ったよりも目付きが悪い。もしかして素行の悪い、所謂不良少年なのかも知れない。何せ街の人が彼の顔を見ると必ず目を逸らすのだ。不憫な青年だことなどと思っていると数歩前を歩くノイズに

『なぁ、なんで人を殺してんだ?』

街中、白昼堂々とそんな事を聞いていいのだろうか、まぁ聞かれたら答えなければと思い少し近づき小声気味で

『私は十五の時に母親を殺しているのですが、その時から怖いんです。私の中で死は救いなので誰かを救っていないと恐怖で潰れてしまいそうなんです。』

『死が救いか、』

そう言うとノイズはまた申し訳無さそうな笑顔で黙り込んでしまった。




 服屋に入るとノイズが、

『すみません、この人に似合いそうな服を選んでもらえますか?』

と店員に聞いている。

店員が持ってきた服は、白いシャツに黒いズボン、それと黒い外套だった。見るからに高そうだがこの青年はそんな大金を持っているのだろうか。などと思いながら他にも何着か服を取り支払いをする場に行き、店員にニコニコ愛想笑顔で着ていきますか?などと聞かれノイズがはいそうだと言い支払いをし店を出る。

『やはり、貰ってばかりで申し訳ないですが』

と言うと、

『じゃあ一つ約束をしてくれないか、俺が良いって言うまで俺のそばにいてくれ』

そんなことで良いのか?私にデメリット等ないではないですか、

『そんなことで良いのなら』

とニコリと笑ってみせると

『あ、後それ、その笑顔もやめてくれ。薄気味が悪いぞその笑顔、どこで習得したのか知らないが俺の前ではしないでくれ』

とムスッとしながら言い出して悪戯っぽく笑っていた。顔に亀裂の入った様な気がした。

『……貴方コロコロ顔が変わる忙しい人ですねぇ』

と言い帰路に着くのでした。


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